「立ちくらみ」が続くときに知っておきたいこと
「立ちくらみ」が続くときに知っておきたいこと
[2025.05.16]
― その症状、体からのサインかもしれません ―
「立ち上がった瞬間にクラクラする」「視界が白くなる」「目の前が真っ暗になる感じがする」
このような“立ちくらみ”は、多くの方が一度は経験するありふれた症状です。しかし、繰り返す場合や症状が強い場合は、何らかの病態が背景にあることが少なくありません。
本日は、立ちくらみの主な原因、対処法、そしてどのようなときに医療機関を受診すべきかについて解説します。
立ちくらみの主な原因とメカニズム
1. 起立性低血圧(orthostatic hypotension)
これは、座位や臥位から立ち上がったときに、急激に血圧が下がることで起こる症状です。
立ち上がると重力によって血液が下半身に貯まり、一時的に脳への血流が減少するため、めまいやふらつき、時に失神を起こすことがあります。
代表的な誘因:
- 長時間の臥床や体調不良後の起立
- 発熱や下痢などによる脱水
- 高齢者や神経疾患のある方(パーキンソン病など)
- 降圧薬、利尿薬、抗うつ薬などの内服
診断の定義(日本循環器学会 2022):
- 起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する場合に診断されます。
2. 神経調節性失神(血管迷走神経反射)
若年者やストレスに敏感な方に多くみられます。
強い緊張、長時間の直立、空腹、痛みなどにより自律神経の調整が乱れ、血圧と脈拍が同時に下がることで、一時的な脳虚血が起こります。
「気分が悪くなり、座り込んで回復する」「冷や汗や吐き気を伴うことがある」のが特徴です。
3. その他の原因
- 貧血(鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血など)
→ 酸素を運ぶ赤血球が減ることで、脳の酸素供給が不足します。特に月経過多や消化管出血などがある場合は注意が必要です。 - 低血糖
→ 空腹時や糖尿病治療中に血糖が下がり、立ちくらみや冷や汗、動悸を引き起こします。 - 心疾患(不整脈、弁膜症など)
→ 特に高齢者で「失神」や「転倒」を伴う場合は、心電図や心エコーなどの評価が重要です。
ご家庭でできる対策と予防法
水分と塩分の適切な補給
脱水が背景にある場合が多いため、こまめな水分補給と軽度の塩分摂取が基本となります。
起き上がりはゆっくりと
ベッドや椅子から立ち上がるときには、まず体を横から起こして数秒キープし、それから立ち上がるようにすると、血圧の急降下を防ぎやすくなります。
筋肉を使った血流コントロール
ふくらはぎの筋ポンプ運動(つま先立ち、屈伸など)で下半身の血液の滞留を防ぎます。
長時間立っているときは、足をクロスして膝を締める姿勢なども有効です。
生活習慣の見直し
- 朝のシャワーや入浴で血圧が下がる場合は注意が必要です。
- アルコールやカフェインの摂取も、自律神経に影響することがあります。
受診の目安 ― こんな症状があれば医師へ相談を
以下のような場合は、精密な検査が必要です。
- 立ちくらみが週に複数回ある、もしくは毎日繰り返す
- 失神・転倒をしたことがある
- 胸の違和感、動悸、不整脈を感じる
- 脱水のような状況でなくても症状が出る
- 月経過多や消化器症状、慢性的な疲労感、体重減少がある
- 高齢者や持病がある方で、「なんとなくふらつく感じ」が続く
医学的根拠(エビデンスの提示)
- 日本循環器学会:起立性低血圧の診療ガイドライン(2022)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/07/JCS2022_kaneko.pdf - European Society of Cardiology (ESC) Guidelines on Syncope (2018)
血管迷走神経反射や起立性調節障害の診断基準・治療指針を網羅しています。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/39/21/1883/4939384 - 貧血・低血糖に関して
日本内科学会「内科診断学第5版」および日本糖尿病学会「低血糖診療ガイドライン2019」より。
最後に
立ちくらみは、「一時的な現象」と片付けられがちですが、背景に疾患が隠れている場合もあり、放置すると転倒や失神による外傷リスクも高くなります。
日常生活に支障を感じている方は、お気軽にご相談ください。早期の評価が、将来的な事故や体調不良を防ぐ第一歩になります。
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