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トラネキサム酸と低用量ピルの併用で血栓リスクは本当に高くなるの?

トラネキサム酸と低用量ピルの併用で血栓リスクは本当に高くなるの?

[2025.05.21]

結論から言うと…

「トラネキサム酸(トランサミン)」と「低用量ピル(LEP)」を一緒に使うことで、血栓ができやすくなる可能性はありますが、実際にそのリスクが大きく上がるとはっきり証明されたわけではありません

それぞれの薬の働き

  • トラネキサム酸は、出血を止めやすくする薬で、血を固める働きを助けます。
  • 低用量ピルは、ホルモンバランスを整える薬ですが、血液を固まりやすくする作用も持っています。

そのため、「どちらも血を固める方向に働く」という点から、理論的には血栓ができるリスクが上がる可能性があると考えられています。

どれくらい危険なの?

これまでの大きな研究では、トラネキサム酸を使ったことで血栓が増えたという明確な結果は出ていません。また、ピルだけを使った場合でも、特に健康な若い女性ではリスクはそれほど高くありません。

ただし、**「もともと血栓ができやすい体質の人」や「過去に血栓ができたことがある人」、「喫煙している人」、「40歳以上の人」**などは注意が必要です。

実際の使い方はどうすればいいの?

  • どうしても併用が必要な場合は、採血等で血栓傾向の有無を確認しながら行うことが望ましいでしょう。

まとめ

  • 併用で血栓リスクが「確実に上がる」と言える強い証拠はありません。
  • ただし、両方とも血を固めやすくする薬なので、併用は慎重に
  • 心配な方は、医師に「自分は血栓ができやすい体質かどうか」を相談するのが安心です。

当院ではプチドックでDダイマー(血栓傾向)の検査を承っております。ぜひご利用ください。

 

引用文献・参考資料

  1. WOMAN Trial Collaborators.

    Effect of early tranexamic acid administration on mortality, hysterectomy, and other morbidities in women with post-partum haemorrhage (WOMAN): an international, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

    The Lancet. 2017 May 27;389(10084):2105-2116.

    → トラネキサム酸の大量使用でも血栓リスクは増加せず。
  2. van Hylckama Vlieg A, et al.

    The risk of venous thrombosis associated with oral contraceptives: a comparison of different products.

    BMJ. 2009;339:b2921.

    → 低用量ピル使用者は非使用者に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが約2〜6倍。
  3. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会

    『OC・LEPガイドライン 2020年度版』

    → トラネキサム酸との併用に関して「相対的禁忌」とし、慎重な判断を推奨。
  4. National Institute for Health and Care Excellence (NICE)

    Heavy menstrual bleeding: assessment and management (NG88).

    2018.

    → トラネキサム酸を第一選択として推奨するが、VTEリスクのある場合は使用に注意。
  5. 日本医薬情報センター(JAMID) 医療用医薬品添付文書

    『トラネキサム酸製剤 添付文書』

    → 「血栓傾向のある患者」には慎重投与。

 

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