台風の前・最中・あとで危惧される病気——喘息の悪化から破傷風まで、時系列で内科医が解説
台風が近づくと、外来の相談内容が少し変わります。頭痛やめまいが増え、喘息の調子を崩す方が出て、台風が過ぎたあとには、片付け中のけがや胃腸の不調が続きます。
台風による健康被害は「上陸中」だけではありません。この記事では、台風の前・最中・後という時間の流れに沿って、それぞれの時期に危惧される病気と備えを内科医の視点で整理します。
台風の前——気圧の変化と「悪化する持病」
頭痛・めまい・だるさ(気象病)
台風の接近に伴う急な気圧の低下で、頭痛・めまい・古傷の痛み・気分の落ち込みが出やすくなる方がいます。いわゆる気象病(天気痛)で、当院ブログでも別記事で詳しく解説しています。片頭痛をお持ちの方は、頓服薬を手元に用意しておくと安心です。
喘息・COPDの悪化
見落とされやすいのがこちらです。台風の前後は、気圧や湿度の急変、雨で舞い上がる粒子などの影響で、喘息の発作が増えやすいことが知られています。海外では、雷雨のあとに喘息発作が急増する「雷雨喘息」という現象も報告されています。
吸入薬を使っている方は、残量をこの時期に確認してください。「発作用の吸入薬が空だった」というのは、台風の夜にいちばん困るパターンです。調子が崩れ始めているサイン(夜間の咳、息苦しさ、発作止めの使用回数が増える)があれば、台風が来る前に受診しておくことをおすすめします。
持病の薬と「受診できない数日」への備え
台風で交通が止まると、医療機関も休診になることがあります。血圧・糖尿病・心臓の薬などが残り少ない方は、切れる前に早めの受診を。特にインスリンや抗凝固薬など、1日でも欠かすと影響が大きい薬は余裕を持たせてください。
台風の最中——けがと、停電の二次被害
外に出ないことがいちばんの予防
暴風時のけがの多くは、屋外での作業中に起きています。「雨戸を直そうとして」「様子を見に行って」——強風の中の屋根・ベランダ・田畑の見回りは、転倒や飛来物で大けがにつながります。備えは台風が来る前に済ませ、最接近中は屋内にとどまってください。
停電と夏の台風——熱中症のリスク
夏の台風で怖いのが、停電によるエアコンの停止です。特に高齢の方は、締め切った室内で夜間に熱中症が進むことがあります。停電したら、風通しの確保・水分と塩分の補給を意識し、体調がおかしいと感じたら無理をせず涼しい場所(車内の冷房や避難所など)へ移ってください。
在宅酸素などの医療機器を使っているご家族がいる場合は、停電時の対応(バッテリー・業者や医療機関への連絡先)を台風前に確認しておきましょう。
台風のあと——実は受診が増える時期です
片付け中のけがと破傷風
台風後の片付けでは、割れたガラス・飛散したトタン・釘などで手足を切るけがが増えます。ここで知っておいていただきたいのが破傷風です。破傷風菌は土の中に広くいる菌で、泥や土に触れた傷から感染することがあります。
汚れた傷を負ったら、まず流水でしっかり洗い、受診してください。傷の状態と予防接種歴によっては、破傷風の追加接種が必要になることがあります。最後の接種から10年以上たっている方は、免疫が下がっている可能性があります。片付けの際は、厚手の手袋と底の厚い靴を忘れずに。
食中毒——停電した冷蔵庫の中身
停電が数時間を超えた場合、冷蔵庫の食品は傷んでいる可能性があります。「もったいない」が食中毒につながる時期です。判断に迷う食品(肉・魚・乳製品・作り置き)は処分する勇気を。浸水した地域では、水に浸かった食品や食器も注意が必要です。
浸水後の環境——カビと胃腸炎
床上浸水などがあった場合、汚水には細菌が含まれるため、片付け後の手洗いを徹底してください。下痢や嘔吐が出たら胃腸炎の可能性があります。また、浸水後の住まいはカビが生えやすく、喘息やアレルギーの悪化要因になります。乾燥と換気を早めに進めましょう。
受診の目安
- 喘息の調子が崩れ始めた(夜間の咳・発作止めの使用増)——台風が来る前に
- 持病の薬が台風期間中に切れそう——早めの受診を
- 土や泥で汚れた傷を負った、最後の破傷風接種から10年以上——傷の処置と接種の相談を
- 片付け後の発熱・下痢・嘔吐が続く
- 停電中・停電後に、頭痛・めまい・ぐったりなど熱中症のサイン
まとめ
- 台風の健康リスクは「前・最中・後」で顔ぶれが変わります
- 前:気象病、喘息・COPDの悪化、持病の薬の残量確認
- 最中:屋外作業のけが、停電による熱中症
- 後:片付けのけがと破傷風、停電後の食中毒、浸水後の胃腸炎とカビ
- いちばんの備えは「台風が来る前」にあります。薬の確認と早めの受診を
参考文献
- 気象庁 台風に関する防災情報
- 厚生労働省 災害時の健康管理・食品衛生に関する情報
- 日本アレルギー学会 喘息と気象条件に関する知見(雷雨喘息を含む)
- 破傷風の予防(外傷時のトキソイド接種)に関する診療情報
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