院長ブログ |

カルテに処方を自動入力する——「処方だけ叩くAPI」がなかったので画面操作で越えた話

診療をしていると、同じような処方を一日に何度も入力します。よく出す薬の組み合わせ、決まった用法。手で打つのは正確ですが、回数が多いと地味に時間を取られます。これを自動化できないか、というのが今回の話です。何に詰まって、どう越えたかを具体的に書きます。

「処方だけを登録する入口」がなかった

最初に考えたのは、プログラムから電子カルテに処方データを直接渡す方法です。いわゆるAPIで、処方の内容だけを送って登録できれば、いちばんきれいです。

ところが調べてみると、処方だけを単独で登録する入口が見当たりませんでした。処方の登録が、カルテ全体を保存する大きな処理の一部に組み込まれていて、そこだけを切り出して叩けない作りになっていたのです。理想の入り口は、塞がっていました。

直叩きを諦めて、画面を操作する方式に切り替えた

そこで方針を変えました。データを裏側から送り込むのをやめて、人が画面でやる操作を、プログラムにそのまま再現させることにしました。

医師が処方を入れるとき、画面では「薬を検索して選ぶ」「用法・日数を指定する」「追加ボタンを押す」という順に操作します。これをプログラム側から、同じ順番でなぞります。画面の中の目的の要素(入力欄やボタン)を見つけて、そこにクリックや入力の操作を発火させる。人の手の動きを、コードで置き換えるイメージです。

裏口(API)が閉まっていても、表口(画面)からなら入れることがある。回り道ですが、これで動きました。

よく使う薬の用法を、あらかじめ持っておく

もう一手間加えています。よく使う薬について、薬の名前と標準的な用法の対応表をあらかじめ用意しておきました。薬を選ぶと、その薬に紐づいた用法が自動で入る。毎回ゼロから用法を打ち直す手間が消えます。

ここで大事なのは、この対応表の中身は答えが決まっている、ということです。「この薬なら、ふだんはこの用法」というのは、AIに考えさせる必要のない、決まった情報です。だから対応表(アルゴリズム)で処理しています。AIを挟むと、かえって出力がブレて、確認の手間が増えます。やることが決まっている操作は、決まった手順で確実に。これは他のツールでも一貫してとっている考え方です。

正直に言うと、画面操作はもろい

この方式には弱点があります。画面の作りが変わると、目的の要素が見つからなくなって、操作が止まります。本当はAPIで叩けるのが理想で、画面操作はあくまで回り道です。そこは承知のうえで使っています。

そしてもう一つ。処方は患者さんの安全に直結します。だから完全自動にはしていません。プログラムが入れるのはあくまで下書きで、最後に内容を確認して確定するのは医師です。自動で入れたからこそ、確定の前に必ず目を通す。この一手は省きません。

まとめ

処方の自動入力は、「処方だけを叩くきれいな入口」がなかったところから始まりました。直叩きを諦めて画面操作で越え、用法は決まった対応表で自動化し、最後の確定は医師が行う。理想どおりの作りではありませんが、現場の手数は確実に減りました。入り口が塞がっていても、別の層から入れることがある——これは医療に限らず、自動化でよく出会う場面だと思います。

※この連載では、開業2年目の内科クリニックでの、AIを使った業務改善の実際を書いています。ツールはClaude Codeで内製し、患者データの扱いは三省二ガイドライン・ZDR準拠の設計を基本にしています。

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