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院長ブログ
日々の診療室から(401件)
2026年2月最新 インフルエンザBは猛威を振るっているのか? ― 2026年1月以降のデータに限定して検証する ―
導入:評価軸をまず整理する 2026年2月時点で 「インフルエンザBが猛威を振るっているのか?」 という問いに答えるためには、評価に用いる期間の切り分けが不可欠です。 今シーズン(2025–2026)は、 2025年11月から12月にかけてA型が大きく流行 この時期の患者数・検体数が非常に多い という特徴があります。 そのため、シーズン全体(2025年秋〜2026年冬)を母数に含めて型別割合を評価
ゾフルーザは高い -タミフル(先発・後発)と薬価で比べるとどうなるのか-
インフルエンザ治療薬として広く知られている「ゾフルーザ」。 「1回飲めば終わり」という分かりやすさから、希望される方も多い薬です。 ただ、診療する側から見ると、どうしても伝えておきたい点があります。 ゾフルーザは、効果の問題ではなく、薬価そのものが高い薬です。 この点は、タミフルと比べると非常に分かりやすくなります。 まずは薬価の事実から 薬価(執筆時点の例) ・ゾフルーザ錠 20mg 1錠:2
ダイエットで「インスリン(IRI)」を測る意味とは ──体重やHbA1cだけでは分からない“痩せにくさ”の正体
ダイエット外来や健診相談で、 「食事量は減らしているのに体重が落ちない」 という声をよく耳にします。 こうしたケースでは、血糖値やHbA1cだけでは評価できない代謝の偏りが背景にあることがあります。 その評価に役立つ指標の一つが、 空腹時インスリン(IRI) です。 インスリン(IRI)とは何か インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、主に以下の作用を担います。 血糖を下げる 糖を脂肪と
NHK「ロクいち!福岡」に出演しました(2026年2月6日放送)
本日 2026年2月6日、 ロクいち!福岡 にて、 黄砂の影響による体調変化や、健康面で注意すべき点についてコメントしました。 今回の放送では、 黄砂が飛来した際に起こりやすい症状や、日常生活での基本的な注意点について取り上げられています。 黄砂は、季節性の現象として毎年みられるものですが、 体調への影響は人によって差があり、 特に呼吸器症状や鼻・目・皮膚の不調として現れることがあります。 今後も
ゾフルーザとタミフル 薬理作用の違いを「ウイルス増殖のどこを止める薬か」で深掘りする
インフルエンザ治療薬としてよく知られている ゾフルーザとタミフル。 この2剤は 同じインフルエンザ治療薬でも、薬理学的にはまったく別の場所に作用する薬です。 優劣で語る薬ではなく、 「ウイルス増殖のどこを抑える薬なのか」を理解すると、 両者の違いはかなりクリアになります。 まず押さえておきたい インフルエンザウイルス増殖の流れ インフルエンザウイルスは、体内で次のような流れで増えていきます。 ウイ
症状が軽いうちに対策すると、なぜ花粉症シーズンを通して楽になるのか ──「炎症の立ち上がり」を抑えるという考え方
花粉症は、「花粉が飛び始めてから症状が出る病気」と思われがちですが、 医学的には 花粉曝露が続くことで炎症が蓄積していく慢性炎症性疾患 と位置づけられています。 そのため、症状が強く出てから治療を始めるのと、 症状が軽いうちから対策を行うのとでは、シーズン全体の経過が大きく異なります。 この考え方は、日本のアレルギー性鼻炎診療ガイドラインでも明確に示されています。 花粉症は「一発で起きる病気」では
なぜ花粉症治療は「ステロイド点鼻薬」から始まるのか ―― ガイドラインに基づく整理
インターネットやSNSでは 「ステロイドは最後の手段」 「長く使うと危ない」 といったイメージが根強く残っています。 しかし、日本の花粉症診療においては、 中等症以上のアレルギー性鼻炎に対して ステロイド点鼻薬は初期治療・第一選択薬として位置づけられています。 なぜそのような扱いになっているのか。 ここでは、日本の診療ガイドラインを軸に、医学的な理由を整理します。 花粉症は「鼻の中の炎症」が本体
【続報】インフルエンザBとゾフルーザ ― 日本小児科学会2025/2026ガイドラインの“書きぶり”をもう一段深掘り ―
昨日の記事では、 「インフルエンザB型=ゾフルーザ一択」という風潮について、 医学的には断定できない、という整理を行いました。 この記事はその続報・補足です。 日本小児科学会の 2025/2026シーズン インフルエンザ診療指針 を改めて読み直し、 なぜ“Bにはゾフルーザ”という理解が広がったのか を、ガイドラインの記載内容に即して整理します。 小児科学会ガイドラインには「ゾフルーザ推奨」と書いて
【2026年2月1日 超速報】 福岡で花粉症が始まりました|全国の飛散状況と今後の見通し
すでに「花粉症シーズン前夜」に入っています 2026年2月1日現在、福岡ではスギ花粉の本格飛散前ではあるものの、飛散開始期に入ったと考えられる状況です。 当院でも、くしゃみ・鼻水・目のかゆみといった症状で受診される方が、少しずつ増え始めています。 これは珍しい現象ではなく、毎年2月上旬に見られる典型的な初期パターンです。 福岡の花粉飛散状況(2月1日時点) 現在の位置づけ スギ花粉:「飛散開始〜少
インフルエンザBにはゾフルーザが「最もよい薬」なのか?
