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真夏のインフルエンザが増えています——熱中症と思って様子を見ないで。2026年8月の流行状況と注意点を内科医が解説

この真夏に、インフルエンザの報告が全国で増えています。国の感染症発生動向調査(IDWR速報値)では、2026年第32週(8月3日〜9日)の全国の定点当たり報告数が0.52となり、前週から4割増、例年の同時期のおよそ3倍という、真夏としては異例の水準です。首都圏でも神奈川県が第33週(8月10日〜16日)に1.37と、流行開始の目安である「1.0」を超えました。

福岡県はどうかというと、第33週の定点当たり報告数は0.47で、まだ流行開始の目安には達していません。ただ、県内でも北九州地区は0.81と目安に近づいており、人の移動が多かったお盆明け、そして学校再開の時期と重なるこれからは、油断できない状況です。

今回は、「真夏のインフルエンザ」で特に注意していただきたい点を整理します。

最大の落とし穴は「まさか夏にインフルとは思わない」こと

真夏のインフルエンザで一番の問題は、ウイルスそのものではなく、本人も周囲も「インフルエンザだと思わない」ことです。

8月に38〜39℃の熱が出れば、多くの方はまず熱中症や夏バテ、夏かぜを疑います。「涼んで水分をとって様子を見よう」と1〜2日過ごしてしまう。ここに落とし穴があります。インフルエンザの治療薬(タミフルなどの抗インフルエンザ薬)は、発症から48時間以内に開始した場合に最も効果が期待できるとされており、「まさか」と思って様子を見ているうちに、この窓を逃してしまうのです。

周囲にうつす面でも同じことが起こります。冬なら発熱=「休む」となりやすいのに、夏は「ちょっとバテただけ」と解熱剤を飲んで出勤・登校してしまい、職場や部活動で広がる——季節外れの流行では、こうした経路が問題になります。

熱中症との見分け方

夏の高熱でまず問題になるのが、熱中症との区別です。目安として、次の点に注目してください。

  • 悪寒(ゾクゾクする寒気)や関節痛・筋肉痛を伴う——熱中症では通常みられず、インフルエンザを疑うサインです
  • 咳・のどの痛み・鼻水などの呼吸器症状がある——熱中症では出ません
  • 涼しい場所で休んで水分・塩分をとっても熱が下がらない、むしろ上がっていく——熱中症なら改善に向かうはずの対処で良くならないときは、感染症を考えます
  • 家族や職場・学校など、周囲に同じような発熱者がいる

逆に、炎天下での活動後にめまい・ふらつき・大量の汗(または汗が止まる)とともに体温が上がっている場合は、熱中症として一刻を争うことがあります。意識がおかしいときは迷わず救急要請してください。判断に迷う場合は、電話で医療機関に相談を。福岡県も「38℃以上の急な発熱や全身の倦怠感が現れた場合は、早めにかかりつけ医等に電話で相談を」と呼びかけています。

夏ならではの注意点——脱水が重なりやすい

インフルエンザの高熱は、それ自体が体の水分を大量に消費します。冬でも脱水には注意が必要ですが、真夏は発熱に猛暑が重なるため、脱水の進み方が冬より格段に速いと考えてください。特にご高齢の方やお子さんでは、高熱+食欲低下+暑さの三重奏で、短時間でぐったりしてしまうことがあります。

発熱時は経口補水液などで水分と電解質をこまめに補い、エアコンは我慢せず使ってください。「病気のときに冷房は体に悪い」ということはありません。むしろ高温の部屋で高熱を出しているほうが危険です。

ワクチンでは守れない時期です

インフルエンザワクチンの接種は例年10月頃から始まります。つまりいま流行している夏のインフルエンザに対しては、ワクチンという盾がない状態です(昨シーズンに接種したワクチンの効果は、時間の経過とともに減衰しています)。

だからこそ、基本の感染対策に立ち返る必要があります。手洗い、人混みでの適切なマスク着用、室内の換気——冬に当たり前にやっていたことを、この時期にも思い出してください。冷房中心の生活では換気がおろそかになりがちで、乾燥した冷房環境はウイルスにとって都合のよい面もあります。

学校再開・職場で広げないために

8月末から9月は学校の再開時期で、子どもたちの間で感染が広がりやすいタイミングです。学校保健安全法では、インフルエンザは「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止の基準です。これは夏でも変わりません。

また、お子さんがインフルエンザと診断された場合、発熱から少なくとも2日間は、一人にしないでください。インフルエンザでは、年齢を問わず(特に未成年で)急に走り出す・飛び降りようとするなどの異常行動が報告されており、発熱初期の見守りが大切です。

大人も同じで、発熱があるうちの出勤は控えてください。「夏の発熱=うつらない」ではありません。

受診の目安

  • 38℃以上の急な発熱に、悪寒・関節痛・咳やのどの痛みを伴う
  • 周囲(家族・職場・学校)にインフルエンザや発熱者がいて、自分も発熱した
  • 涼しい環境で水分をとっても解熱しない、ぐったりしてくる
  • 高齢の方・妊娠中の方・呼吸器や心臓などに持病のある方・お子さんの発熱(重症化しやすいため早めに)

発症からあまりに早い時間帯(目安として12時間以内)は、検査でウイルスを検出できないことがあります。受診のタイミングは電話でご相談いただければ、状況に応じてご案内します。

「真夏にインフルエンザ」は、いまや珍しいことではなくなりつつあります。夏の高熱を「暑さのせい」と決めつけず、いつもと違う発熱には早めの相談を。それが、ご自身の重症化を防ぎ、周囲への拡大を防ぐいちばんの近道です。

参考文献

  • 国立健康危機管理研究機構 感染症発生動向調査(IDWR)速報データ 2026年第32週
  • 福岡県「インフルエンザの流行状況について」(令和8年第33週)
  • 神奈川県衛生研究所 感染症情報(2026年第33週)
  • 文部科学省 学校保健安全法施行規則(出席停止の期間の基準)

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