日本で使われるインフルエンザワクチンを網羅解説(2025/26シーズン)
日本の季節性インフルエンザワクチンは、大きく「不活化HAワクチン(注射)」と「経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)」、そして高齢者向けの「高用量HAワクチン(筋注)」があります。2025/26シーズン(令和7年度)は、標準の不活化HAワクチンが“3価(A/H1N1・A/H3N2・B〈ビクトリア系統〉)”に移行しています。厚生労働省
1. 種類と作用の違い(日本のラインナップ)
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不活化インフルエンザHAワクチン(注射・皮下注)
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卵培養由来の「HA(ヘマグルチニン)」成分ワクチン。国内で長年使われている標準的なタイプ。
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2025/26シーズンは3価。1回0.5mL中、各株のHAを通常1株あたり15μg以上含有(成人用量)。JAPIC Pins+1
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経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」
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鼻腔に0.2mL(片鼻0.1mLずつ)を1回噴霧。2歳以上19歳未満が対象。2024年に国内発売。2024年8月の変更で3価構成。第一三共株式会社公式ウェブサイト
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高用量インフルエンザHAワクチン「エフルエルダ筋注」(60歳以上)
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1株あたり60μgのHAを含む高用量製剤。60歳以上に0.7mLを筋肉内に1回接種。2024年12月承認、2025年1月発表。PMDA+1
2. 国内メーカー(製造販売)と主な製品名
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デンカ(販売:アステラス)
製品例:インフルエンザHAワクチン「生研」など(不活化・注射)。medical.mt-pharma.co.jp -
阪大微生物病研究会(BIKEN、販売:田辺三菱製薬)
製品例:「ビケンHA」「フルービックHA/同シリンジ」(不活化・注射)。KEGG -
KMバイオロジクス(販売:Meiji Seikaファルマ ほか)
製品例:インフルエンザHAワクチン(不活化・注射)。 -
第一三共
製品例:フルミスト点鼻液(経鼻弱毒生ワクチン、販売:第一三共/ライセンス:アストラゼネカ系)。第一三共株式会社公式ウェブサイト -
サノフィ
製品例:エフルエルダ筋注(高用量HA、60歳以上、筋注)。sanofi.co.jp+1
※ 市場流通は年により供給バランスが変わります。2025/26の総供給見込みは約5,293万回分(HA+経鼻の合算換算)。厚生労働省
3. 規格・投与量・回数(日本の添付文書準拠)
不活化HAワクチン(皮下注)
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含量:0.5mL中、1株あたりHA 15μg以上(成人用量)。JAPIC Pins+1
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回数・用量(代表例)
・6か月以上3歳未満:0.25mL×2回(2~4週あけ)
・3歳以上13歳未満:0.5mL×2回(2~4週あけ)
・13歳以上:0.5mL×1回(必要に応じ2回可)
いずれも皮下注射。KEGG
経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)
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対象:2歳以上19歳未満。
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投与:0.2mLを1回(各鼻腔0.1mLずつ)。第一三共株式会社公式ウェブサイト
高用量HAワクチン(エフルエルダ、60歳以上)
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含量:1株あたりHA 60μg。
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投与:60歳以上に0.7mLを筋肉内に1回。PMDA
4. 接種経路と剤形の特徴
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不活化HA:日本の標準は皮下注。プレフィルドシリンジ(単回投与)やバイアル(多回投与)があり、添付文書に沿って使用。KEGG+1
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経鼻弱毒生:鼻腔噴霧で注射不要。第一三共株式会社公式ウェブサイト
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高用量HA:筋注のみ。PMDA
5. 添加物(チメロサール)について
6. 年齢別の使い分けと選択肢
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6か月~:不活化HA(注射)が基本。
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2~18歳:注射に加え、フルミストという経鼻生ワクチンの選択肢あり(1回接種で完了)。適応年齢・禁忌に留意。第一三共株式会社公式ウェブサイト
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60歳以上:標準用量(皮下注)に加え、**高用量HA(筋注)**という選択肢が登場。心肺合併症リスクが高い高齢層での有用性データが蓄積。sanofi.co.jp+1
7. 標準的な価格の目安(自費)
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成人・小児の自費接種は医療機関ごとに設定。近年の全国相場はおおむね3,000~5,000円/回が目安(地域差あり)。ファストドクター
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子どもは2回接種のため合計費用がかかることがあります(例:1回4,000円前後で設定する医療機関も)。CLINIC FOR (クリニックフォア) 内科・アレルギー科・皮膚科+1
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高齢者(65歳以上など)の定期接種は各自治体の助成で自己負担が軽減(例:福岡市は1,500円/回)。対象・期間は自治体告知を確認。福岡市公式サイト+1
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経鼻フルミストや高用量は標準より高額に設定される傾向(例:フルミスト1回8,000円の掲示例)。実費は医療機関で事前確認を。医療法人やなぎクリニック
8. 2025/26シーズンのポイント整理
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不活化HAが3価に移行(A×2、B〈ビクトリア〉×1)。供給は約5,293万回分見込み。厚生労働省
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経鼻フルミストが国内ローンチ済み(2~18歳中心の選択肢)。第一三共株式会社公式ウェブサイト
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**高用量HA(エフルエルダ、筋注)**が60歳以上で承認・提供開始。sanofi.co.jp
9. よくある質問(安全性・卵アレルギー・同時接種)
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卵アレルギー:国内の不活化HAは卵由来成分に注意喚起があるため、重度アレルギー歴の確認と接種後観察を徹底。biken.or.jp
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副反応:注射部位反応、発熱、倦怠感などがあり得ます。経鼻では鼻症状(鼻閉・鼻漏)などが比較的多い報告。個々の製品の添付文書・IFに準拠。第一三共株式会社公式ウェブサイト
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同時接種:日本の予防接種実施要領や各製品の添付文書に従って判断(本稿では一般論のみ提示。実施時は最新の公式資料を確認)。
参考文献(エビデンス)
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厚生労働省「2025/26シーズンの季節性インフルエンザワクチンの供給等」(3価化・供給量).厚生労働省
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第一三共「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液 発売」プレスリリース(対象年齢・用法・3価化).第一三共株式会社公式ウェブサイト
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サノフィ「エフルエルダ筋注 承認」関連資料(対象年齢・用量・用法・有用性).sanofi.co.jp+1
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KEGG/PMDA・BIKEN IF等(不活化HAの含量[1株15μg/0.5mL]、年齢別用量・皮下注、チメロサール記載).KEGG+3KEGG+3JAPIC Pins+3
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価格相場の参考(全国平均・自治体助成の具体例:福岡市).ファストドクター+2福岡市公式サイト+2
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https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874
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