健康診断で「脂肪肝」と言われたら:放置すると命に関わる?
最近の健康診断で「脂肪肝」と書かれていて驚いた、という方が増えています。
「まあ太ってるから仕方ないかな」「お酒も飲むし…」と思って放置していませんか?
実はその“脂肪肝”、将来の肝硬変・肝がん・心血管疾患のリスクと深く関わっているかもしれません。
今回は最新の診療ガイドラインをベースに、脂肪肝があると言われたときに保険診療でどう評価し、どう治療していくかを、まじめに解説します。
■ 脂肪肝は「2人に1人」の時代
現在、日本人の40~50%が脂肪肝とされています(日本肝臓学会ガイドライン2024)。
特にBMI25以上、血糖値が高め、中性脂肪やγ-GTPが高いと指摘された人は要注意です。
脂肪肝には大きく分けて2つのタイプがあります:
種類 | 原因 | 特徴 |
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NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) | 肥満・糖尿病・高脂血症など | 飲酒と無関係 |
ALD(アルコール性脂肪肝) | 多量の飲酒(男性1日40g以上など) | 飲酒歴あり |
このうち特に問題になるのが「NASH(ナッシュ)」という病態です。NAFLDの一部が進行して、肝炎 → 線維化 → 肝硬変 → 肝がんへ進んでいく病気です。
■ 脂肪肝の重症度は「採血」でわかる
脂肪肝と言われたら、まず保険診療で下記のような評価を行います:
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AST, ALT, γ-GTP:肝機能の基本項目
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血小板数、年齢、AST/ALTなどを使ったFib-4 index
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FIB-4 index =(年齢 × AST)/(血小板 × √ALT)
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1.3未満なら軽症の可能性大、2.67以上は要精査
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腹部エコー:肝腫大、脂肪沈着、線維化の有無などを評価
必要に応じて**肝硬度測定(エラストグラフィ)や血清マーカー(M2BPGiなど)**を追加することもあります(こちらは保険適応あり)。
■ 治療の基本は「生活習慣の見直し」だが、それだけでは不十分な場合も
NAFLD/NASHの治療は基本的に体重の5〜10%減量が推奨されています。
実際、体重を10%減らせば脂肪肝は大きく改善することが報告されています(JHEP 2015など)。
ただし、現実には減量だけでコントロールできない方も多いため、下記のような保険適応の薬剤が考慮されます:
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SGLT2阻害薬(糖尿病合併例に):脂肪肝改善作用あり
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GLP-1受容体作動薬(オゼンピック等):NASH改善効果が研究で示されている
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ピオグリタゾン(インスリン抵抗性を改善)
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ビタミンE(一部ガイドラインで推奨)
これらはすべて日本の保険診療で処方可能な薬であり、専門医との連携のもとで使われます。
■ 「放置で済む脂肪肝」はない
脂肪肝は“最初は無症状”だからこそ、放置されやすく、
“症状が出たときにはもう遅い”というのが怖いところです。
当院では健康診断で「脂肪肝」と言われた方に対し、早期の評価と段階的な管理を行っています。
必要に応じて内科専門医として、糖尿病や脂質異常、高血圧などの生活習慣病も含めた総合的な管理を行っています。
■ まとめ
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健康診断で「脂肪肝」と言われたら、**進行性の病気(NASH)**の可能性もある
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採血・エコーでの重症度評価が保険診療で可能
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食事・運動+必要に応じて薬物治療で進行予防ができる
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放置せず、早めの対応が将来の肝硬変や肝がんを防ぐ鍵になる
ひろつ内科クリニックでは、脂肪肝を含む生活習慣病の評価・治療に積極的に対応しています。
健診結果で気になる点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから
https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874
※文中の治療方針・薬剤選択は日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2024」および日本糖尿病学会ガイドライン、日本消化器病学会の資料を基に構成されています。