【最新研究】マンジャロなどGLP-1受容体作動薬は、実は膵炎のリスクを下げる?
【最新研究】マンジャロなどGLP-1受容体作動薬は、実は膵炎のリスクを下げる?
[2025.05.26]
これまで「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)は膵炎になりやすいのでは?」と心配されてきましたが、最近の研究で“むしろリスクを下げるかもしれない”という意外な結果が報告されました。
「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」は、GLP-1とGIPの2つの受容体に作用する薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)で、医療の現場でも注目されています。
そもそもGLP-1受容体作動薬ってなに?
GLP-1製剤は、もともと2型糖尿病の治療薬として登場しました。インスリンの分泌を促すだけでなく、食欲を抑える作用もあるため、日本では、同じ系統の一部の薬が肥満症の治療薬としても承認されています(体重を減らす目的だけの使用は承認外です)。
日本では「マンジャロ」「オゼンピック」「リベルサス」などがよく知られています。
従来の不安:「膵炎になりやすい?」
過去には「GLP-1製剤を使うと膵臓に負担がかかって膵炎を起こすかもしれない」という懸念がありました。確かに、使用開始初期に腹痛や吐き気などの症状が出る方もおり、それが誤って「膵炎かも?」とされるケースもありました。
ただし、これまでの報告の多くは動物実験レベルやデータの限られたものであり、「本当に膵炎を引き起こすのか?」という点は医学界でも意見が分かれていました。
【最新の研究】実は膵炎リスクを下げていた?
2025年に発表されたアメリカの大規模研究では、過去に膵炎を起こしたことのある2型糖尿病や肥満の患者を対象に、GLP-1製剤を使用した場合の「膵炎再発リスク」が検討されました。
結果は意外にも、
- GLP-1製剤を使用していた人たちは、していない人たちよりも 膵炎の再発率が低い
- さらに別の研究では、GLP-1製剤を使っていた2型糖尿病の人は、急性膵炎になった場合の 重症化リスクや死亡率も低い
というものでした。
これまでとは逆の結果に、医療関係者の間でも注目が集まっています。
なぜ膵炎リスクが下がるの?
正確なメカニズムはまだ研究中ですが、以下のような要因が考えられています。
- 体重が減ることで膵臓への負担が軽くなる
- 血糖値が安定し、慢性的な炎症が起きにくくなる
- GLP-1自体に抗炎症作用がある可能性
ただし、すべての人にあてはまるとは限らず、引き続き慎重な使用と経過観察が必要です。
では、安心して使っていい薬なの?
もちろん「安全な薬です」と言い切れるものではありませんが、適切に使えばリスクよりもメリットのほうが大きいと考えられる時代になってきました。
当院でもマンジャロを取り扱っていますが、医療ダイエットでは膵炎にかかったことがある方には処方していません。
「興味はあるけど不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。薬の特徴や副作用について、丁寧に説明いたします。
まとめ
GLP-1製剤と膵炎の関係については、膵炎の再発が少なかったとする観察研究が報告されています。ただし、添付文書では今も急性膵炎が重大な副作用とされ、膵炎の既往歴のある方は注意が必要とされています。
薬に関する情報は日々進化しています。過去のイメージにとらわれず、最新のエビデンスを参考にした選択をしていくことが、健康を守る第一歩です。
参考文献(エビデンス)
本記事は、以下の信頼性の高い文献・研究に基づいて執筆しています。
- Nassar M, et al. “Use of glucagon-like peptide-1 receptor agonists in people with history of acute pancreatitis: TriNetX analysis.” Diabetes & Metabolism. 2025;51(2):101613./Nieto LM, et al. “Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists Use Does Not Increase the Risk for Acute Pancreatitis and Is Associated With Lower Complications in Patients With Type 2 Diabetes Who Develop Acute Pancreatitis: A Multicenter Analysis.” The American Journal of Gastroenterology. 2026;121(2):424–431(2025年5月オンライン公開).
→ 膵炎の既往がある2型糖尿病の患者約67万人の診療記録(TriNetX)で、GLP-1RA群は膵炎の再発が少なかった(Nassar)。別の研究では、急性膵炎になった2型糖尿病の患者で、GLP-1RA群は重症化と死亡が少なかった(Nieto)。 - ENDO 2024(Endocrine Society Annual Meeting), Nassar M, et al.(学会発表)
→ 膵炎既往のある糖尿病患者におけるGLP-1RAの予後改善効果についての国際学会発表。 - マンジャロ皮下注アテオス 添付文書(日本イーライリリー)
→ 急性膵炎を重大な副作用として記載。膵炎の既往歴のある患者は注意が必要な患者とされ、膵炎と診断された場合は再投与しないこととされている。
エビデンスレベルについて
上記のうち論文は査読付き英文医学雑誌に掲載されたもので、学会発表は論文化前の速報です。特に本研究は、
- 対象者数が多い(数十万人規模)
- 傾向スコアマッチング等の高度な統計手法を用いた設計
- 死亡率・合併症など臨床的に重要なアウトカムを対象
という特徴がありますが、診療記録を後ろ向きに調べた観察研究のため因果関係までは示せず、著者らも前向き研究での確認が必要としています。
薬の正しい評価は、常に最新の研究に基づくべきです。不安な点があれば、いつでもご相談ください。
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※2026年10月30日 訂正:本文の記載と参考文献を一次資料で確認し、誤りを修正しました。