インフルエンザなのに「胃腸炎」と思い込んでいませんか? ー腸炎と間違われるインフルエンザ―エビデンスで読み解く
「嘔吐や下痢…これは胃腸炎?」実はインフルエンザかも
冬場や流行期に多いインフルエンザですが、「発熱+咳やのどの痛み」といった典型的な呼吸器症状に加え、嘔吐・下痢・腹痛などの胃腸症状が前面に出ることも珍しくありません。
特に小児では「胃腸炎と思っていたらインフルエンザだった」という例は意外と多いのです。
なぜインフルエンザで胃腸症状?
最新の大規模研究(メタ解析)によれば、インフルエンザ患者の約20~30%で何らかの胃腸症状(嘔吐・下痢・腹痛など)が見られることがわかっています¹ ²。
実際、インフルエンザウイルスは呼吸器だけでなく、腸(糞便)からも検出されることがあり、ウイルスが腸管にも影響を与える可能性が指摘されています¹。
腸炎とどう見分ける?―鑑別ポイント
インフルエンザによる胃腸症状と、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性腸炎は、症状が似ているため診断が難しい場合があります。
主な鑑別ポイントは以下の通りです:
ウイルス性腸炎 | インフルエンザによる胃腸症状 | |
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発熱 | 軽度またはなし | 多くは38℃以上の発熱を伴う |
呼吸器症状 | ほとんど見られない | 咳・鼻水・咽頭痛などを伴うことが多い |
流行シーズン | 年間を通じて | 主に冬季(12~3月) |
症状の持続 | 1~3日で軽快することが多い | 1週間程度続くことも |
検査 | 便のウイルス迅速検査 | インフル抗原・PCR検査 |
治療 | 対症療法(整腸剤など) | 抗インフルエンザ薬(発症48時間以内有効) |
どんな時に注意が必要?
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高熱・強い倦怠感がある場合
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家族や学校でインフルエンザが流行している時期
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胃腸症状+呼吸器症状(咳や喉の痛み等)を認める場合
こうした場合は、胃腸炎と決めつけず、インフルエンザの迅速検査を検討しましょう。
「梅雨時期に多い」は根拠なし
2025年時点で、日本本土において「梅雨時期にインフルエンザによる腸炎症状が増加する」といった信頼できるデータ・論文はありません。
インフルエンザの流行は主に冬季が中心です。なお、沖縄県など一部の地域では夏季の流行もみられますが、全国的には例外的です²。
まとめ
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インフルエンザでも約20~30%で胃腸症状がみられる
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冬季に**「胃腸炎かな?」と思っても、実はインフルエンザの可能性あり**
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呼吸器症状や高熱を伴う場合は、インフルエンザ検査もご検討ください
【エビデンス】
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Wang Y, et al. Gastrointestinal symptoms and fecal viral shedding in children with coronavirus disease 2019: A systematic review and meta-analysis. Front Pediatr. 2022;10:850536.
→ インフルエンザ患者の20~30%で胃腸症状、糞便中ウイルス検出率も約20% -
国立感染症研究所 インフルエンザ流行マップ・週報(2023-2024)
→ 日本におけるインフルエンザの主な流行時期は12月~3月、梅雨時期の増加は確認されていない
(院長より一言)
「胃腸炎」だけでなく、インフルエンザでも嘔吐や下痢が起こります。迷ったときは、お気軽にご相談ください!
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