プラセンタとは何か ― 医学的エビデンスに基づく徹底解説
はじめに
美容や更年期症状の改善を目的に「プラセンタ注射」「プラセンタサプリ」が広く知られるようになりました。
しかし「実際にどんな成分で、どんな効果があるのか?」は曖昧なまま広がっているのが現状です。
今回は、プラセンタ(胎盤由来成分)について医学的エビデンスをもとに整理します。
1. プラセンタとは
プラセンタ(placenta)は胎盤のこと。
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ヒト胎盤エキス(日本ではラエンネック・メルスモンが医薬品として承認)
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ブタ・ウマなど動物由来の抽出物(サプリメント・化粧品成分として使用)
胎盤には、アミノ酸、ペプチド、成長因子、ビタミン、ミネラルなど多様な物質が含まれています。
2. 日本での医薬品としての承認
ヒト胎盤エキス注射薬は以下の効能・効果で承認されています。
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ラエンネック:慢性肝疾患における肝機能の改善
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メルスモン:更年期障害・乳汁分泌不全
美容目的での使用は承認されておらず、いわゆる「適応外使用」となります。
3. エビデンスに基づく効果
肝機能改善
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日本の多施設臨床試験では、慢性肝炎・肝硬変患者における肝機能マーカー(ALT・AST)の改善効果が報告されています。
更年期症状の改善
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ランダム化比較試験(RCT)で、更年期女性の自覚症状(ホットフラッシュ、倦怠感、睡眠障害など)の軽減に寄与したとされています。
美容・抗疲労効果
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動物由来プラセンタや健康食品に関する研究はありますが、大規模RCTでの明確な有効性証明は不足しています。
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「美白」「アンチエイジング」といった効果は基礎研究レベルの報告にとどまり、臨床的に確立しているとは言えません。
4. 安全性と副作用
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医薬品のプラセンタ注射は比較的安全とされていますが、注射部位の痛み、発疹、発熱などの副作用が報告されています。
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ヒト胎盤エキスは献血ができなくなる点に注意が必要です(感染症リスクを完全に否定できないため)。
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サプリ・化粧品の安全性は製品ごとに異なり、品質管理が十分でない場合もあります。
5. 自律神経やストレスとの関連
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一部の研究でプラセンタ注射により**自律神経のバランス改善(交感・副交感の調整)**が報告されています。
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ただしエビデンスレベルは限定的であり、「自律神経失調症に効く」と断定できる段階ではありません。
まとめ
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プラセンタは胎盤由来の成分で、日本では肝機能改善・更年期障害に限って医薬品承認されている。
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美容や疲労回復への効果は研究途上で、確立したエビデンスは不足している。
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安全性は比較的高いが、副作用や献血制限には注意が必要。
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科学的に言えることは「一部の疾患では効果が確認されているが、美容目的での効果は未確立」ということ。
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参考文献
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厚生労働省 医薬品承認情報(ラエンネック、メルスモン)
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Moriyama M, et al. "Placental extract improves liver function in patients with chronic liver disease." Hepatol Res. 2008.
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Nishizawa H, et al. "Clinical effects of human placental extract on menopausal symptoms." Maturitas. 2011.
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日本産科婦人科学会「更年期障害の管理と治療ガイドライン」2023年改訂版