BLOG
院長ブログ
日々の診療室から(340件)
デパスは本当に危険な薬なのか? ―依存性問題と臨床的役割を整理する―
「デパスは危ない薬らしい」 「依存になるから絶対にやめた方がいい」 このような情報を目にして、不安になったことがある方もいるかもしれません。 しかし医療は、善か悪かの二元論では語れません。 重要なのは「薬そのものが悪かどうか」ではなく、どのような状況で、どのように使われているかです。 今回は、デパス(一般名:エチゾラム)について、薬理学・ガイドライン・臨床現場の実態を整理します。 デパスとは何か
花粉症市販薬を徹底比較①【完全版】 アレグラFX・クラリチンEX・ストナリニZはどう違うのか ― 成分構造・眠気・鼻閉への効果まで医学的に整理する ―
花粉症シーズンになると、まず検討されるのが市販薬です。 その中心にあるのが第二世代抗ヒスタミン薬です。 現在、ドラッグストアで主力となっている代表製品は次の3つです。 アレグラFX クラリチンEX ストナリニZ 結論から言うと、 「どれが一番強いか」ではなく、 症状タイプと眠気リスクで選ぶ薬が変わります。 その理由を順に説明します。 1. まず病態を整理する 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)はIg
花粉症市販薬を徹底比較②【完全版】 フルナーゼ点鼻薬とナザールαARは本当に有効か ― 炎症カスケードから理解する点鼻ステロイドの位置づけ ―
第1回では第二世代抗ヒスタミン薬を整理しました。 しかし日本の鼻アレルギー診療ガイドラインでは、 中等症以上の第一選択は「点鼻ステロイド」です。 市販で購入できる代表製品は次の2つです。 フルナーゼ点鼻薬〈季節性アレルギー専用〉 ナザールαAR0.1% いずれも有効成分は フルチカゾンプロピオン酸エステルです。 1. 抗ヒスタミンと何が違うのか? まず構造的な違いを明確にします。 ■ 抗ヒスタミン
花粉症市販薬を徹底比較③【完全版】 鼻づまりに強い市販薬はどれか ― ナザールスプレーとプソイドエフェドリンの功罪を整理する ―
第1回・第2回で整理した通り、 抗ヒスタミン薬はヒスタミン経路のみ 点鼻ステロイドは炎症全体 に作用します。 しかし、 「今この瞬間の鼻づまりをどうにかしたい」 というニーズに使われるのが血管収縮系薬剤です。 代表的製品は次の通りです。 ■ 局所血管収縮薬 ナザールスプレー 主成分:ナファゾリン塩酸塩 ■ 内服血管収縮成分を含む製品 コンタック鼻炎Z (プソイドエフェドリン含有) 1. 鼻づまりの
花粉症市販薬を徹底比較④【完全版】 眠くならない市販薬はどれか ― 「眠気」と「集中力低下」を薬理学で整理し、具体的な選び方を提示する ―
花粉症の市販薬を選ぶとき、毎年必ず問題になるのが「眠気」です。 ただし、眠気は単に「眠くなる/ならない」だけではありません。 抗ヒスタミン薬の中枢移行によって起こり得るのは主に2つです。 眠気(主観症状) インペアード・パフォーマンス(集中力・判断力・作業効率の低下) 本人が眠気を強く自覚しなくても、後者が出ることがあります。 この視点が、市販薬選びでは重要です。 1. 眠気はなぜ起こるのか:中枢
花粉症市販薬を徹底比較⑤【完全版】 総合鼻炎薬という名の“配合カプセル”を解体する ― パブロン鼻炎カプセルSα・コンタック鼻炎Zの成分構造を読む ―
ここまでで整理したように、 ・抗ヒスタミン単剤 ・点鼻ステロイド ・血管収縮薬 は、それぞれ作用機序が明確です。 一方、市販棚で目立つのが 「総合鼻炎薬」「カプセルタイプ」です。 代表例: パブロン鼻炎カプセルSα コンタック鼻炎Z 一見「強そう」に見えますが、 重要なのは“何が入っているか”です。 1. 配合剤の基本構造 多くの総合鼻炎薬は、以下のような構成です。 成分群 役割 抗ヒスタミン く
花粉症市販薬を徹底比較⑥【完全版】 OTCで治らない花粉症 ― どこからが医療介入か。市販薬の限界を“重症度と作用機序”で整理する ―
シリーズ最終回は、結論を明確にします。 市販薬(OTC)は、成分そのものは医療用と共通のものも多く、軽症〜中等症の一部では合理的に使えます。 一方で、花粉症は「症状の強さ」「鼻閉の比率」「合併症(喘息・副鼻腔炎など)」によって、OTCだけでは管理しにくい層が一定数存在します。 本稿では、 「どこからが医療機関での評価・治療が検討されるか」 を、推測ではなく、ガイドラインの枠組みと薬理学で整理します
痛風発作に対するコルヒチンの効果と用量 ― 病態から承認用量・低用量レジメンまで整理する
痛風発作は「尿酸が高いこと」そのものではなく、関節内に沈着した尿酸ナトリウム(MSU)結晶に対する急性炎症反応です。 コルヒチンは鎮痛薬ではなく、この炎症カスケードを抑制する薬剤です。 本記事では、 痛風発作の分子レベルの病態 コルヒチンの作用機序 臨床的位置づけ 日本の承認用量 近年の低用量レジメン を体系的に整理します。 1.痛風発作の本態:IL-1βと好中球炎症 ① MSU結晶の沈着 高尿酸
