検診の心電図で「WPW症候群の疑い」と言われたら——意味と、放置していいのかを内科医が解説
健康診断や人間ドックの心電図で、「WPW症候群の疑い」と書かれて驚かれる方は少なくありません。聞き慣れない名前で、心臓の病気と言われると不安になると思います。結論からお伝えすると、多くの場合は無症状で、過度に怖がる必要はありません。ただし「放置していい」わけではなく、一度きちんと評価しておくことが大切です。順番に説明します。
WPW症候群とは——心臓に「余分な電気の近道」がある
心臓は、心房から心室へ、決まった通り道を通って電気の信号が伝わることで規則正しく動いています。WPWでは、この正規のルートとは別に、心房と心室をつなぐ「余分な電気の通り道(副伝導路、ケント束)」が生まれつきあります。頻度は1000人に数人とされ、珍しいものではありません。普段はこの近道があっても、とくに問題なく過ごせます。
心電図の特徴
WPWは心電図に特徴的な形が出ます。具体的には、心房から心室への伝わりが速くなることによるPQ(PR)時間の短縮、QRS波の立ち上がりがなだらかになる「デルタ波」、そしてQRS幅の延長です。検診ではこの形を拾って「WPW症候群の疑い」と指摘されます。
「WPWパターン」と「WPW症候群」は少し違う
厳密にいうと、心電図にこの形が出ているだけで症状がないものを「WPWパターン」、実際に動悸の発作(頻拍)などを起こすものを「WPW症候群」と呼び分けます。検診で見つかる多くは、症状のないWPWパターンです。また、デルタ波が出たり消えたりする「間欠性」のタイプは、副伝導路の伝導性が低く、比較的危険の少ない状態とされています。
何が問題になるのか
余分な通り道があると、ときに電気の信号がそこをぐるぐる旋回して、突然始まる動悸の発作(発作性上室頻拍)を起こすことがあります。多くは命に関わるものではありませんが、つらい動悸が起こります。
注意が必要なのは、心房細動という別の不整脈が起きたときに、副伝導路を通って心室へ非常に速く電気が伝わってしまう場合です。これは危険な頻脈につながることがあり、ごくまれに重い不整脈の原因になることがあります。頻度は高くありませんが、この可能性があるために、無症状でも一度評価しておく意味があります。
検診で言われたら——放置せず一度評価を
「疑い」と言われたら、まずは循環器の診療で評価を受けることをおすすめします。評価では、これまでに動悸や失神がなかったかの問診、心臓の構造を調べる心エコー、運動中の心電図変化をみる運動負荷検査、24時間の心電図(ホルター)などを、必要に応じて行います。たとえば運動でデルタ波が消えるようなら、比較的低リスクと考える材料になります。無症状でも、競技スポーツをする方、特定の職業(運転業務など)の方、若い方では、より詳しいリスク評価(電気生理学的検査)を検討することもあります。
治療
無症状で低リスクと判断される場合は、経過観察になることが多いです。一方、動悸の発作を繰り返す場合や、リスクが高いと判断される場合には、カテーテルアブレーションという、余分な通り道を内側から焼いて断つ治療が根治的な方法として行われます。成功率は高い治療です。
なお、発作のときに使う薬には注意点があり、WPWで心房細動を合併した状況では、かえって危険になるため使えない薬があります。動悸がしたからと、市販薬や以前処方された薬を自己判断で使うのは避けてください。
こんなときは早めに受診を
- 突然始まって突然止まる動悸の発作がある
- 失神(気を失う)や、めまい、強い息切れを伴う
- 競技スポーツや、特定の職業で心臓の評価が必要
まとめ
検診の心電図で「WPW症候群の疑い」と言われても、その多くは無症状で、すぐに命に関わるものではありません。とはいえ、まれに危険な不整脈につながる可能性があるため、放置せず一度きちんと評価しておくことが大切です。発作を繰り返す場合はカテーテルアブレーションという根治的な治療もあります。指摘された方は、自己判断せず一度ご相談ください。
参考文献
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会 不整脈に関する診療ガイドライン(カテーテルアブレーションを含む)
- 日本心臓財団「WPW症候群」
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