オナラはどこから来て、どこに行くのか? ~腸内ガスの生成から排出までを医学的に徹底解説~
1. オナラとは何か?
オナラ(屁)は、肛門から排出される腸内ガスのことを指します。主成分は窒素・水素・二酸化炭素・メタン・酸素などの無臭ガスで構成されており、においの成分はごく微量の硫黄化合物(インドール、スカトール、硫化水素など)です。
2. オナラはどこから来るのか?
腸内ガスの発生源は主に3つあります:
(1) 飲み込んだ空気(aerophagia)
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食事や会話中、無意識に空気を飲み込む行為
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ガスの主成分(窒素・酸素)はこの経路由来
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主に小腸・大腸の上部で吸収され、残りが直腸へ
(2) 腸内細菌の発酵作用
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大腸内で、**難消化性の糖質(FODMAPsなど)**が細菌によって発酵
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メタン、二酸化炭素、水素などが発生
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特に Bacteroides、Clostridium、Methanobrevibacter smithii などが関与
(3) 血液から腸管内への拡散
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体内で代謝されたガス(例:CO₂)が腸管へ移動
3. においの原因はなにか?
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においのあるオナラは、腸内細菌がタンパク質や硫黄含有アミノ酸(メチオニンなど)を分解することで生じます。
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硫化水素(H₂S)やメチルメルカプタンなどが主な悪臭原因物質です。
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特に肉類中心の高タンパク食や、便秘傾向のある人に強いにおいが生じやすいとされています【文献1】。
4. オナラはどうやって排出されるのか?
腸内で発生したガスは、以下のルートで体外に排出されます:
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約75%が肛門から排出
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残りは腸粘膜から吸収され、呼気として排出
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ゲップとして排出されるガスは胃より上のガスであり、腸内ガスとは別物です
5. オナラが多くなる原因とは?
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食物繊維や難消化性糖質の摂取増加(例:玉ねぎ、豆類、乳製品)
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早食いや炭酸飲料の摂取(空気の嚥下)
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小腸内細菌異常増殖症(SIBO)
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便秘(ガスの通り道が悪くなる)
6. 臨床的に問題となる「異常なオナラ」
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SIBO(小腸内細菌異常増殖症):異常な腹部膨満感や臭気が強くなる
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FODMAP過敏:過敏性腸症候群(IBS)との関係あり
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膵外分泌不全・胆汁酸吸収不良:タンパク・脂肪の未消化により臭気増大
7. オナラとの付き合い方:予防と対策
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食習慣の見直し:食物繊維と発酵性糖質をバランスよく
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整腸剤・プロバイオティクスの活用(例:乳酸菌・ビフィズス菌)
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運動と排便習慣の改善
エビデンス参考文献:
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Roberfroid M. "Prebiotics: the concept revisited", J Nutr. 2007; 137(3 Suppl 2): 830S–837S.
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Pimentel M. et al. "The prevalence of SIBO in IBS patients", Am J Gastroenterol. 2000; 95(12): 3503–3506.
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Barrett JS et al. "Dietary management of functional gastrointestinal symptoms", Am J Gastroenterol. 2009; 104(2): 252–258.
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