お盆の頃に問題になる感染症——帰省・墓参り・BBQの場面別リスクと、休診が多い時期の備えを内科医が解説
お盆は、帰省や旅行で人が大きく動き、久しぶりに親戚が集まる時期です。楽しい季節ですが、感染症の面では「人の移動」「世代を超えた接触」「屋外での活動」が重なる、少し特別なタイミングでもあります。
そしてもうひとつ、見落とされがちな事情があります。お盆期間は医療機関が休診していることが多く、体調を崩したときに「どこに相談すればいいのか分からない」という状況になりやすいのです。
この記事では、お盆に問題になりやすい感染症を場面別に整理し、あわせて休診が多い時期の備えについて解説します。お盆明けに増える感染症とその潜伏期間については、当院の別記事でも解説しています。
なぜお盆は感染症が問題になりやすいのか
理由は大きく3つあります。
- 人の移動と密集:長距離の移動や混雑した交通機関、久しぶりの集まりで、接触の機会が増えます
- 世代を超えた接触:乳幼児から高齢の方までが同じ場所で過ごすため、体力の弱い方にうつりやすくなります
- 医療機関が休診しがち:発熱や下痢が出ても、すぐに受診できないことがあります
つまり、「うつる機会が増える」ことと「受診しにくい」ことが同時に起こるのが、お盆の特徴です。
場面別のリスク
BBQ・屋台・作り置き——食中毒
夏場の食事は、食中毒のリスクが高まります。お盆はとくに、大人数の食事や作り置きが増えます。
- 加熱不足の肉・鶏肉:カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157など)、サルモネラ
- 生肉を扱った箸やトング、まな板の使い回しによる二次汚染
- おにぎりやサンドイッチなど手で扱う食品:黄色ブドウ球菌(つくった毒素は加熱しても壊れにくいとされます)
- カレーや煮物を大量につくって常温で置く:ウェルシュ菌
- 魚介類:腸炎ビブリオ
対策の基本は、「中心部までしっかり加熱する」「生肉用と食べる用の器具を分ける」「作った料理を常温で長時間置かない」「調理前・食事前の手洗い」です。
墓参り・草むら——マダニ
お墓の掃除や草刈り、山や草地に入るときは、マダニに注意が必要です。マダニが媒介する感染症には、日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあります。
- 長袖・長ズボン、足を覆う靴で肌の露出を減らす
- 虫よけ剤を活用する
- 帰宅後は体をチェックし、マダニがついていたら無理に引きはがさず医療機関へ
マダニとSFTSについては、当院の別記事でも解説しています。
水辺・プール——プール熱など
子どもの水遊びやプールでは、咽頭結膜熱(プール熱)などのアデノウイルス感染症が広がることがあります。タオルの共用を避け、手洗いを徹底してください。プール熱については、当院の別記事で詳しく解説しています。
温泉・入浴施設——レジオネラ
温泉や入浴施設では、まれにレジオネラ属菌による肺炎(レジオネラ肺炎)が問題になることがあります。入浴後に高熱・強いせき・息切れが出た場合は、入浴施設を利用したことを医師に伝えてください。とくに高齢の方や持病のある方は重症化に注意が必要です。
集まり・移動——呼吸器の感染症
新型コロナは夏にも流行の波がみられ、そのほかの夏かぜのウイルスも流行します。混雑した場所や集まりのあとに発熱・のどの痛みが出たときは、無理をせず休み、周囲への配慮をしてください。
帰省先の高齢者・乳児への配慮
お盆に特有の大切なポイントです。自分は軽いかぜ程度でも、高齢の方や赤ちゃんにうつると重くなることがあります。
- 体調が悪いときは、会うのを見送る・短時間にする
- 咳があるときはマスクを着ける
- 手洗いを徹底し、タオルの共用を避ける
- 赤ちゃんに顔を近づけてのキス・食器の共用は避ける
「せっかく帰ってきたのに」と思われるかもしれませんが、うつさないことが最大の贈り物になります。
旅行・海外渡航——帰国後の発熱
海外旅行後の発熱は、国内では珍しい感染症の可能性も考えます(デング熱やマラリアなど)。受診の際は、「いつ・どこへ行ったか」を必ず医師に伝えてください。渡航歴の情報は診断の大きな手がかりになります。
休診が多い時期の備え
お盆に体調を崩したときのために、事前に準備しておくと安心です。
- 常備しておくもの:体温計、経口補水液、解熱鎮痛薬(普段使い慣れたもの)、持病の薬(切らさないよう早めに受診して補充)
- かかりつけの診療日を事前に確認しておく
- 地域の休日当番医・救急医療体制の調べ方を確認しておく(自治体のホームページや広報、厚生労働省の医療情報ネットなどで調べられます)
相談先としては、次の窓口があります。
- 救急安心センター事業(#7119):救急車を呼ぶべきか、受診すべきか迷ったときの電話相談です。ただし全国どこでも実施されているわけではなく、地域によって利用できない場合があります。お住まいの地域の実施状況をご確認ください
- こども医療でんわ相談(#8000):子どもの急な病気やけがについて相談できる窓口です
受診・救急要請の目安
次のような場合は、休診期間であっても、救急外来の受診や救急要請(119番)を検討してください。
- 意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんしている
- 息が苦しい、呼吸が速い
- 水分がとれない、飲んでも吐いてしまう、半日以上尿が出ていない
- 血の混じった下痢が続く(腸管出血性大腸菌などの可能性があります)
- 高熱に加えて、強い頭痛や首の痛みがある
- 高齢の方や乳児、持病のある方で、ぐったりしている
とくに、乳幼児・高齢の方・持病のある方は、体調を崩したときの余力が小さいため、「様子を見る」を長く続けないことが大切です。
まとめ
- お盆は「うつる機会が増える」と「受診しにくい」が重なる時期です
- BBQ・作り置きの食中毒、墓参りのマダニ、入浴施設のレジオネラ、水辺のプール熱など、場面ごとにリスクが異なります
- 帰省先の高齢者・乳児にうつさない配慮(体調が悪ければ会うのを控える、手洗い・マスク)が大切です
- 海外旅行後の発熱は、渡航歴を必ず医師に伝えてください
- 事前に常備薬・持病の薬・かかりつけの診療日を確認し、#7119(地域により実施)や#8000などの相談先を知っておくと安心です
参考文献
- 厚生労働省 食中毒に関する情報/家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
- 国立感染症研究所(NIID)/国立健康危機管理研究機構 感染症情報
- 総務省消防庁 救急安心センター事業(#7119)/厚生労働省 こども医療でんわ相談(#8000)
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