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大人もかかる「百日咳」――しつこい咳の正体かもしれません

[2025.06.19]

「風邪が治らない…」「咳だけが何週間も続く…」
そんな経験はありませんか?
それ、もしかすると「百日咳(ひゃくにちぜき)」かもしれません。

百日咳は子どもの病気と思われがちですが、実は大人にもかかります。
この記事では、百日咳の原因・症状・診断・治療・予防まで、最新の知見に基づいてわかりやすく解説します。


百日咳とは?

百日咳は、**「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)」**という細菌によって起こる感染症です。
その名の通り、「100日近く咳が続く」ことが特徴です。

特に大人では、典型的な「ヒュー」という吸気音(笛のような音)」が見られないことも多く、単なる咳風邪と見逃されることがあります。


大人の百日咳の症状

大人の百日咳は、子どもに比べて軽症または非典型的なことが多いですが、以下のような症状が続くのが特徴です:

  • 2週間以上続くしつこい咳(特に夜間)

  • 発熱はあまり目立たない

  • 痰は少ない or ほとんど出ない

  • 咳で肋骨が痛む/吐き気がする

  • 咳の発作が1か月以上続くことも

「風邪だと思って放置したら、咳だけ3週間も続いている…」というケースは要注意です。


百日咳はどうやって感染するの?

百日咳は飛沫感染で広がります。
咳・くしゃみ・会話などで菌が飛び、近くにいる人にうつります。

特に感染力が強いのは**発症初期(カタル期)**です。
この時期は、軽い風邪のような症状しかないため、周囲にうつしてしまいやすいのです。


百日咳の診断

咳だけで百日咳と確定するのは困難です。
以下の方法で診断を進めます:

  • 問診:咳の期間、特徴、周囲の感染者有無など

  • 鼻咽頭ぬぐい液でのPCR検査(発症初期が望ましい)

  • 血液検査(抗体検査):IgA、IgGの上昇を確認

※保険診療ではPCR検査ができない施設もあり、症状と疫学から総合的に判断されることが多いです。


百日咳の治療

百日咳の治療にはマクロライド系抗菌薬(例:クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が使用されます。
ただし、咳が始まってから10日以上経つと、菌はすでに体内から減っており、抗菌薬の効果は限定的になります。

そのため、大人の場合は以下の対応が中心になります:

  • 咳止め(鎮咳薬、漢方薬など)

  • 肋骨痛や筋肉痛に対する鎮痛薬

  • 十分な休養と保湿・加湿


百日咳は再発するの?

はい。一度かかっても再感染することがあります。
免疫は一生続くわけではなく、5〜10年で低下すると考えられています。

そのため、近年では**成人向けの百日咳ワクチン(Tdapワクチン)**の接種も推奨されています(日本では定期接種の対象外ですが、一部の自治体や職種では推奨あり)。


子どもや高齢者への感染源にならないために

大人の百日咳は重症化することは少ないですが、乳児や高齢者にうつすと命に関わることがあります。
特に生後3か月未満の乳児では、呼吸停止などを起こすリスクも。

「風邪かも?」と思ったときに、周囲に赤ちゃんや高齢者がいるなら、マスク着用・手洗い・早めの受診が大切です。


まとめ

ポイント 内容
百日咳は大人でもかかる 咳が長く続くときは要注意
診断は難しく見逃されやすい PCRや抗体検査が参考に
治療は早期なら抗菌薬、それ以降は対症療法中心 咳止めや鎮痛薬が主役に
周囲への感染に注意 特に赤ちゃんや高齢者は要配慮

参考文献・エビデンス

  1. 日本感染症学会. 成人の百日咳診療ガイドライン(2022年改訂版)

  2. CDC: Pertussis (Whooping Cough) – Clinical Overview

  3. 日本小児科学会. 百日咳の再流行とワクチンの必要性に関する見解(2021年)

  4. Tan T, et al. Pertussis Across the Globe: Recent Epidemiologic Trends From 2000 to 2013. Pediatric Infectious Disease Journal. 2015.

 

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