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若者に多い「起立性調節障害」 ― 大人になっても続くことがある病気

若者に多い「起立性調節障害」 ― 大人になっても続くことがある病気

[2025.10.02]

起立性調節障害とは

起立や体位の変化により、自律神経がうまく働かずに血圧や脈拍の調整ができなくなり、立ちくらみ・動悸・失神・強いだるさなどを引き起こす病気です。

中高生で診断されることが多いですが、実際には 大学生や20代社会人などの若者にも多くみられ、大人になっても症状が続く人もいる ことが分かっています。


なぜ若者に多いのか

  1. 自律神経の発達が未熟

     思春期から青年期は交感神経と副交感神経のバランスが不安定。
  2. ホルモンの影響

     特に女性に多く、月経周期やホルモン変動と関係する。
  3. 生活リズムの乱れ

     夜更かしやスマホ、睡眠不足がリスク。
  4. ストレス

     進学、就職、人間関係など心理社会的ストレスが引き金となる。

代表的なタイプ

  • 体位性頻脈症候群(POTS)

     立ち上がってから心拍数が急に上がり、動悸やめまいが出る。
  • 遷延性起立性低血圧

     長時間立っていると徐々に血圧が下がり、不快症状が出る。
  • 血管迷走神経性失神

     立ち続けていると急に意識を失う。

よくある症状

  • 朝起きられない、午前中に強いだるさ
  • 立ち上がると動悸・ふらつき
  • 授業や仕事に集中できない
  • 慢性的な頭痛や腹痛
  • 不安感や意欲低下(二次的な精神症状)

診断

  • 問診・症状の聞き取り(朝の不調や立位での症状があるか)
  • **起立試験(Head-up tilt試験など)**で血圧・心拍の変化を確認
  • 除外診断:貧血、甲状腺疾患、心臓病など他の病気を除外する

対策・治療

生活習慣の改善(基本)

  • 夜型生活を正し、規則正しい睡眠をとる
  • 水分を1日2〜3L、塩分を8〜10g程度摂る
  • 軽い運動(下肢の筋トレや有酸素運動)を継続
  • 弾性ストッキングや腹部バインダーで血流を補助

薬物療法(重症例のみ)

  • ミドドリン(昇圧薬)
  • β遮断薬(動悸を抑える)
  • フルドロコルチゾン(循環血液量を増やす)

    ※使用は医師判断で慎重に行われる

学校や職場での理解

  • 医師の診断書を用いて、遅刻・休憩など配慮してもらう
  • 社会人でも勤務時間の調整が必要になる場合がある

予後

  • 成長とともに改善する例もあるが、20代以降も持続する人もいる
  • 適切な生活習慣改善で症状が大幅に軽減することが多い
  • 長期化すると抑うつや不安障害が合併することがあり注意が必要

最新の研究から

  • 国内調査:若者の不登校の原因の1つとして起立性調節障害が多数報告されている
  • 海外研究:POTSを中心に、感染後やストレスを契機に若年成人で発症するケースが多数報告されている
  • COVID-19後遺症との関連:長期的な自律神経障害としてPOTS様症状を呈する若者が報告されている

まとめ

起立性調節障害は「子どもだけの病気」ではなく、若者に多く、大人になっても続くことがある疾患です。

「朝起きられない」「立つと気分が悪い」といった症状を怠けや精神的な問題と決めつけず、医学的に診断し、生活習慣改善や必要な治療を受けることが大切です。


参考文献

  1. 日本小児心身医学会. 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン 2015.
  2. Freeman R, et al. Clin Auton Res. 2011.
  3. Raj SR. Heart Rhythm. 2018.
  4. Wells R, et al. BMJ Open. 2018.
  5. Blitshteyn S, et al. Immunol Res. 2021.

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