睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは ― 自覚しづらい「命に関わる病気」
1. 睡眠中に何が起きているのか?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が断続的に停止する病気です。定義上、10秒以上の無呼吸や低呼吸が1時間あたり5回以上みられる場合に診断されます。
主な分類は以下の通りです:
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閉塞性(OSA):最も多い。上気道の閉塞が原因
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中枢性(CSA):脳の呼吸中枢の異常
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混合型:上記が混在
2. SASが疑われる症状
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いびきが大きい・途中で止まる
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日中の眠気・集中力の低下
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起床時の頭痛・倦怠感
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夜間の頻尿
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「寝ている間に息が止まっている」と家族に言われる
中でも「日中の強い眠気」は、交通事故や労働災害のリスク因子として問題視されています。
3. 放置するリスクは深刻
SASを放置すると、以下の疾患のリスクが有意に上昇することが確認されています:
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高血圧・心不全・心房細動・脳卒中
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2型糖尿病
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メタボリックシンドローム
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総死亡率の上昇
SASは単なる睡眠障害ではなく、全身の慢性疾患と強く関連しているのです。
4. 検査と診断方法
◆ 簡易検査(スクリーニング)
自宅で使用できる小型の機器で、睡眠中の呼吸状態と血中酸素濃度を記録します。
この簡易検査でAHI(無呼吸低呼吸指数)が40以上の場合、確定診断とされ、CPAP治療が保険適応になります(PSG不要)。
◆ 精密検査(PSG)
医療機関で一泊入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査。
AHIが5~39の場合や、日中の眠気が強いケースでは、精密検査が保険適用の条件となります。
5. 治療法とその効果
● CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
鼻マスクから空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療法。
心血管系のイベントや死亡率を有意に下げることが多くの臨床試験で確認されています。
● 生活習慣の改善
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減量(肥満がある場合)
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飲酒制限
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仰向けで寝ないように工夫する(側臥位推奨)
● マウスピース(口腔内装置)
軽症~中等症のOSAでは有効。歯科で作製。
6. 当院での対応
ひろつ内科クリニックでは、自宅での簡易検査を実施可能です。
検査結果によっては、CPAP治療の導入や、精密検査(PSG)のための連携病院紹介も行っております。お気軽にご相談ください。
まとめ
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SASは「ただのいびき」ではなく命に関わる全身疾患
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簡易検査でAHI40以上なら、PSG不要で確定診断&CPAP導入が可能
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適切な治療で、生活の質と将来の健康リスクが大きく改善する
【参考文献・エビデンス】
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Punjabi NM. The Epidemiology of Adult Obstructive Sleep Apnea. Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):136–143.
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Marin JM et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea–hypopnoea with or without treatment with CPAP. Lancet. 2005;365(9464):1046–1053.
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Gottlieb DJ et al. Association of sleep time with diabetes mellitus and impaired glucose tolerance. Arch Intern Med. 2005;165(8):863–867.
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日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)診療ガイドライン2020
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厚生労働省 中央社会保険医療協議会 診療報酬改定資料(2023年)
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