院長ブログ |

スタチン系薬剤とは

スタチン系薬剤とは

[2025.10.25]

スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、肝臓でのコレステロール合成を抑制し、血中LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる薬剤群です。

動脈硬化性疾患予防の中心的薬剤であり、日本でも一次予防・二次予防の両方で広く用いられています。


日本で使用可能なスタチン一覧(2025年時点)

一般名

主な商品名

作用時間

標準投与量

最大投与量

代謝経路

特徴

ロスバスタチン

クレストール、ロスバスタチン

長時間型

2.5〜5mg/日

20mg/日

一部CYP2C9

最も強力。日本人では低用量でも効果大。腎排泄比率がやや高い。

アトルバスタチン

リピトール、アトルバスタチン

中時間型

10mg/日

40mg/日

CYP3A4

強力かつ安定。CKDや糖尿病にもよく用いられる。

ピタバスタチン

リバロ、ピタバスタチン

中時間型

1〜2mg/日

4mg/日

CYP2C9

HDL上昇作用が比較的強い。日本発のスタチン。

プラバスタチン

メバロチン、プラバスタチン

短時間型

10〜20mg/日

40mg/日

CYP非依存

相互作用が少なく高齢者・多剤併用例に安全。

シンバスタチン

リポバス、シンバスタチン

短時間型

5〜10mg/日

20mg/日

CYP3A4

古典的スタチン。強力ではないが実績豊富。

フルバスタチン

ローコール、フルバスタチン

短時間型

20〜40mg/日

80mg/日

CYP2C9

効果は穏やかだが副作用が少ない。

ロバスタチン

メバロチンと同系(国内販売終了)

国内では実質使用なし。

スクロールOK


LDL低下効果の強さ(メタ解析による比較)

スタチン

LDL-C低下率(目安)

ロスバスタチン 20mg

約55%

アトルバスタチン 40mg

約50%

ピタバスタチン 4mg

約45%

シンバスタチン 20mg

約35%

プラバスタチン 20mg

約30%

フルバスタチン 80mg

約25%

(引用:Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration, Lancet 2019)


投与の考え方(日本動脈硬化学会ガイドライン2022年版)

  • 一次予防:LDL-C 160mg/dL以上で、生活習慣改善後も高値が続く場合に検討。
  • 二次予防(冠動脈疾患、脳梗塞、PAD既往など):LDL-C 70mg/dL未満を目標にスタチンを基本とする。
  • 高リスク例(糖尿病・CKD・家族性高コレステロール血症):より厳格な管理(LDL-C 100mg/dL未満を目標)。

併用療法と強化戦略

  1. エゼチミブ併用(例:ロスバスタチン+エゼチミブ=ロスーゼット®)

    → LDL-C追加低下10〜20%。二次予防例で推奨。
  2. PCSK9阻害薬併用(エボロクマブ、アリロクマブ)

    → スタチンで十分に下がらない例に使用。LDL低下60%以上。
  3. ベムペド酸(2023年承認、日本でも使用可能)

    → スタチン不耐例に有効。

代表的な臨床試験とエビデンスレベル

試験名

薬剤

対象

主要結果

雑誌・年

4S試験

シンバスタチン

CAD患者

総死亡率30%減

Lancet 1994

CARE試験

プラバスタチン

心筋梗塞後

二次予防効果確認

NEJM 1996

LIPID試験

プラバスタチン

冠動脈疾患

再発率低下

NEJM 1998

TNT試験

アトルバスタチン

CAD患者

高用量群で再発率減

NEJM 2005

JUPITER試験

ロスバスタチン

炎症高値・LDL正常例

一次予防効果示唆

NEJM 2008

REAL-CAD試験(日本)

ピタバスタチン

安定冠動脈疾患

二次予防効果を確認

JAMA 2017

→ スタチンの心血管イベント抑制効果は一次・二次予防ともエビデンスレベルA(最上位)。


副作用と注意点

主な副作用

内容

対応

筋障害(筋肉痛、CK上昇)

頻度1〜5%、重篤な横紋筋融解症は稀

CK・腎機能モニタリング

肝機能障害

ALT上昇など(1〜3%)

定期採血で経過観察

糖尿病発症リスク

軽度上昇報告あり

高リスク例では注意

薬物相互作用

CYP3A4阻害薬併用注意(マクロライド系、アゾール系など)

プラバスタチン・ピタバスタチンは安全


内科臨床での実用的な選択指針

状況

推奨スタチン

高LDL(強力に下げたい)

ロスバスタチン、アトルバスタチン

糖尿病併発

ピタバスタチン(HDL改善・耐糖能影響少)

多剤併用・高齢者

プラバスタチン、フルバスタチン

腎機能低下

アトルバスタチン(腎排泄少)

国産薬で安全性重視

ピタバスタチン(リバロ)


まとめ

日本で使用可能なスタチンは6種類。いずれもエビデンスレベルAの心血管疾患予防効果を持ち、患者背景に応じた使い分けが重要です。

特にロスバスタチン・アトルバスタチン・ピタバスタチンが現在の主力3剤です。

投与後は肝機能・CK・血糖値の定期確認を行い、筋症状が出た場合は速やかに中止・評価します。


参考文献(エビデンス)

  1. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
  2. Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration. Lancet 2019;393:407–415.
  3. Ridker PM et al. JUPITER Trial. N Engl J Med 2008;359:2195–2207.
  4. Taguchi I et al. REAL-CAD Study. JAMA 2017;317(7):713–722.
  5. LaRosa JC et al. TNT Trial. N Engl J Med 2005;352:1425–1435.

ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから

https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

犬に咬まれたらまず何をすべき? ― 応急処置・病院受診の目安・感染リスクを内科医が解説 (2026年2月19日)
この記事の要点
犬に咬まれた直後にまずやるべきことは、流水で最低5分間、傷口を徹底的に洗い流すことです。 これが感染予防において最もエビデ… ▼続きを読む 外国人診療をつつがなくこなしているクリニックは、日本人に対する診療姿勢も良いと予想される理由 (2026年2月15日)
最近、日本の医療現場でも外国人患者を診る機会は確実に増えています。観光、留学、就労など背景はさまざまですが、「言語や文化が異なる患者を診療す… ▼続きを読む デパスは本当に危険な薬なのか? ―依存性問題と臨床的役割を整理する― (2026年2月14日)
「デパスは危ない薬らしい」
「依存になるから絶対にやめた方がいい」
このような情報を目にして、不安になったことがある方もいるかもしれませ… ▼続きを読む 花粉症市販薬を徹底比較⑥【完全版】 OTCで治らない花粉症 ― どこからが医療介入か。市販薬の限界を“重症度と作用機序”で整理する ― (2026年2月13日)
シリーズ最終回は、結論を明確にします。
市販薬(OTC)は、成分そのものは医療用と共通のものも多く、軽症〜中等症の一部では合理的に使えます… ▼続きを読む 花粉症市販薬を徹底比較⑤【完全版】 総合鼻炎薬という名の“配合カプセル”を解体する ― パブロン鼻炎カプセルSα・コンタック鼻炎Zの成分構造を読む ― (2026年2月13日)
ここまでで整理したように、
・抗ヒスタミン単剤
・点鼻ステロイド
・血管収縮薬
は、それぞれ作用機序が明確です。
一方、市販棚で目… ▼続きを読む

ページ上部へ戻る