秋の体調不良と鉄欠乏性貧血 ― 健診結果から見えるサイン
秋に増える「なんとなく不調」
涼しくなってきたのに、疲れやめまいが続く。夏バテの延長かと思っていたら、実は「鉄欠乏性貧血」だったというケースがあります。特に女性では頻度が高く、健診では見逃されやすい病気のひとつです。
鉄欠乏性貧血とは?
鉄分は赤血球の材料であり、全身に酸素を届けるために欠かせません。鉄が不足すると酸素が足りなくなり、さまざまな不調を引き起こします。
日本人女性では約1割に貧血があると報告されており、とくに月経や妊娠・出産、食生活の偏りが背景に関わります【厚労省 国民健康・栄養調査】。
主な症状
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疲れやすい、体が重い
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めまい、立ちくらみ
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動悸、息切れ
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集中力の低下、頭痛
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爪が割れやすい、抜け毛
こうした症状は「秋バテ」や「更年期」と勘違いされることもあります。
健診では見逃されやすい「隠れ貧血」
通常、健診で測定されるのは ヘモグロビン(Hb) です。
しかし鉄不足の初期段階ではヘモグロビンはまだ保たれていることがあり、フェリチン(貯蔵鉄) が低下するだけの「潜在性鉄欠乏」という状態になります。
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Hbが正常でも、フェリチンが20〜30ng/mL未満だと鉄不足のサイン。
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この段階でも、疲労感、抜け毛、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などの症状が出ることが知られています【日本血液学会ガイドライン】。
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ただし典型的な息切れや動悸は、やはりHbが下がって初めて目立ちます。
秋に症状が目立つ理由
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夏の食欲不振や発汗で鉄が不足している
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寒暖差による自律神経の乱れが重なる
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活動量が増え、酸素需要が高まることで症状が表面化
治療と対応
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鉄剤内服(保険診療)
フェロミア、フェルムなどを数か月間継続 -
背景疾患の検索
消化管出血や婦人科疾患が隠れていることも -
食事改善
赤身肉や魚介、緑黄色野菜を意識し、ビタミンCと一緒に摂取
まとめ
鉄欠乏性貧血は「ヘモグロビンが下がって初めて気づく」病気と思われがちですが、実際にはフェリチンが低下した段階から疲労感などの症状が出る場合があります。秋の体調不良を「秋バテ」で片付けず、血液検査で早めに確認することが大切です。
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参考文献
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厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」
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日本血液学会. 鉄欠乏性貧血の診断と治療指針
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WHO. Iron deficiency anaemia: assessment, prevention and control
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Allen RP, et al. Restless legs syndrome and iron deficiency. Sleep Med. 2013.