プールや海のあとの耳の痛み——外耳炎(スイマーズイヤー)の見分け方と、綿棒がいけない理由を内科医が解説
「プールに行ったあとから、耳が痛い」「海で泳いだ翌日、耳がかゆくて詰まった感じがする」——夏の終わりにかけて、こうしたご相談をいただきます。
多くは外耳炎(がいじえん)です。水泳との関係が深いことから、英語では「スイマーズイヤー」とも呼ばれます。この記事では、中耳炎との見分け方、やりがちで実はよくないお手入れ、そして注意が必要な場合について整理します。
外耳炎とは——耳の「入口から鼓膜まで」の炎症
耳の穴から鼓膜までの通り道を外耳道といいます。ここの皮膚に炎症が起きた状態が外耳炎です。鼓膜より奥で起こる中耳炎とは、場所が違います。
外耳道の皮膚は薄く、皮脂や耳あかが薄い膜のようにおおって、細菌が増えにくい環境をつくっています。水に長くつかるとこの膜がふやけて流れ、皮膚がむき出しになります。そこに小さな傷が加わると、細菌が入り込みやすくなります。
症状の出方
- はじめはかゆみや違和感。掻くと一時的に楽になるが、翌日にはひどくなる
- 次第に痛みが強くなる。あくびや食事であごを動かすと響く
- 耳が詰まった感じ、聞こえにくさ
- 耳だれ(黄色っぽい、においを伴うことがある)
中耳炎との見分け方——耳を引っ張ってみる
ご自宅でできる目安があります。耳たぶを後ろ上に軽く引っ張る、あるいは耳の前の出っぱりを押してみて、痛みが強くなるかどうかです。
外耳炎では、外耳道の皮膚そのものが腫れているため、引っ張ると痛みます。一方、中耳炎は鼓膜の奥の炎症なので、引っ張っても痛みは変わらないことが多くなります。
また、かぜのあとに起こりやすいのが中耳炎、水に入ったあとや耳掃除のあとに起こりやすいのが外耳炎、という違いもあります。
綿棒でのお手入れが、いちばんの悪化要因です
かゆいので綿棒で掃除する——これがもっともよくない対応です。
綿棒は、耳あかを奥へ押し込むうえに、薄い皮膚に細かい傷をつけます。先ほどの「細菌が増えにくい膜」を自分ではがしてしまうことにもなります。かゆみがいったん治まるので繰り返しやすく、その間に炎症は深くなっていきます。
耳かき、指、ヘアピンなども同じです。症状が出ている間は、耳の中に何も入れないでください。これだけで経過が変わります。
受診先——耳の中を見るのは耳鼻咽喉科です
外耳炎の診断と治療には、外耳道の中を直接見て、たまった耳あかや分泌物を吸引・洗浄し、必要に応じて点耳薬を使うという処置が要ります。専用の器具と技術が必要な領域で、耳鼻咽喉科が本来の窓口です。当院を含む一般の内科では、処置までは行えません。
痛みが強い、耳だれが出ている、聞こえが落ちている——このようなときは、内科ではなく耳鼻咽喉科を受診してください。そのほうが確実に早く治ります。
内科の立場からひとつだけ——糖尿病のある方は要注意です
まれではありますが、外耳炎が外耳道の奥の骨や周囲の組織まで広がる、重症の型が知られています。高齢の方、糖尿病のある方、免疫が落ちている方に起こりやすく、入院して長期間の治療が必要になることがあります。
次のような場合は、様子を見ずに受診してください。
- 糖尿病がある方で、耳の痛みが数日たっても引かない、むしろ強くなる
- 夜眠れないほどの痛み
- 耳のまわりが腫れる、発熱を伴う
- 顔が動かしにくい、口が閉じにくいなどの症状が出た
血糖のコントロールが乱れていると治りにくくなるため、この時期の血糖の管理はいつも以上に大切になります。ここは内科でお手伝いできる部分です。
予防——「乾かす」と「触らない」
- 泳いだあとは、耳を下に傾けて水を出し、タオルで耳の入口だけを軽く押さえて拭く
- ドライヤーを使うなら、冷風〜ぬるい風を離して当てる程度に
- 耳の中を綿棒でぬぐわない。耳あかは通常、自然に外へ出ていきます
- 繰り返す方は、水泳用の耳栓を検討する
- イヤホンを長時間つける習慣がある方は、蒸れる時期だけでも使用時間を短くする
まとめ
- プールや海のあとの耳の痛み・かゆみ・詰まった感じは、外耳炎(スイマーズイヤー)のことが多くあります
- 耳を引っ張ると痛みが強くなるなら外耳炎、変わらないなら中耳炎を考えます
- 綿棒でのお手入れは悪化要因です。症状があるうちは耳の中に何も入れないでください
- 処置が必要なため、受診先は耳鼻咽喉科です
- 糖尿病のある方や高齢の方では重症化することがあり、痛みが引かない・腫れる・発熱するときは早めの受診を
参考文献
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 外耳炎に関する診療情報
- 外耳道炎・悪性外耳道炎に関する診療情報(糖尿病・免疫低下例のリスク)
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