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夏バテとは何なのか?医学的に正しい理解と対策

[2025.07.03]

はじめに

「夏バテ」という言葉は日常的によく使われますが、医学的には明確な定義があるわけではありません。しかし、高温多湿の環境下で生体が適応しきれずに起こるさまざまな不定愁訴をまとめた呼称として、医学や生理学の領域でも一定の理解が広がっています。本記事では、夏バテの正体を最新の科学的知見に基づいて解説し、正しい予防と対策方法を提示します。


夏バテの定義

医学的には、「夏バテ」という診断名は存在しませんが、以下のような症状の複合体として扱われます:

  • 倦怠感

  • 食欲低下

  • 睡眠障害(特に熟眠感の欠如)

  • 頭重感やめまい

  • 胃腸症状(胃のムカつき、下痢、便秘)

これらは、自律神経系の乱れ水・電解質バランスの破綻が引き金になると考えられています。


なぜ夏に不調が起きるのか?

1. 自律神経の乱れ

高温多湿の環境下では、体温調節を担う交感神経と副交感神経の切り替えが過剰に求められ、疲弊します。その結果、消化管の運動低下や血圧調節の不安定が生じやすくなります。

📘 参考:Morimoto T, et al. "Autonomic nervous responses to heat stress." Journal of Applied Physiology 1991.

2. 発汗による水分・ミネラル喪失

多量の発汗はナトリウムやカリウムなどの電解質喪失を引き起こし、体の脱調節を誘発します。脱水が進行すると、食欲不振や筋力低下、集中力低下を招くことも。

📘 参考:Sawka MN, et al. "Exercise and fluid replacement." Medicine & Science in Sports & Exercise, 2007.

3. 室内外の寒暖差による冷房病

冷房の効いた室内と外気の温度差が激しいと、体温調整の中枢が混乱し、体の深部体温が恒常性を失いやすくなることも指摘されています。

📘 参考:Nakamura K, Morrison SF. "Central efferent pathways for cold-defensive and febrile shivering." Journal of Physiology, 2011.


対策と予防法

1. 水分と塩分の同時補給

経口補水液や味噌汁などを活用し、水とナトリウムを一緒に補給することが重要です。ただの水では電解質濃度が下がり「低ナトリウム血症」を招くリスクも。

2. 食事の見直し

タンパク質やビタミンB群の摂取が不足しがちになります。納豆、豚肉、卵、豆腐などをバランスよく摂取することが、エネルギー代謝と自律神経の回復につながります。

📘 参考:Hirayama F, et al. "Dietary habits and summer fatigue in Japanese college students." Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition, 2005.

3. 睡眠の質の確保

寝る前のスマホ制限、就寝1時間前のぬるめの入浴、室温の適正化(26~28℃目安)などにより深部体温の適切な下降を促すことが、疲労回復に直結します。


まとめ

「夏バテ」は単なる気分の問題ではなく、環境ストレスに対する生理的な防御機構が破綻して起こる、れっきとした体調不良のサインです。医学的な理解をもとに、正しい対策を行うことで、夏を元気に乗り越えることができます。


引用文献・エビデンス

  1. Morimoto T, et al. Autonomic nervous responses to heat stress. J Appl Physiol. 1991.

  2. Sawka MN, et al. Exercise and fluid replacement. Med Sci Sports Exerc. 2007.

  3. Nakamura K, Morrison SF. Central efferent pathways for cold-defensive and febrile shivering. J Physiol. 2011.

  4. Hirayama F, et al. Dietary habits and summer fatigue in Japanese college students. Asia Pac J Clin Nutr. 2005.

 

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