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声がかすれにくい吸入薬はどれ? 〜嗄声(させい)を防ぐための正しい選び方〜

[2025.10.30]

吸入薬で喘息を治療していると、「声がかすれる」「のどがヒリヒリする」と感じる人がいます。
これは**ステロイド成分(ICS:吸入ステロイド)**がのどに付着して起きる副作用の一つです。
ただし、すべての薬で同じように起こるわけではありません。

1. 声がかすれにくい吸入薬の傾向

日本で使われている代表的な「ICS/LABA(吸入ステロイド+気管支拡張薬)」の中で、
臨床試験で嗄声(声のかすれ)の報告が少なめだったのは次の薬です。

薬の名前 成分 吸入タイプ 嗄声の報告頻度(目安)
アテキュラ ブリーズヘラー モメタゾン+インダカテロール DPI(粉タイプ) 約0.8〜1%
シムビコート タービュヘイラー ブデソニド+ホルモテロール DPI 約0.3%
フルティフォーム エアゾール フルチカゾン+ホルモテロール pMDI(スプレータイプ) 約2%

一方で、
**アドエア(フルチカゾン+サルメテロール)**では約3%、
**レルベア(フルチカゾンフランカルボン酸+ビランテロール)**では日本人の試験で約6〜7%と、やや高めの報告があります。

ただし、これらの数字は試験条件や対象が違うため、単純比較はできません。
あくまで「傾向」として参考にしましょう。

2. 声がかすれる理由

吸入ステロイドの一部がのどに付着し、

  • 声帯の筋肉に軽い炎症を起こす

  • 口やのどにカビ(カンジダ)が生える
    といったことが原因です。
    これを防ぐには、薬の使い方と手入れがとても大切です。

3. 声のかすれを防ぐ3つのコツ

  1. 吸入後にしっかりうがいをする
     → これだけでのどへの残り薬が減ります。

  2. スプレータイプ(pMDI)はスペーサーを使う
     → 粒子がのどに当たりにくくなります。

  3. 吸入量を最小限に調整する
     → 医師と相談し、効果を保ちながら副作用を減らす工夫をします。

4. どの薬を選べばいい?

嗄声を起こしやすい人や声を使う仕事の人(教師・歌手など)は、
アテキュラシムビコートなど、嗄声報告の少ない薬を検討するのが一案です。
ただし、吸入器のタイプ(粉 or スプレー)や使いやすさ、吸う力の強さなども人によって違うため、
最終的には**「自分に合う吸入器を正しく使えるか」**が最も大切です。

まとめ

  • 吸入ステロイド薬で嗄声は珍しくないが、多くはうがい+正しい手技で防げる

  • アテキュラやシムビコートは嗄声が比較的少ない報告。

  • レルベアやアドエアも効果は高いが、声のかすれが気になる場合は注意。

  • 声の変化が続く場合は、自己判断せず医師に相談を。


参考文献(エビデンス)

  1. Mayo Clinic Proc. 2012. “Dysphonia Caused by Inhaled Corticosteroids.”

  2. npj Primary Care Respiratory Medicine 2019:スペーサーと含嗽による副作用減少。

  3. 各薬剤インタビューフォーム(PMDA, KEGG)
     - シムビコート:嗄声0.3%
     - アドエア:嗄声3%
     - レルベア:嗄声6.8%(日本人)
     - フルティフォーム:嗄声2.2%
     - アテキュラ:嗄声0.8〜1.1%


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https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

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