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溶連菌感染症のあとに起こる心内膜炎とは——リウマチ熱と心臓の関係を内科医が解説

「溶連菌の検査で陽性だったあと、心臓に炎症が起こることがあると聞いた」——のどの感染のあとに心臓の話が出てくると、不安になると思います。ここでいう「溶連菌感染症後の心内膜炎」は、正確には、溶連菌ののどの感染をきっかけに起こる「リウマチ熱」という反応によって、心臓に炎症が生じるもののことです。少し整理してお伝えします。

「溶連菌感染症後の心内膜炎」=リウマチ熱による心臓の炎症

A群溶連菌がのど(咽頭・扁桃)に感染したあと、まれに「リウマチ熱」という病気が起こることがあります。これは、溶連菌そのものが心臓に感染するのではなく、溶連菌に対してつくられた免疫(体を守る反応)が、間違って自分の心臓などを攻撃してしまうことで起こる、免疫の反応です。この心臓の炎症の中に、心臓の内側(心内膜)や弁の炎症が含まれます。

リウマチ熱とは

リウマチ熱は、溶連菌ののどの感染からおよそ2〜4週間後に起こります。主な症状は、発熱、関節の痛みや腫れ(動く関節炎)、心臓の炎症(心炎)、皮膚の症状、そして手足が勝手に動く神経の症状(舞踏病)などです。とくに心臓の炎症は、リウマチ熱の中でもっとも重要な合併症です。

心臓のどこが侵されるのか

リウマチ熱の心臓の炎症は、心臓の内側の膜(心内膜、とくに弁)、心臓の筋肉(心筋)、心臓を包む膜(心膜)のいずれにも起こりえます。中でも問題になるのが弁の炎症です。心臓の弁、とくに僧帽弁や大動脈弁に炎症が及ぶと、弁がうまく閉じたり開いたりできなくなり、時間をかけて弁膜症(リウマチ性心疾患)へと進むことがあります。これが、溶連菌ののどの感染を「しっかり治すこと」が大切だといわれる、いちばんの理由です。

紛らわしい「感染性心内膜炎」とは別のものです

名前が似ているため混同されやすいのですが、「感染性心内膜炎」は別の病気です。感染性心内膜炎は、細菌が血液の流れに乗って心臓の弁に直接くっつき、そこで増えてしまう「感染そのもの」で、原因菌も別のもの(口の中の常在菌などが代表的)です。一方、リウマチ熱の心内膜炎は、菌が弁に感染しているのではなく、免疫の反応による炎症、という違いがあります。

ただし、両者はつながることもあります。リウマチ熱の後遺症として弁膜症を持っている方は、傷んだ弁に感染性心内膜炎を起こしやすくなります。そのため、弁膜症のある方は、将来にわたって定期的な管理や、歯の治療などの際の注意が必要になることがあります。

いちばんの対策は「溶連菌をしっかり治すこと」

リウマチ熱を防ぐいちばんの方法は、溶連菌ののどの感染を、抗菌薬でしっかり治しきることです。A群溶連菌の咽頭炎は、ペニシリン系の抗菌薬を、決められた期間(通常10日間)飲みきることがすすめられています。よくなったからと途中でやめず、最後まで飲みきることが、リウマチ熱や、その心臓の合併症を防ぐことにつながります。

いまはまれですが、ゼロではありません

日本では、抗菌薬による治療が広く行われるようになったことで、リウマチ熱は現在ではまれな病気になりました。とはいえ、まったくなくなったわけではありません。溶連菌の咽頭炎をきちんと治療することの大切さは、いまも変わりません。

こんなときは受診を

  • のどの溶連菌感染(あるいはその疑い)のあと、数週間して、発熱や関節の痛みが出てきた
  • 動悸、息切れ、疲れやすさなど、心臓に関わる症状が出てきた
  • 溶連菌の抗菌薬を、途中でやめてしまった

まとめ

「溶連菌感染症後の心内膜炎」は、溶連菌ののどの感染をきっかけに起こるリウマチ熱による心臓の炎症で、弁が侵されると弁膜症につながることがあります。菌が弁に直接感染する「感染性心内膜炎」とは仕組みが違います。防ぐいちばんの方法は、溶連菌の咽頭炎を抗菌薬でしっかり治しきること。のどの感染のあとに気になる症状が出たときは、自己判断せずご相談ください。

参考文献

  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「リウマチ熱」
  • 日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」
  • 小児科・循環器領域の標準的なテキスト

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