帯状疱疹に対する抗ウイルス薬の使い分け|内服・点滴・腎機能まで網羅解説
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が体内で再活性化することで発症します。
治療の中心は**抗ウイルス薬の全身投与(内服または点滴)**であり、発症早期に適切な薬剤を選択できるかが重要とされています。
本記事では、日本の診療ガイドラインを前提に、
・使用される抗ウイルス薬
・内服薬と点滴の使い分け
・腎機能低下時の注意点
を中心に、実臨床ベースで整理します。
抗ウイルス薬治療の目的
帯状疱疹における抗ウイルス薬治療の目的は、
・ウイルス増殖の抑制
・皮疹の進展抑制
・急性期疼痛の軽減
・治癒までの期間短縮
などです。
日本のガイドラインでは、皮疹出現後72時間以内に抗ウイルス薬を開始することが推奨されています。
ただし、72時間を超えていても、新しい皮疹が出現している場合や重症例、合併症が疑われる場合には投与が検討されます。
帯状疱疹で使用される主な内服抗ウイルス薬
日本で一般的に使用される内服抗ウイルス薬は、以下の4剤です。
バラシクロビル(一般名:valaciclovir)
・アシクロビルのプロドラッグ
・内服回数が比較的少なく、外来治療でよく使用されます
・通常用量:1回1000mg、1日3回(7日間が一般的)
腎排泄型のため、腎機能低下時は用量調整が必要です。高齢者では腎機能評価が特に重要です。
ファムシクロビル(一般名:famciclovir)
・体内でペンシクロビルに変換されます
・通常用量:1回500mg、1日3回
・外来で使用しやすい薬剤の一つ
こちらも腎排泄が主体であり、腎機能低下時は減量や投与間隔の調整が必要です。
アシクロビル(一般名:aciclovir)
・最も古くから使用されている抗ヘルペスウイルス薬
・内服回数が多く、服薬負担が大きい点が欠点
・現在は、服薬回数の少ない薬剤が選択されることが多い傾向です
腎機能低下時の副作用リスクが高いため、用量調整が必須です。
アメナメビル(一般名:amenamevir)
・ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬
・通常用量:1回400mg、1日1回(食後)
・1日1回投与で服薬負担が最も少ないのが特徴
腎排泄主体ではありませんが、薬物相互作用に注意が必要であり、併用薬が多い場合は慎重な確認が必要です。
点滴治療(静注)が選択されるケース
以下のような場合には、内服ではなくアシクロビル静注による治療が検討されます。
・免疫不全状態(造血器腫瘍、免疫抑制薬使用中など)
・皮疹が広範囲に及ぶ播種性帯状疱疹
・眼合併症が疑われる場合
・中枢神経合併症が疑われる場合
・経口摂取が困難な場合
これらは重症化リスクが高く、入院管理が必要となることがあります。
腎機能と抗ウイルス薬の重要な関係
帯状疱疹治療で使用される抗ウイルス薬の多くは腎排泄型です。
そのため、
・高齢者
・慢性腎臓病(CKD)
・脱水状態
では、投与前の腎機能評価と用量調整が不可欠です。
腎機能に見合わない過量投与では、
・意識障害
・ふらつき
・幻覚
・けいれん
などの中枢神経系副作用が報告されています。
抗ウイルス外用薬について
帯状疱疹治療において、抗ウイルス薬の外用単独治療は推奨されていません。
基本は内服または点滴による全身治療が中心となります。
まとめ
・帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬の早期全身投与が基本
・外来ではバラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビルが主に使用される
・重症例や免疫不全では点滴治療が検討される
・腎機能評価は安全な治療の前提条件
帯状疱疹が疑われる場合は、早めの受診が重要です。
参考文献(エビデンス)
-
日本皮膚科学会.帯状疱疹診療ガイドライン 2025
-
国立感染症研究所 IASR.水痘・帯状疱疹の治療
-
PMDA.バラシクロビル錠 添付文書
-
JAPIC.ファムシクロビル 添付文書
-
JAPIC.アメナメビル 添付文書
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