インフルエンザB型の患者さんが増えてくると、 「B型にはゾフルーザが一番いいらしい」 「タミフルはもうダメなの?」 といった質問を受けることがあります。 結論から言うと、 「インフルエンザBにはゾフルーザが最もよい」と断定できる根拠はありません。 ただし、近年ゾフルーザが選ばれやすくなっている理由は、医学的背景があります。 この記事では、その点を整理します。 抗インフルエンザ薬の基本的な位置づけ
鉄欠乏で起きうる症状を超網羅的に解説 ― 鉄って、想像以上に大事です ―
「鉄欠乏=貧血」というイメージは一般的ですが、実際には貧血になる前の段階から、全身にさまざまな症状が出現することが知られています。 これは、鉄が「赤血球を作る材料」であるだけでなく、全身の細胞機能を支える必須元素だからです。 本記事では、鉄欠乏によって起こりうる症状を、臓器・システム別にできる限り網羅的に解説します。 鉄の基本的な役割 鉄は体内で以下のような役割を担っています。 ヘモグロビン・ミオ
睡眠時無呼吸症候群にCPAPが有効とされる理由を詳しく解説します
結論 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対するCPAP療法は、無呼吸・低呼吸を減らし、日中の眠気や睡眠の質の改善が期待できる治療法として位置づけられています。 また、血圧や心血管リスクに関しても一定の改善が報告されていますが、その効果は使用時間などの条件に依存することが知られています。 CPAPはSAS治療の中心的選択肢の一つであり、適切な適応評価と継続使用が重要です。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と
魚の刺身で発症する可能性のある食中毒・感染性胃腸炎 ― 原因微生物・寄生虫を網羅的に整理 ―
刺身は日本の食文化に深く根付いた食品ですが、加熱を行わないという特性上、特定の細菌・ウイルス・寄生虫による感染症や食中毒の原因となることがあります。 本記事では、魚介類の刺身摂取後に発症しうる主な原因疾患を、病原体別に網羅的に解説します。 1. 細菌性食中毒 腸炎ビブリオ 原因:海水中に常在する細菌 特徴:夏季に多く、魚介類の常温放置で増殖 潜伏期間:数時間〜24時間 症状:激しい下痢、腹痛、嘔吐
心電図異常「QTc延長」とは ― 健診で指摘されたときに知っておくべき医学的意味 ―
健康診断や職場健診の心電図で 「QT延長」「QTc延長」と指摘され、戸惑った経験は少なくありません。 本記事では、QTc延長とは何を意味するのか、どこまでが経過観察で、どのような場合に精査が必要になるのかを、医学的根拠に基づいて整理します。 QTc延長とは何か 心電図におけるQT間隔とは、心臓の心室が「興奮してから元に戻るまで」の時間を示す指標です。 具体的には、Q波の開始からT波の終わりまでの時
【医師が論理で整理】 エクソソームは「がん転移を促進するから危険」なのか ― 生理学と基礎研究を混同した議論の構造的誤り ―
2026年1月、X(旧Twitter)上で 「エクソソームはがん転移に関与している。美容目的で使うのは危険」 という主張が拡散されました。 一見すると、研究者の視点からの警鐘のように見えます。 しかし、医学的に読み解くと、この主張には重大な論理の飛躍があります。 本記事では、 間葉系幹細胞培養上清液(MSC-CM)に含まれる成分(agent)とその生理学的役割を整理したうえで、 この議論がどこで破
末端冷え性とは何か ―「冷え」を症状として、医学的にどう捉えるか―
末端冷え性とは、手指・足趾などの末梢部位に持続的または反復的な冷感を自覚する状態を指します。 日本ではとくに女性に多いとされますが、これは体感の問題ではなく、末梢循環・自律神経・内分泌・血液性状など複数の生理学的要因が関与する症候群的概念です。 重要なのは、 末端冷え性は「体質」という一言で片付けられるものではなく、 病態を分解すると、明確に医学的説明が可能であるという点です。 病態の中核:末梢循
アレルギー性鼻炎を徹底解説 原因・症状・検査・治療を最新エビデンスで整理する
