溶連菌感染症で咳は出る?咳が目立たないのが特徴的な理由と鑑別のポイント
結論:溶連菌感染症では咳は出にくい
溶連菌感染症(A群溶血性連鎖球菌咽頭炎)では、咳は典型的な症状ではありません。
むしろ、「咳がないのに喉がひどく痛い」というのが溶連菌を疑う重要な手がかりのひとつです。
これは診察の現場でも非常に重要なポイントで、Centor基準(溶連菌の臨床的な診断基準)でも「咳がないこと」がスコアに加点される項目になっています。
なぜ溶連菌では咳が出にくいのか
咳は主に気道(気管や気管支)の刺激で起こる反射です。
溶連菌は咽頭(のど)の粘膜に感染する細菌であり、気管支や肺に感染を起こすことは通常ありません。炎症の場所が「のどの表面」に限局するため、咳の反射が起こりにくいのです。
一方、風邪(ウイルス性上気道炎)では、鼻水が喉に流れる後鼻漏や、気道全体の炎症によって咳が出やすくなります。この違いが、溶連菌とウイルス感染の鑑別に役立ちます。
溶連菌感染症の典型的な症状
溶連菌感染症で見られる典型的な症状は以下の通りです。
- 急な喉の強い痛み(飲み込むときに特に痛い)
- 38℃以上の発熱(急に上がることが多い)
- 扁桃腺の腫れ・白苔(扁桃腺に白いブツブツがつく)
- 前頸部リンパ節の腫れ・圧痛(あごの下のリンパが腫れて痛い)
- 咳がない
- 鼻水がない(もしくは少ない)
ポイントは、「ないこと」が特徴になるという点です。咳がない、鼻水がない——この「ウイルス感染っぽくない」パターンが溶連菌を疑うきっかけになります。
Centor基準(修正McIsaac基準)
溶連菌の臨床的な診断スコアとして広く使われているのがCentor基準です。以下の項目それぞれ1点で評価します。
- 扁桃腺の腫大または滲出物(白苔)がある:+1点
- 前頸部リンパ節の圧痛がある:+1点
- 発熱(38℃以上)がある:+1点
- 咳がない:+1点
- 年齢3〜14歳:+1点 / 15〜44歳:0点 / 45歳以上:−1点
4点以上で溶連菌の可能性が高く、迅速検査を行う目安になります。「咳がない」ことが加点されるほど、咳の有無は鑑別に重要です。
咳が出ている場合に考えること
喉が痛くて咳も出ている場合、以下のような疾患の可能性が高くなります。
- 風邪(ウイルス性上気道炎):鼻水・咳・喉の痛みが揃う。最も多い原因
- インフルエンザ:高熱+咳+関節痛+倦怠感
- コロナウイルス感染症:喉の痛み+咳+倦怠感
- マイコプラズマ感染症:長引く乾いた咳が特徴
もちろん、溶連菌とウイルス感染が同時に起こることもゼロではありませんが、咳が目立つ場合はまずウイルス感染を考えるのが一般的です。
溶連菌を放置するとどうなるか
溶連菌感染症は抗生剤(ペニシリン系が第一選択)でしっかり治療する必要があります。放置した場合、以下の合併症が起こる可能性があります。
- 扁桃周囲膿瘍:扁桃腺の周囲に膿が溜まり、口が開けにくくなる
- リウマチ熱:心臓の弁に影響を及ぼす可能性がある(現在の日本では稀)
- 急性糸球体腎炎:溶連菌感染後1〜3週間で血尿やむくみが出ることがある
抗生剤を処方された日数分きちんと飲みきることが重要です。症状が良くなっても途中でやめないでください。
受診の目安
以下のような場合は溶連菌を疑って受診してください。
- 喉の痛みが強いのに、咳や鼻水があまりない
- 38℃以上の発熱がある
- 扁桃腺が腫れて白いものがついている
- 周囲に溶連菌の患者がいる(家族内感染が多い)
迅速検査は5〜10分で結果が出ます。検査で陽性であれば抗生剤による治療を開始します。
まとめ
- 溶連菌感染症では咳は典型的ではない。「咳がないこと」が診断の手がかり
- Centor基準でも「咳がない」は加点項目
- 咳+喉の痛みならウイルス感染(風邪・インフル・コロナ)を先に考える
- 「咳がないのに喉だけ痛い+高熱+扁桃腺の白苔」は溶連菌を疑う
- 抗生剤は処方日数分を飲みきることが重要