帰省ラッシュの長時間運転で脚に血栓?——旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)の予防と受診の目安を内科医が解説
お盆の帰省や旅行で、車や飛行機、新幹線に長時間乗ったあと、片方の脚がむくんで痛い、急に息が切れる——そんな症状が出たら、それは疲れではなく「旅行者血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)」かもしれません。長時間同じ姿勢で座り続けることで脚の静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気で、飛行機に限らず、車の運転や渋滞中の同乗でも起こります。
なぜ長時間の移動で血栓ができるのか
脚の静脈の血液は、ふくらはぎの筋肉がポンプのように収縮することで心臓へ戻っていきます。座ったまま脚を動かさない時間が続くと、このポンプが働かず、膝の裏や太ももの深い静脈で血液がよどみます。そこに、汗をかいて水分が不足した状態(血液が濃くなる状態)が重なると、血栓ができやすくなります。
これを「深部静脈血栓症」と呼びます。こわいのは、できた血栓の一部がはがれて血流に乗り、肺の血管に詰まる「肺血栓塞栓症」を起こした場合です。突然の息切れや胸の痛み、失神などが起こり、命に関わることがあります。
飛行機だけの病気ではありません
「エコノミークラス症候群」という名前の印象から飛行機特有の病気と思われがちですが、発症のきっかけは長時間座ったまま動かないことそのものです。お盆の帰省ラッシュの渋滞で数時間トイレを我慢しながら座り続ける状況は、まさに条件がそろっています。災害時の車中泊で多発したことでも知られています。
血栓ができやすい方
- 妊娠中・出産後の方、経口避妊薬(ピル)を内服中の方
- がんの治療中の方、大きな手術を受けて間もない方
- 肥満のある方、下肢静脈瘤のある方、ご高齢の方
- 過去に血栓症を起こしたことがある方、ご家族に血栓症の方がいる方
こうした条件に当てはまる方は、長距離移動の際に特に意識して予防していただきたいところです。
移動中にできる予防
- 2時間に1回は休憩し、車から降りて歩く(サービスエリアの活用)
- 座ったままでも、足首を上下に動かす・ふくらはぎをもむ運動をこまめに行う
- 水分をしっかりとる。トイレを気にして水分を控えるのは逆効果です。アルコールやコーヒーは利尿作用があるため水やお茶で
- 体を締めつけない、ゆったりした服装で。可能なら着圧ソックス(弾性ストッキング)も有効です
移動のあと、こんな症状は受診を
血栓症は移動中だけでなく、到着後、数日から2週間ほど経ってから症状が出ることがあります。
- 片方の脚だけがむくむ、ふくらはぎが痛む、赤紫色になる——深部静脈血栓症のサインです。早めに医療機関を受診してください
- 突然の息切れ、胸の痛み、失神——肺血栓塞栓症の可能性があります。ためらわず救急要請(119番)してください
「両脚が同じようにむくむ」のは移動後によくある一過性のむくみのことが多いですが、「片脚だけ」の腫れや痛みは血栓を疑う重要な手がかりです。長距離移動のあとの脚の違和感が続くときは、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」
- 日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」
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