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憩室炎とは何か?内科医が総合的に解説します

[2025.07.15]

「憩室」とは?

「憩室(けいしつ)」とは、大腸の壁の一部が袋状に外側へ膨らんだ構造のことを指します。特にS状結腸や上行結腸にできやすく、日本人では右側(上行結腸~盲腸付近)の憩室が多いことが知られています。

高齢者ほど憩室の保有率は高く、70代以上では過半数に見られるとも言われていますが、憩室自体は無症状のことがほとんどです。

しかし、**この憩室が炎症を起こした状態が「憩室炎(diverticulitis)」**であり、適切な診断と治療が必要です。


主な症状と特徴

憩室炎の代表的な症状は以下のとおりです:

  • 腹痛(痛む場所は憩室の位置による。右下腹部または左下腹部)

  • 発熱

  • 圧痛(お腹を押すと痛い)

  • 下痢、または一部に便秘

  • 吐き気、食欲不振

日本人では特に右下腹部痛(上行結腸の憩室炎)として発症する例が多く、虫垂炎との鑑別が重要になります。一方で、欧米では左側(S状結腸)の憩室が多く、左下腹部痛で受診することが多い傾向があります。

高齢者では症状が不明瞭なこともあり、炎症が進行してから気づかれるケースもあります。


なぜ憩室炎が起こるのか?

憩室自体は無症状ですが、以下の要因で炎症を起こすことがあります:

  • 便や食物残渣の憩室内停滞

  • 腸内圧の上昇(便秘やいきみなど)

  • 食物繊維不足・高脂肪食

  • 加齢・肥満・喫煙・運動不足

憩室に詰まった便が感染源となり、細菌性の炎症を引き起こすのが典型的な病態です。


診断方法

診断は以下の流れで進みます。

  1. 問診・身体診察:痛みの部位、発熱の有無、便通の異常などを確認

  2. 血液検査:白血球増加、CRP上昇などの炎症所見

  3. 画像検査(CT):憩室の存在、周囲の脂肪織濃度上昇、膿瘍、穿孔の有無を確認

※急性期には大腸内視鏡を避けるのが原則ですが、出血や悪性疾患との鑑別のため、炎症が落ち着いた後に施行することがあります。


治療方針

軽症(非複雑性憩室炎)

  • 外来治療が可能

  • 絶食または食事制限(腸管安静)

  • 経口抗菌薬(例:クラリス+フラジール、ニューキノロン系など)

  • 症状が改善すれば徐々に食事を戻し、再発予防指導へ

重症(複雑性憩室炎)

  • 膿瘍、穿孔、腸閉塞、出血などの合併症がある場合

  • 入院管理+点滴抗菌薬(カルバペネム系など)+絶食

  • CTガイド下ドレナージや外科的切除が必要になるケースもある

憩室炎の重症度は**Hinchey分類(I~IV)**で評価され、治療方針の指針になります。


再発リスクと予防法

  • 憩室炎は初回治療で8~30%が再発すると言われます

  • ただし、2回目も軽症で済むことが多く、再発=手術とは限りません

予防の基本は以下の通り:

  • 食物繊維の多い食事(野菜・果物・全粒穀物)

  • 便通のコントロール(便秘を避ける)

  • 禁煙・適度な運動・肥満是正

なお、「ナッツ・トウモロコシ・種子などを食べると憩室炎になる」という説は、現在では否定されています(後述エビデンス参照)。


よくある質問(FAQ)

Q. 憩室炎と虫垂炎はどう見分ける?
A. 両者とも右下腹部痛で発症することがあり、臨床症状だけでは見分けにくいです。**画像検査(特にCT)**が診断の決め手になります。

Q. 再発したら手術しないといけないの?
A. 原則として**繰り返す重症例(穿孔・狭窄など)**や、日常生活への支障が大きい場合を除き、**手術は慎重に判断されます。**初回での手術適応は少数です。


当院での対応

ひろつ内科クリニックでは、

  • 血液検査・尿検査・腹部超音波を即日実施可能

  • CTや内視鏡が必要な場合は近隣病院に迅速紹介

  • 初期対応後の生活指導や再発予防も丁寧にサポート

など、スピーディかつ丁寧な対応を重視しています。右下腹部痛や発熱などでお困りの方は、早めの受診をおすすめします。


エビデンス・参考資料

  • 日本消化器病学会. 大腸憩室症診療ガイドライン(2021年版)

  • American Gastroenterological Association. Guidelines on the management of acute diverticulitis. Gastroenterology. 2015;149(7):1944–1949.

  • Strate LL, Liu YL, Syngal S, Aldoori WH, Giovannucci EL. Nut, corn, and popcorn consumption and the incidence of diverticular disease. JAMA. 2008;300(8):907–914.


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https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

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