若い男性の尿道炎——排尿痛・尿道分泌物の正体は?淋菌・クラミジアなど性感染症の症状と検査・治療を内科医が解説
「排尿時に痛い」「尿道から膿が出る」——尿道炎を疑う症状
若い男性で、排尿時のしみるような痛み・尿道のむずむず感・尿道分泌物(膿や透明な液)が出たら、まず疑うべきは尿道炎です。
男性の尿道炎は、ほとんどが性感染症(STI)によるもの。20〜30代に多く、放置すれば精巣上体炎や慢性化、パートナーへの感染拡大につながります。「恥ずかしくて受診できない」「自然治癒を待つ」のはリスクが大きい疾患です。
本記事では、男性尿道炎について原因・症状・検査・治療を整理します。
男性尿道炎の主な原因——性感染症が中心
男性尿道炎は淋菌性尿道炎(GU)と非淋菌性尿道炎(NGU)に分けられます。
① 淋菌性尿道炎(GU)
- 原因菌:淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
- 潜伏期:2〜7日(短い)
- 症状が強く・急激に出る
- 黄色〜緑色の膿性分泌物がたっぷり
- 強い排尿痛
- 咽頭や直腸に感染することもあり、無症状でも保菌者となりうる
② 非淋菌性尿道炎(NGU)
淋菌以外が原因の尿道炎。最近は淋菌性より頻度が多いです。
- クラミジア・トラコマティス(最多。NGUの約半数)
- マイコプラズマ・ジェニタリウム(近年注目、薬剤耐性が問題)
- ウレアプラズマ・ウレアリチカム
- トリコモナス(女性で多いが男性にも)
- HSV(単純ヘルペス)
- 稀にアデノウイルス、E. coli等
NGUは潜伏期が1〜3週間と長めで、症状も淋菌に比べて軽いのが特徴。「分泌物は少ないけど、なんとなくしみる」「朝、下着に少し汚れがついていた」程度のこともあります。
典型的な症状
- 排尿時の痛み・しみる感じ
- 尿道分泌物(膿性 or 漿液性)
- 尿道のむずむず感・かゆみ
- 尿道の違和感・圧迫感
- 頻尿
- 朝起きたときに下着の前面が汚れている(夜間に分泌物が貯留)
- 射精時の違和感
- 陰茎口の発赤
無症状のことも
特にクラミジアは半数以上が無症状と言われ、パートナーから指摘されて受診するケースも少なくありません。「本人は元気だがパートナーが感染した」というパターンも珍しくない。
こんなパターンは要注意
- 新しいパートナーとの性的接触後1〜3週間以内
- コンドームを使わなかった性的接触
- 口腔性行為のみ(咽頭からの感染も成立)
- パートナーから「STIの検査結果が陽性だった」と連絡
- 過去に尿道炎の既往あり、再発を繰り返す
検査——尿PCR(核酸増幅検査)が中心
① 尿検査
- 初尿(出始めの尿)を採取(中間尿ではNG)
- 尿沈渣で白血球の増加を確認
- 白血球エステラーゼ陽性
② 尿PCR(核酸増幅検査・NAAT)
診断のゴールドスタンダード。
- 淋菌・クラミジア同時測定が標準
- 必要に応じてマイコプラズマ・ウレアプラズマも追加
- 検体は初尿、結果は数日で判明
- 感度・特異度ともに高い
③ 尿道分泌物のグラム染色(医療機関により)
分泌物中のグラム陰性双球菌(淋菌)が見えれば淋菌性が示唆される。
④ 咽頭・直腸の検査(必要に応じて)
口腔・肛門接触歴があれば、咽頭・直腸からも採取してPCRに出すべきです。淋菌・クラミジアは尿道は陰性で咽頭のみ陽性ということもあります。
⑤ 同時に評価したいSTI
1つのSTIが見つかったら他の感染も疑う原則があります。
- HIV
- 梅毒
- B型肝炎
- C型肝炎
これらのSTIスクリーニング採血を同時に行うのが標準です。
治療——抗菌薬
① 淋菌性尿道炎
- セフトリアキソン1g 静注 or 筋注(単回)が現在の第一選択
- 耐性化が進行しており、経口セフェムやキノロンは推奨されない
- 従来併用していたアジスロマイシンは現在は単独治療が基本
- クラミジア合併が疑われる場合のみ、ドキシサイクリン併用
② クラミジア尿道炎
- ドキシサイクリン100mg×2回/日 × 7日間(CDC推奨第一選択)