授乳中の内服は何に注意したらいいのか ―「飲めない」ではなく「どう判断するか」を整理する―
はじめに 授乳中の方からよく聞かれる質問のひとつに 「授乳中は薬を飲んではいけないのでしょうか?」 というものがあります。 結論から言えば、授乳中であっても内服が検討される薬は存在します。 一方で、すべての薬が無条件に使用できるわけではなく、医師は一定の判断軸に基づいて可否を考えています。 この記事では、 授乳中の内服を判断する際に、医療者が何を見ているのか という点を、一般の方にも分かるよう総説
インフルエンザ後の長引く咳の正体 病態生理を中心に、エビデンスベースで整理します
この記事で扱う「長引く咳」の範囲 咳は持続期間で分類すると、一般に以下の枠組みで整理されます。日本呼吸器学会の咳嗽ガイドラインでも、この分類に沿って原因疾患を絞り込む考え方が示されています。 急性咳嗽:3週間未満 遷延性咳嗽:3〜8週間 慢性咳嗽:8週間以上 インフルエンザ罹患後に「熱は下がったのに咳だけ続く」という相談は、臨床的には遷延性咳嗽(3〜8週間)に該当することが多く、病態としては感染後
2026年2月最新 インフルエンザBは猛威を振るっているのか? ― 2026年1月以降のデータに限定して検証する ―
導入:評価軸をまず整理する 2026年2月時点で 「インフルエンザBが猛威を振るっているのか?」 という問いに答えるためには、評価に用いる期間の切り分けが不可欠です。 今シーズン(2025–2026)は、 2025年11月から12月にかけてA型が大きく流行 この時期の患者数・検体数が非常に多い という特徴があります。 そのため、シーズン全体(2025年秋〜2026年冬)を母数に含めて型別割合を評価
eGFRカーブとは何か 腎機能低下を「点」ではなく「流れ」で捉える考え方
eGFRは「1回の数値」では意味が薄い eGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓の働きを数値化した指標です。 健康診断や外来で最も頻繁に目にする腎機能指標ですが、 eGFR 58 → 大丈夫? eGFR 52 → もうCKD? eGFR 45 → すぐ透析? と、単発の数値だけで不安になる方が非常に多いのが実情です。 しかし、腎臓病の本質は 「今いくつか」ではなく「どんなスピードで下がっているか」
ゾフルーザは高い -タミフル(先発・後発)と薬価で比べるとどうなるのか-
インフルエンザ治療薬として広く知られている「ゾフルーザ」。 「1回飲めば終わり」という分かりやすさから、希望される方も多い薬です。 ただ、診療する側から見ると、どうしても伝えておきたい点があります。 ゾフルーザは、効果の問題ではなく、薬価そのものが高い薬です。 この点は、タミフルと比べると非常に分かりやすくなります。 まずは薬価の事実から 薬価(執筆時点の例) ・ゾフルーザ錠 20mg 1錠:2
ダイエットで「インスリン(IRI)」を測る意味とは ──体重やHbA1cだけでは分からない“痩せにくさ”の正体
ダイエット外来や健診相談で、 「食事量は減らしているのに体重が落ちない」 という声をよく耳にします。 こうしたケースでは、血糖値やHbA1cだけでは評価できない代謝の偏りが背景にあることがあります。 その評価に役立つ指標の一つが、 空腹時インスリン(IRI) です。 インスリン(IRI)とは何か インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、主に以下の作用を担います。 血糖を下げる 糖を脂肪と
ゾフルーザとタミフル 薬理作用の違いを「ウイルス増殖のどこを止める薬か」で深掘りする
インフルエンザ治療薬としてよく知られている ゾフルーザとタミフル。 この2剤は 同じインフルエンザ治療薬でも、薬理学的にはまったく別の場所に作用する薬です。 優劣で語る薬ではなく、 「ウイルス増殖のどこを抑える薬なのか」を理解すると、 両者の違いはかなりクリアになります。 まず押さえておきたい インフルエンザウイルス増殖の流れ インフルエンザウイルスは、体内で次のような流れで増えていきます。 ウイ
NHK「ロクいち!福岡」に出演しました(2026年2月6日放送)
本日 2026年2月6日、 ロクいち!福岡 にて、 黄砂の影響による体調変化や、健康面で注意すべき点についてコメントしました。 今回の放送では、 黄砂が飛来した際に起こりやすい症状や、日常生活での基本的な注意点について取り上げられています。 黄砂は、季節性の現象として毎年みられるものですが、 体調への影響は人によって差があり、 特に呼吸器症状や鼻・目・皮膚の不調として現れることがあります。 今後も
