院長ブログ |

クオンティフェロン(QFT)検査とは?結核の血液検査の仕組みと結果の見方を内科医が解説

クオンティフェロン(QFT)検査とは

「健診でクオンティフェロン検査を受けるよう言われた」「生物学的製剤を始める前にQFTが必要と説明された」——こうした場面で登場するのがクオンティフェロン(QuantiFERON:QFT)検査です。

QFTは、採血だけで結核菌の感染の有無を調べる血液検査で、インターフェロンγ遊離試験(IGRA:Interferon-Gamma Release Assay)の代表的な検査です。日本では従来のツベルクリン反応に代わり、結核感染診断の標準的な方法になっています。

仕組み——結核菌に反応するT細胞を捕まえる

結核菌に感染すると、体内に結核菌を記憶しているT細胞(リンパ球)ができます。このT細胞は、結核菌に特異的な抗原(ESAT-6・CFP-10など)に再び出会うとインターフェロンγ(IFN-γ)という物質を放出します。

QFT検査では、採血した血液を結核菌特異抗原と試験管内で反応させ、放出されたIFN-γの量を測定します。十分な量のIFN-γが出れば「結核菌に感染している(または過去にした)」と判定します。

QFT-Plus(最新版)の4本の採血管

現在広く使われているQFT-Plus(第4世代)では、4本の専用採血管を使います。

  • Nil(陰性コントロール):何も入れない管。ベースラインの測定
  • TB1:結核抗原(主にCD4 T細胞の反応をみる)
  • TB2:結核抗原(CD4+CD8 T細胞の反応をみる)
  • Mitogen(陽性コントロール):免疫が正常に働くか確認する管

TB1・TB2のIFN-γ値からNil値を引いた値が一定基準(0.35 IU/mL以上かつNil値の25%以上)を超えると陽性と判定します。

ツベルクリン反応との違い

項目

ツベルクリン反応

QFT(IGRA)

方法

皮内注射→48時間後に判定

1回の採血のみ

受診回数

2回(接種+判定)

1回

BCGの影響

偽陽性になる

影響を受けない

非結核性抗酸菌の影響

多くで偽陽性

ほとんど受けない

判定

判定者の主観が入る

機械測定で客観的・数値化

日本はBCG接種率が高いため、BCGの影響を受けないQFTの利点は非常に大きいといえます。「BCGを受けているのにツベルクリンが陽性」という長年の悩みを、QFTは解決しました。

T-SPOT.TBとの違い

QFTと並ぶもう一つのIGRA検査がT-SPOT.TBです。

  • QFT:ELISA法で「IFN-γの濃度」を測定
  • T-SPOT.TB:ELISpot法で「IFN-γを出す細胞の数」を測定

臨床的な性能はほぼ同等で、施設の採用状況によって使い分けられます。どちらも「結核菌に感染しているか」を調べる目的は同じです。

QFT検査が行われる主な場面

① 接触者健診

家庭・職場・学校などで結核患者と接触した方の感染確認。陽性者は潜在性結核感染症(LTBI)として治療を検討します。

② 生物学的製剤・免疫抑制療法の開始前(特に重要)

内科外来でQFTが最も多く使われるのがこの場面です。以下の治療を始める前には、結核再活性化を防ぐためQFT等の検査が必須とされています。

  • 抗TNF-α製剤(関節リウマチ・炎症性腸疾患・乾癬などの治療薬)
  • JAK阻害薬
  • IL-6/IL-17/IL-23阻害薬
  • 大量・長期のステロイド
  • 抗がん剤治療
  • 臓器移植

潜在性結核がある状態でこれらの治療を始めると、結核が再び活動を始め(再活性化)、発病するリスクが大きく上昇します。事前にQFTでスクリーニングし、陽性ならLTBI治療を行ってから免疫抑制を開始するのが標準的な流れです。

③ 医療従事者・福祉従事者の健診

看護師・医師・介護職などのベースライン把握、感染の早期発見。

④ 結核高まん延国からの帰国者・渡航者

⑤ HIV感染者・透析患者・糖尿病患者など

結核リスクが高い基礎疾患を持つ方のスクリーニング。

結果の見方

① 陽性

結核菌に感染している(過去または現在)ことを意味します。ただしQFTには重要な限界があります——「活動性結核(発病している)」と「潜在性結核(感染しているが発病していない)」を区別できません。

