暑くて眠れないのは病気?夏季の不眠に医学的に向き合う
夏の高温多湿な環境により、毎年この時期になると「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」といった睡眠の悩みが増加します。
しかし、この“夏の不眠”はすべてが気候のせいというわけではありません。
内科医としての立場から、季節性の不眠と疾患に基づく不眠を分けて考えることが重要です。
■ 夏季不眠の主な環境因子と生理的メカニズム
人は眠る直前に深部体温(core body temperature)を下げることで自然な眠気を得ています。
しかし、外気温が高く体温が下がりにくい環境では、これがうまく機能しません【1】。また、高湿度は発汗の効率を下げ、不快感による入眠障害を引き起こします。
代表的な環境要因は以下の通りです:
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室温の上昇による深部体温低下の妨げ【1】
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湿度による蒸れ感、皮膚刺激
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冷房タイマー後の再上昇による中途覚醒【2】
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日照時間の延長によるメラトニン分泌の遅れ【3】
これらは一過性であり、病気ではありません。
適切な環境調整で改善することがほとんどです。
■ 病的な不眠のサイン:以下に当てはまる場合は要注意
夏季であっても、以下のような症状がある場合は不眠症や他の疾患の可能性を考慮すべきです。
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入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒が1か月以上続く
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睡眠時間は確保しているのに疲れが取れない
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日中の眠気・集中力低下が強く、生活に支障が出ている
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パートナーから「いびきがひどい」「寝ている間に呼吸が止まっている」と言われる
このようなケースでは、**慢性不眠症(chronic insomnia)や睡眠時無呼吸症候群(OSA)**が鑑別に上がります。
OSAは特に中年男性に多く、心血管疾患のリスクとも関連します【4】。
■ 当院で可能な対応と検査
ひろつ内科クリニックでは、以下の対応を行っています:
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睡眠に関する問診・カウンセリング
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必要に応じた薬物療法(漢方も含む)
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睡眠時無呼吸のスクリーニング検査(在宅簡易検査)
簡易検査でOSAのリスクが高いと判定された場合には、専門施設での精密検査(PSG)をご紹介いたします。
■ 医学的まとめ
夏の不眠は主に環境的・一時的な生理的反応によるものですが、
症状が継続する場合や、日常生活に明確な影響がある場合には治療対象となる不眠症・睡眠障害の可能性を考慮する必要があります。
「暑いだけだから…」と自己判断せず、早期のご相談が安心につながります。
【参考文献】
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Kräuchi K. "The human sleep-wake cycle reconsidered from a thermoregulatory point of view." Physiol Behav. 2007;90(2-3):236-245.
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Lan L, Lian Z, Pan L, Ye Q. "Neurobehavioral performance and subjective symptoms under high temperature and humidity exposure in the workplace." Indoor Air. 2010;20(1):59-68.
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Lewy AJ, et al. "The human phase response curve (PRC) to melatonin is about 12 hours out of phase with the PRC to light." Chronobiol Int. 1992;9(5):315-320.
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Peppard PE, et al. "Increased prevalence of sleep-disordered breathing in adults." Am J Epidemiol. 2013;177(9):1006–1014.
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