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自然気胸とは?原因・症状・治療・再発予防まで徹底解説

[2025.10.13]

自然気胸(しぜんききょう)とは、肺に穴が開き、空気が胸腔内に漏れ出して肺がしぼむ状態を指します。交通事故や刺傷などの外傷によらず自然に発症するため、「自然気胸」と呼ばれます。若年男性や喫煙者に多く、突然の胸痛や呼吸苦で発症することが特徴です。


自然気胸の種類と発症機序

自然気胸は大きく2つに分類されます。

  1. 原発性自然気胸(Primary Spontaneous Pneumothorax:PSP)
     基礎疾患のない健康な人に起こるタイプです。特に「長身・やせ型の若年男性」に多くみられます。
     原因は、肺の表面にできた**ブラ(小さな嚢胞)やブレブ(肺胞の膨らみ)**が破裂することで空気が胸腔に漏れることです。
     喫煙や急激な気圧変化がリスク因子とされています。

  2. 続発性自然気胸(Secondary Spontaneous Pneumothorax:SSP)
     慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺結核、間質性肺炎など基礎肺疾患をもつ患者に起こります。
     肺の脆弱性が高く、少量の空気漏れでも重度の呼吸不全を引き起こすことがあります。


主な症状

  • 突然の胸痛(片側)

  • 呼吸困難

  • 咳嗽(せき)

  • 体動時の息切れ

胸痛は「針で刺されたような痛み」「息を吸うとズキッと痛む」と表現されることが多く、安静時に突然発症します。


診断

診断の第一歩は胸部X線検査です。
肺の外側に空気が貯留し、肺が縮んでいる像(虚脱像)が確認されます。
より詳細な評価には胸部CTが有用で、ブラやブレブの位置や大きさを特定できます。
酸素飽和度(SpO₂)の低下や聴診上の呼吸音低下も重要な所見です。


治療方針

治療は、気胸の大きさと症状の重症度により異なります。

1. 軽度(虚脱率20%未満)

安静と酸素吸入のみで自然吸収を待つ場合があります。
空気は1日あたり約1.25%ずつ吸収されるとされ、2〜3週間で改善することもあります。

2. 中等度〜重度

胸腔ドレナージ(チューブ挿入)を行い、胸腔内の空気を排出して再膨張を促します。
ドレナージ後も空気漏れが続く場合、または再発を繰り返す場合には**外科的治療(胸腔鏡下手術)**が検討されます。

3. 外科手術(VATS:Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)

近年の標準治療です。
胸腔鏡を用いてブラの切除(部分切除)と、**再発予防のための胸膜癒着術(pleurodesis)**を行います。
手術後の再発率は約5〜10%に抑えられます。


再発予防

自然気胸は再発率が高く(30〜50%)、特に喫煙は強いリスク因子です。
禁煙は最も重要な再発予防策です。
また、飛行機搭乗やスキューバダイビングなど気圧変化の大きい環境は一定期間避ける必要があります(再発後2〜3週間は推奨されません)。


日常生活の注意点

  • 禁煙:再発率を半減させる最も有効な方法。

  • 重い荷物や強い息こらえを避ける

  • 定期的な胸部X線フォロー

  • 胸痛・息苦しさを感じたら、早めに医療機関を受診。


まとめ

自然気胸は比較的若年男性に多い病気ですが、重症化や再発を防ぐには早期診断と適切な治療が不可欠です。
特に続発性気胸では呼吸不全のリスクが高く、慎重な経過観察が求められます。
禁煙や生活習慣の見直しが再発防止の鍵となります。


参考文献(エビデンス)

  1. 日本呼吸器学会.「自然気胸診療ガイドライン2023」

  2. Tsuboshima K, et al. Ann Thorac Cardiovasc Surg 2020;26(3):125–132.

  3. Baumann MH, et al. Chest 2001;119(2):590–602.

  4. MacDuff A, et al. Thorax 2010;65 Suppl 2:ii18–ii31.

  5. Sahn SA, Heffner JE. N Engl J Med 2000;342:868–874.


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