症状が軽いうちに対策すると、なぜ花粉症シーズンを通して楽になるのか ──「炎症の立ち上がり」を抑えるという考え方
花粉症は、「花粉が飛び始めてから症状が出る病気」と思われがちですが、 医学的には 花粉曝露が続くことで炎症が蓄積していく慢性炎症性疾患 と位置づけられています。 そのため、症状が強く出てから治療を始めるのと、 症状が軽いうちから対策を行うのとでは、シーズン全体の経過が大きく異なります。 この考え方は、日本のアレルギー性鼻炎診療ガイドラインでも明確に示されています。 花粉症は「一発で起きる病気」では
なぜ花粉症治療は「ステロイド点鼻薬」から始まるのか ―― ガイドラインに基づく整理
インターネットやSNSでは 「ステロイドは最後の手段」 「長く使うと危ない」 といったイメージが根強く残っています。 しかし、日本の花粉症診療においては、 中等症以上のアレルギー性鼻炎に対して ステロイド点鼻薬は初期治療・第一選択薬として位置づけられています。 なぜそのような扱いになっているのか。 ここでは、日本の診療ガイドラインを軸に、医学的な理由を整理します。 花粉症は「鼻の中の炎症」が本体
【続報】インフルエンザBとゾフルーザ ― 日本小児科学会2025/2026ガイドラインの“書きぶり”をもう一段深掘り ―
昨日の記事では、 「インフルエンザB型=ゾフルーザ一択」という風潮について、 医学的には断定できない、という整理を行いました。 この記事はその続報・補足です。 日本小児科学会の 2025/2026シーズン インフルエンザ診療指針 を改めて読み直し、 なぜ“Bにはゾフルーザ”という理解が広がったのか を、ガイドラインの記載内容に即して整理します。 小児科学会ガイドラインには「ゾフルーザ推奨」と書いて
鉄欠乏で起きうる症状を超網羅的に解説 ― 鉄って、想像以上に大事です ―
「鉄欠乏=貧血」というイメージは一般的ですが、実際には貧血になる前の段階から、全身にさまざまな症状が出現することが知られています。 これは、鉄が「赤血球を作る材料」であるだけでなく、全身の細胞機能を支える必須元素だからです。 本記事では、鉄欠乏によって起こりうる症状を、臓器・システム別にできる限り網羅的に解説します。 鉄の基本的な役割 鉄は体内で以下のような役割を担っています。 ヘモグロビン・ミオ
【2026年2月1日 超速報】 福岡で花粉症が始まりました|全国の飛散状況と今後の見通し
すでに「花粉症シーズン前夜」に入っています 2026年2月1日現在、福岡ではスギ花粉の本格飛散前ではあるものの、飛散開始期に入ったと考えられる状況です。 当院でも、くしゃみ・鼻水・目のかゆみといった症状で受診される方が、少しずつ増え始めています。 これは珍しい現象ではなく、毎年2月上旬に見られる典型的な初期パターンです。 福岡の花粉飛散状況(2月1日時点) 現在の位置づけ スギ花粉:「飛散開始〜少
インフルエンザBにはゾフルーザが「最もよい薬」なのか?
インフルエンザB型の患者さんが増えてくると、 「B型にはゾフルーザが一番いいらしい」 「タミフルはもうダメなの?」 といった質問を受けることがあります。 結論から言うと、 「インフルエンザBにはゾフルーザが最もよい」と断定できる根拠はありません。 ただし、近年ゾフルーザが選ばれやすくなっている理由は、医学的背景があります。 この記事では、その点を整理します。 抗インフルエンザ薬の基本的な位置づけ
睡眠時無呼吸症候群にCPAPが有効とされる理由を詳しく解説します
結論 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対するCPAP療法は、無呼吸・低呼吸を減らし、日中の眠気や睡眠の質の改善が期待できる治療法として位置づけられています。 また、血圧や心血管リスクに関しても一定の改善が報告されていますが、その効果は使用時間などの条件に依存することが知られています。 CPAPはSAS治療の中心的選択肢の一つであり、適切な適応評価と継続使用が重要です。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と
魚の刺身で発症する可能性のある食中毒・感染性胃腸炎 ― 原因微生物・寄生虫を網羅的に整理 ―
刺身は日本の食文化に深く根付いた食品ですが、加熱を行わないという特性上、特定の細菌・ウイルス・寄生虫による感染症や食中毒の原因となることがあります。 本記事では、魚介類の刺身摂取後に発症しうる主な原因疾患を、病原体別に網羅的に解説します。 1. 細菌性食中毒 腸炎ビブリオ 原因:海水中に常在する細菌 特徴:夏季に多く、魚介類の常温放置で増殖 潜伏期間:数時間〜24時間 症状:激しい下痢、腹痛、嘔吐