- アジスロマイシン1g 単回も選択肢(妊婦・コンプライアンス問題例)
③ マイコプラズマ・ジェニタリウム
- マクロライド耐性(azithromycin耐性)が日本でも50%以上に達するという報告
- 耐性遺伝子検査ができるなら結果に応じて
- 耐性疑い:モキシフロキサシンなどのキノロン系
- 専門医療機関で対応
④ パートナー治療が必須
本人だけ治してもパートナーが治らないと「ピンポン感染」で再発します。
- 性的接触のあったパートナー全員にも検査・治療を勧める
- パートナーが症状なくても陽性のことが多い
- 治療完了まで、性的接触を控える(最低1週間)
合併症——放置しないで
男性側の合併症
- 精巣上体炎(副睾丸炎):陰嚢の腫れ・痛み・発熱、入院が必要なことも
- 前立腺炎:会陰部痛・排尿困難
- 反応性関節炎(Reiter症候群):関節炎・結膜炎・尿道炎の三徴、クラミジア感染後に多い
- 不妊:慢性化により精管の狭窄
パートナー(女性)への影響
- 骨盤腹膜炎(PID):強い下腹部痛・発熱
- 卵管狭窄→不妊
- 子宮外妊娠リスク
- 慢性骨盤痛
女性は無症状で進行しやすく、男性のSTI放置がパートナーの将来妊娠に影響する可能性があります。
HIV感染リスク
STIに罹患していると、HIVに感染するリスクが2〜5倍上昇するとされます。逆にHIV感染者は他のSTIに罹りやすい——同時スクリーニングが推奨される所以です。
受診の目安と受診先
こんな症状ですぐ受診
- 排尿痛+尿道分泌物
- 性的接触から1〜3週間以内に出た尿道違和感
- パートナーがSTI陽性と言われた
- 過去にSTI既往があり、再感染を疑う
受診先
- 泌尿器科:第一選択。STI診療に慣れている
- 性感染症外来:大学病院や保健所などに併設
- 内科:外来でPCR検体提出と抗菌薬処方は対応可
- 保健所のHIV・STI無料検査:匿名・無料の選択肢
受診のハードルを下げるため、オンライン診療や郵送検査キットもありますが、確定診断と治療には対面受診が望ましい場面が多いです。
予防——「次の感染」を起こさないために
- コンドームの正しい使用(口腔・肛門性交を含むすべての性行為で)
- 新しいパートナーとのSTIスクリーニング
- パートナーが固定でない時期は3〜6ヶ月ごとの定期検査
- 過去にSTI罹患歴がある人は再感染リスク高め、定期的なフォロー
- 男性へのHPVワクチン接種(中咽頭がん・尖圭コンジローマ予防)
よくある質問
Q. 症状が軽くなったので薬を途中でやめても大丈夫?
NG。処方された期間は必ず飲みきるのが原則。中途半端な治療は耐性菌を生み、再発・慢性化の原因になります。
Q. パートナーには伝えにくい——本人にだけ治療していいですか?
気持ちは分かりますが、パートナーに伝えて一緒に治療するのがゴールデンルール。伝えないと再感染の連鎖が止まりません。匿名で検査を勧める方法(郵送・保健所)もあります。
Q. 一度治ったら再感染しない?
免疫はつかないため再感染します。コンドームの継続使用と定期検査が大事。
Q. 病院でなんて言えばいい?
「排尿時に痛みがあって、性感染症を心配しています」と言えばOK。診療側はSTI診療を日常的に行っています。気まずさよりも「言って治す」を優先してください。
まとめ
- 若い男性の排尿痛+尿道分泌物+むずむず感は、まずSTIによる尿道炎を疑う
- 原因の中心はクラミジア・淋菌・マイコプラズマ
- 診断は初尿のPCR検査、HIV・梅毒等の同時スクリーニングも推奨
- 治療は抗菌薬。淋菌=セフトリアキソン1g、クラミジア=ドキシサイクリン7日
- パートナー治療が必須、ピンポン感染を防ぐ
- 放置すると精巣上体炎・反応性関節炎・PID(女性)・不妊のリスク
- 予防はコンドーム+定期スクリーニング+HPVワクチン
「相談しにくい」「恥ずかしい」が一番の敵です。早期受診・早期治療で、ほとんどのケースは1〜2週間で完治します。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。