潜伏梅毒(無症状梅毒)とは:定義・診断・治療
潜伏梅毒(無症状梅毒)とは:定義・診断・治療
[2025.10.04]
梅毒はトレポネーマ・パリダムによる性感染症です。典型的には皮疹やしこりで気づかれることが多いですが、症状が全くないまま血液検査で診断されることもあります。この状態は 潜伏梅毒(latent syphilis) と呼ばれます。
潜伏梅毒の定義
- 梅毒血清反応(RPR、TPHAなど)が陽性
- 臨床的な症状を認めない
分類は以下のとおりです。
- 早期潜伏梅毒(感染から1年以内)
再び第2期の症状が出ることがあり、感染性を有します。 - 後期潜伏梅毒(感染から1年以上)
性感染での伝播はほぼありませんが、妊婦では胎児に感染して先天梅毒を起こす可能性があります。
潜伏梅毒の診断
症状がないため、以下の場面で偶然に発見されることが多いです。
- 健康診断や妊婦健診
- 手術や入院前のスクリーニング
- 献血検査
潜伏梅毒のリスク
- 本人への影響:未治療で放置すると、大動脈瘤や神経梅毒など晩期合併症に進行する可能性があります。
- 周囲への感染:早期潜伏ではパートナーへの感染があり得ます。
- 母子感染:妊婦が感染している場合は先天梅毒の原因となります。
日本における治療(ガイドライン準拠)
日本性感染症学会・日本泌尿器科学会のガイドラインに基づきます。
- アモキシシリン(AMPC)内服
成人:1日1.5〜3.0gを分割投与
- 早期梅毒(潜伏を含む):2週間
- 後期潜伏または不明期:4週間 - プロベネシド
血中濃度維持の目的で併用する場合があります。 - ペニシリンアレルギー例
ドキシサイクリン(100mg 1日2回、早期2週間/後期4週間)が代替療法として記載されています。 - 妊婦
アモキシシリンまたはペニシリンが推奨され、アレルギー例では脱感作の上でペニシリン投与を検討します。
日本での流行状況
厚生労働省の発生動向調査によると、梅毒の報告数は近年増加し、2023年には過去最多を記録しました。
東京都の病型別データでは「無症状病原体保有者(潜伏梅毒)」は毎年20〜40%程度を占めていますが、特別に増加しているわけではありません。
補足情報(海外ガイドライン)
- CDC(米国):第一選択はベンザチンペニシリン筋注(BPG)。早期潜伏は1回投与、後期潜伏は週1回×3回投与。
- WHO:同様にBPG筋注を第一選択としています。
まとめ
- 潜伏梅毒は「症状がなく、血清反応で診断される梅毒」。
- 日本ではアモキシシリン内服が第一選択肢として明記され、早期は2週間、後期は4週間投与。
- ペニシリンアレルギー例にはドキシサイクリン、妊婦はアモキシシリンまたはペニシリン。
- 日本では全体の報告数が増加しているが、無症状例のみの増加は確認されていない。
参考文献
- 日本性感染症学会「性感染症診断・治療ガイドライン2020」
- 日本泌尿器科学会「性感染症診療ガイドライン2020」
- 厚生労働省 感染症発生動向調査(梅毒)
- 国立感染症研究所 梅毒関連解説
- 東京都感染症情報センター「梅毒の流行状況」
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