そのため陽性の場合は、

  • 胸部X線・胸部CTで活動性病変の有無を確認
  • 症状(2週間以上続く咳・微熱・寝汗・体重減少)の確認
  • 必要に応じて喀痰検査

これらで活動性結核が否定されれば潜在性結核感染症(LTBI)と診断します。

② 陰性

結核菌に感染している可能性は低い、と判定します。ただし以下の限界に注意が必要です。

  • 感染ごく初期(暴露から2〜3ヶ月以内)は陰性のことがある
  • HIV感染や強い免疫抑制状態では偽陰性のリスク
  • 暴露量が多い場合は2〜3ヶ月後の再検を考慮

③ 判定保留(インデターミネート)

陽性コントロール(Mitogen)の反応が弱い、または陰性コントロール(Nil)の値が高い場合に出ます。

  • 強い免疫抑制状態
  • 採血・検体の取り扱いの問題(採血量不足、温度管理、混和不足など)
  • 高齢者・低栄養

判定保留の場合は再検査を行います。QFTは採血後の採血管の混和や温度管理がやや繊細なため、技術的な要因で判定保留になることもあります。

潜在性結核感染症(LTBI)と診断されたら

QFT陽性かつ活動性結核が否定された場合、リスクに応じてLTBI治療を行います。

  • イソニアジド(INH)単剤:6〜9ヶ月
  • リファンピシン(RFP)単剤:4ヶ月(肝障害が懸念される場合など)
  • INH+RFP:3〜4ヶ月

治療中は肝機能などの定期チェックを行います。免疫抑制治療を予定している場合、LTBI治療を先に開始(または並行)してから免疫抑制を始めるのが原則です。

検査を受けるときの注意点

  • 絶食など特別な準備は不要
  • BCG接種歴は結果に影響しません
  • 採血後は通常どおり過ごしてOK、結果は数日〜1週間程度
  • 強い免疫抑制下では偽陰性・判定保留が起こりうるため、結果は症状・画像と合わせて総合判断します

よくある質問

Q. QFTが陽性でした。すぐ治療が必要ですか?

多くは潜在性結核感染症(LTBI)です。胸部画像と症状で活動性結核を否定したうえで、年齢・基礎疾患・今後の免疫抑制治療予定などのリスクを考慮して治療方針を決めます。慌てず専門的な評価を受けてください。

Q. BCGを受けているのに陽性。本当に感染ですか?

QFTはBCGの影響を受けないよう設計されています。陽性であれば結核菌感染の可能性が高いと考えます。ツベルクリン反応とは仕組みが異なります。

Q. 生物学的製剤を始めるのにQFTが必要と言われました

潜在性結核を見逃して免疫抑制治療を始めると、結核が再活性化して重症化するリスクがあります。これを防ぐための事前スクリーニングです。陽性ならLTBI治療を行ってから治療開始となります。

Q. 結果が「判定保留」でした

免疫状態や検体の問題で起こることがあります。再検査、または別の検査(T-SPOT.TBやツベルクリン反応)での評価を行います。

Q. QFT陰性なら結核は完全に否定できますか?

感染初期や強い免疫抑制下では偽陰性がありえます。症状・画像・暴露歴と合わせて総合的に判断するため、陰性=完全な除外ではありません。

受診の目安

  • 2週間以上続く咳・微熱・寝汗・体重減少(活動性結核を疑う症状)
  • 結核患者と濃厚接触した
  • 生物学的製剤・免疫抑制薬・JAK阻害薬の導入予定がある
  • 医療職・介護職などで定期スクリーニングが必要
  • 健診や他院でQFT陽性・判定保留と言われた

まとめ

  • クオンティフェロン(QFT)は、採血で結核菌感染を調べるIGRA検査
  • 結核菌特異抗原に対するT細胞のIFN-γ産生を測定する
  • BCGの影響を受けず、1回の採血で済むのが大きな利点
  • 「感染の有無」はわかるが、活動性結核と潜在性結核は区別できない——画像・症状で総合判断
  • 主な用途は接触者健診・生物学的製剤/免疫抑制療法の導入前スクリーニング・医療従事者健診など
  • 陽性で活動性が否定されればLTBI治療(イソニアジド6〜9ヶ月など)
  • 判定保留・偽陰性もあるため、結果は必ず臨床と合わせて解釈する

「採血1本で結核がわかる」便利な検査ですが、結果の解釈には専門的な判断が必要です。健診で指摘された方、生物学的製剤の導入を控えている方、結核の接触歴がある方は、お気軽にご相談ください。

ページ上部へ戻る