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溶連菌のマクロライド耐性について——なぜペニシリンが第一選択なのか、内科医が解説

「溶連菌に抗生物質が効かない」「マクロライドが効きにくいと聞いた」——こうした不安を耳にすることがあります。結論からお伝えすると、溶連菌の治療に使うペニシリン系は、いまもしっかり効きます。耐性が問題になっているのは、ペニシリンが使えないときに代わりに使うマクロライド系の方です。少し整理してみます。

A群溶連菌とは

のどの痛みや発熱を起こす細菌のひとつに、A群溶血性レンサ球菌(いわゆるA群溶連菌)があります。発熱・強いのどの痛み・扁桃の白い付着物などが特徴で、検査で診断します。多くは抗菌薬でよくなりますが、きちんと治療しないと、あとから別の病気(続発症)につながることがあるため、確実に菌を退治することが大切とされています。

ペニシリンには耐性がない——だから第一選択

抗菌薬の世界では「耐性」、つまり薬が効きにくくなる現象がよく問題になります。ところがA群溶連菌は、長年使われてきたにもかかわらず、ペニシリン系に対する耐性をいまだに獲得していないことが知られています。世界的にも、ペニシリンへの感受性が保たれています。

このため、日本のガイドラインでもA群溶連菌の咽頭炎の第一選択はペニシリン系(アモキシシリンなど)とされています。続発症を防ぐ目的で、決められた期間(通常10日間)きちんと飲みきることがすすめられています。よくなったからと途中でやめないことが大切です。

マクロライドは日本で耐性が多い

問題になるのはマクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)です。これはペニシリンにアレルギーがある方などに、代わりの選択肢として使われます。ところが日本では、A群溶連菌のマクロライド耐性が高い頻度で報告されています。地域や時期によって差はありますが、報告によっては半数近くに達することもあります(たとえば福岡県の調査では、2009年・2012年の検討でエリスロマイシン耐性が4〜5割程度でした)。

耐性の仕組みは主に二つあります。ひとつは、菌が薬の標的(リボソーム)を作り変えてしまうタイプ(ermという遺伝子によるもの)で、この場合は同じ系統のクリンダマイシンも効きにくくなることがあります。もうひとつは、菌が薬を細胞の外へ汲み出してしまうタイプ(mefという遺伝子によるもの)です。いずれにしても、マクロライドを選んだときに効かない可能性がある、ということになります。

なぜ「確実に退治すること」が大切か

溶連菌の治療は、のどの症状を早くよくするためだけではありません。きちんと菌を退治することで、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった、あとから起こりうる病気(続発症)を防ぐ意味があります。また、まわりの人にうつすのを減らす意味もあります。だからこそ、確実に効く薬を、決められた期間しっかり使うことが大切になります。マクロライド耐性が問題になるのは、ここで効かない薬を選んでしまうと、これらの目的が十分に果たせなくなるからです。

ペニシリンが使えないときの考え方

ペニシリンにアレルギーがある場合は、代わりの薬を考えます。アレルギーの程度によっては一部のセフェム系(セファレキシンなど)が選べることもありますし、クリンダマイシンが候補になることもあります。マクロライドを使う場合は、耐性の可能性を踏まえた判断が必要です。どの薬を選ぶかは、アレルギーの内容や地域の耐性の状況をふまえて、医師が個別に判断します。自己判断で抗菌薬を選んだり、残った薬を使い回したりしないようにしてください。

まとめ

溶連菌そのものは、ペニシリンによく反応します。耐性が問題なのはマクロライドの方で、日本では効きにくい菌が少なくありません。だからこそ、第一選択はペニシリン系で、決められた期間きちんと飲みきること。そしてペニシリンが使えないときは、耐性をふまえて慎重に薬を選ぶこと。のどの溶連菌は身近な病気ですが、続発症を防ぐためにも、最後まで治療を続けていただければと思います。

参考文献

  • JAID/JSC感染症治療ガイドライン(咽頭・扁桃炎/A群溶血性レンサ球菌)
  • 厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」
  • 福岡県におけるStreptococcus pyogenesのマクロライド耐性に関する報告(日本小児感染症学会誌)

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