アレルギー性鼻炎は、日本人の約2人に1人が何らかの形で経験するとされる、非常に頻度の高い疾患です。 一方で、「花粉症と同じ」「くしゃみが出るだけ」と軽く扱われがちですが、実際には生活の質(QOL)や学業・仕事の生産性に大きく影響します。 本記事では、日本の診療ガイドラインと高エビデンス文献を基に、 アレルギー性鼻炎の仕組みから診断、治療、最新の考え方までを体系的に解説します。 アレルギー性鼻炎とは
HPV(ヒトパピローマウイルス)とは何か ― 最新エビデンスに基づく徹底解説 ―
HPV(Human Papillomavirus:ヒトパピローマウイルス)は、非常に一般的なウイルス感染症であり、性感染症としても知られています。一方で、「がんとの関連」「ワクチンの安全性」などについて、正確でない情報が混在しやすいテーマでもあります。 本記事では、日本のガイドラインを最優先に、事実とエビデンスのみに基づいてHPVを体系的に解説します。 HPVの基本構造と種類 HPVはDNAウイル
逆流性食道炎とは何か
逆流性食道炎は、胃内容物(主に胃酸)が食道内へ逆流することで、症状や粘膜障害を生じる状態を指します。 日本消化器病学会では、内視鏡でびらんを認めるものだけでなく、**症状を主体とする病態も含めて「GERD(胃食道逆流症)」**として捉えられています。 GERDは以下の2つに大別されます。 逆流性食道炎(びらん性GERD) 内視鏡検査で食道粘膜にびらんや炎症を認めるもの 非びらん性胃食道逆流症(N
ペットボトル症候群とは? ― 清涼飲料水の飲み過ぎで起こる高血糖の正体を内科医が解説 ―
ペットボトル症候群とは何か ペットボトル症候群とは、糖分を多く含む清涼飲料水を短期間に大量摂取することで、高血糖状態に陥る病態を指す俗称です。 正式な病名ではありませんが、医学的には 清涼飲料水ケトーシス(soft drink ketosis) と呼ばれることがあります。 特に問題となるのは以下の飲料です。 炭酸飲料 スポーツドリンク 加糖ジュース エナジードリンク 甘味入りコーヒー飲料 これ
多発性骨髄腫とは何か ― 血液検査の異常から見つかることがある病気を、正確に理解するために ―
健康診断や血液検査の結果をきっかけに 「多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)」という聞き慣れない病名を知り、不安になって検索してこのページにたどり着いた方も多いと思います。 この病気は、正しく理解すれば、必要以上に恐れるものではありません。 一方で、誤解や断片的な情報によって、過剰に心配してしまう人が多い病気でもあります。 この記事では、 多発性骨髄腫について そもそも何の病気なのか なぜ血液検
(2026年1月)全国的に感染性胃腸炎患者数が増えている理由
2026年1月に入り、全国的に感染性胃腸炎の患者数が増加しています。これは毎年冬にみられる典型的な流行パターンと一致しており、特に小児から成人、高齢者まで幅広い年代で受診が増えています。 以下、背景と臨床的に重要なポイントを整理します。 なぜ1月に増えるのか 感染性胃腸炎は、冬季に流行しやすいウイルス性胃腸炎が主因です。理由は明確です。 低温・低湿度環境でウイルスが安定する 室内での集団生活が増え
インフルエンザA型とB型の違いを、あえて症状だけで深掘りする
インフルエンザには主に A型 と B型 があります。 本記事では ・ウイルス学的な違い ・流行時期 といった話は最低限にとどめ、 症状の違いだけ を、医学論文に基づいて整理します。 まず結論:症状は「傾向」が違うだけで、重症度の上下ではない 日本の臨床データ・海外の大規模研究を総合すると、以下が現在の共通認識です。 A型とB型で「出る症状の種類」はほぼ同じ ただし 症状の出方・強調される部位に傾向
前胸部キャッチ症候群(Precordial Catch Syndrome)総説 ― 若年者に多い、危険ではないが強烈な胸痛 ―
はじめに 「突然、胸に針で刺されたような痛みが出た」 「息を吸うと激痛が走るが、数分で自然に消える」 このような訴えで受診する若年者は少なくありません。 心電図・胸部X線・採血などの検査で異常が見つからない場合、その代表的な原因の一つが**前胸部キャッチ症候群(Precordial Catch Syndrome, PCS)**です。 本症は強い痛みを伴うものの、生命予後に影響しない良性