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その不調、本当に夏バテ?——長引くだるさに隠れる病気と受診の目安を内科医が解説

夏の暑さが本格化するこの時期、「体がだるい」「食欲がない」「疲れがとれない」という不調で来院される方が増えます。いわゆる「夏バテ」です。

夏バテの多くは、暑さへの体の適応がうまくいかないことで起こる一時的な不調で、休養や生活の調整によって回復に向かいます。一方で、内科の外来では「夏バテだと思って様子を見ていたら、実は別の病気だった」というケースが一定数あります。

この記事では、夏バテの基本を整理したうえで、「夏バテらしくないサイン」と受診の目安、内科で行う検査について解説します。

夏バテとは——正式な病名ではない

「夏バテ」は正式な医学用語ではなく、高温多湿の環境に体がうまく適応できないことで生じる、さまざまな不調をまとめた呼び方です。代表的な症状には次のようなものがあります。

  • 全身のだるさ、疲労感
  • 食欲の低下
  • 胃もたれ、消化不良
  • 睡眠の質の低下(寝つきが悪い、眠りが浅い)
  • 頭が重い、集中力が落ちる

背景には、体温調節を担う自律神経への負担、発汗による水分・電解質の喪失、冷房による室内外の温度差、睡眠不足などが関与すると考えられています。夏バテの仕組みと基本的な対策については、当院の記事「夏バテの正体は自律神経の乱れ。医学的な対策とは」でも解説しています。

なお、体が暑さに慣れる「暑熱順化」には数日から2週間程度かかるとされており(環境省 熱中症予防情報サイト)、梅雨明け直後や急に暑くなった時期は特に不調が出やすいタイミングです。

典型的な夏バテの経過

典型的な夏バテは、次のような経過をたどることが多いとされています。

  • 暑さが本格化した時期に一致して症状が始まる
  • 涼しい環境での休養、食事、睡眠の調整で数日〜2週間程度で軽快に向かう
  • 発熱や体重減少などの「全身の異常を示すサイン」を伴わない

逆に言えば、この経過に当てはまらない場合は、「ただの夏バテ」で片付けないほうがよいと考えられます。

「夏バテだと思ったら別の病気」——鑑別すべき疾患

だるさ・食欲不振・疲労感は、多くの病気に共通する症状です。夏バテと紛らわしい代表的な病気を挙げます。

熱中症・脱水

屋外活動後や暑い室内で過ごした後のだるさ・頭痛・吐き気は、軽症の熱中症や脱水の可能性があります。日本救急医学会の熱中症診療ガイドラインでは、めまい・立ちくらみ・こむら返り・頭痛・嘔吐などが熱中症の症状として挙げられています。水分がとれない、ぐったりしている場合は早めの受診が必要です。

感染症(夏かぜ・新型コロナウイルス感染症など)

夏にも発熱を伴うウイルス感染症は流行します。だるさに発熱やのどの痛みを伴う場合は、感染症の可能性を考えます。また高齢の方では、膀胱炎・腎盂腎炎などの尿路感染症が「なんとなく元気がない」という形で現れることがあります。

貧血

だるさ、疲れやすさ、動悸、立ちくらみが続く場合、貧血が隠れていることがあります。特に月経のある女性では鉄欠乏性貧血の頻度が高く、血液検査で確認できます。

甲状腺の病気

甲状腺機能低下症では、だるさ、むくみ、寒がり、体重増加などが起こります。逆に甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、暑がり、多汗、動悸、体重減少が起こり、夏は症状がつらくなりやすい病気です。いずれも血液検査で調べることができます。

糖尿病

のどが渇く、水分をたくさん飲む、尿の量が多い、食べているのに体重が減る——こうした症状は高血糖のサインの可能性があります。夏は水分補給のつもりで糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けることで血糖が著しく上昇する、いわゆる「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」と呼ばれる状態も報告されています。

電解質の異常(低ナトリウム血症など)

大量の汗をかいた状態で水だけを大量に飲み続けると、血液中のナトリウムが薄まり、だるさ・頭痛・吐き気などが起こることがあります。水分の摂りすぎと低ナトリウム血症については、当院の関連記事でも解説しています。

心臓・腎臓・肝臓の病気

息切れ、むくみ、横になると苦しいといった症状を伴う場合は、心不全などの心臓の病気を考える必要があります。持病のある方では、夏の脱水をきっかけに腎機能が悪化することもあります。健診で肝機能や腎機能の異常を指摘されたまま放置している方も注意が必要です。

こころの不調

食欲低下や倦怠感、眠れない状態が続く場合、うつ状態などこころの不調が背景にあることもあります。気分の落ち込みや興味の低下を伴う場合は、我慢せずご相談ください。

受診の目安——このサインがあれば「ただの夏バテ」にしない

次のような場合は、一度内科の受診をおすすめします。

  • だるさ・食欲不振が2週間以上続く、または涼しくして休んでも改善しない
  • 発熱を伴う、または発熱を繰り返す
  • ダイエットをしていないのに体重が減ってきた
  • 動悸、息切れ、むくみを伴う
  • のどの渇きが強い、尿の量・回数が明らかに増えた
  • 水分や食事がほとんどとれない(この場合は早めの受診が必要です)
  • 立ちくらみや失神があった

また、高齢の方、糖尿病・心臓病・腎臓病などの持病がある方は、体調を崩したときの余力が小さいため、より早めの受診が望ましいと考えられます。

内科でできること——血液検査で多くの手がかりが得られる

「夏バテかどうか」を見分けるうえで、内科の外来では次のような検査を行うことができます。

  • 血液検査:貧血の有無、電解質(ナトリウム・カリウムなど)、肝機能・腎機能、血糖・HbA1c、甲状腺ホルモンなど
  • 尿検査:尿路感染症や脱水の程度の評価
  • 心電図:動悸や息切れを伴う場合

だるさの原因になる病気の多くは、こうした基本的な検査で手がかりが得られます。「調べて異常がなかった」という結果自体にも、安心して夏を乗り切るための価値があります。

夏バテ対策の基本

予防と回復の基本は次のとおりです。

  • 水分と塩分をこまめに補給する(のどが渇く前に。1日あたり1.2リットルが目安とされています)
  • 主食・主菜・副菜のそろった食事を心がけ、欠食を避ける
  • 冷房を我慢せず、睡眠環境を整える
  • 入浴や軽い運動で汗をかく習慣をつくり、暑さに体を慣らす(暑熱順化)

具体的な対策や経口補水液の使い方は、当院の関連記事でも詳しく解説しています。

まとめ

  • 夏バテは正式な病名ではなく、暑さに体が適応できないことで起こる一時的な不調の総称です
  • 多くは休養と生活調整で数日〜2週間程度で回復に向かいます
  • だるさ・食欲不振が長引く、発熱や体重減少を伴うなどの場合は、貧血・甲状腺の病気・糖尿病・感染症などが隠れていることがあります
  • 基本的な血液検査・尿検査・心電図で多くの手がかりが得られます。「夏バテらしくない」と感じたら、早めにご相談ください

参考文献

  • 環境省 熱中症予防情報サイト
  • 厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト
  • 日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2015

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