健診で「中性脂肪が低い」と言われたら——低中性脂肪血症の考え方を内科医が解説
健康診断の結果で「中性脂肪が高い」と言われる方は多いのですが、ときどき「中性脂肪が低い」と指摘されて、心配になって受診される方がいらっしゃいます。コレステロールや中性脂肪は“高い”話ばかり聞くので、低いと逆に不安になるのだと思います。結論からお伝えすると、中性脂肪が低いこと自体は、多くの場合は心配いりません。ただ、考え方を整理しておきます。
中性脂肪が「低い」こと自体は、多くが心配いらない
中性脂肪(トリグリセリド、TG)は、健康診断では「高いこと」が問題になります。高い中性脂肪は、動脈硬化や、ときに急性膵炎のリスクと関わるため注意が必要です。逆に、中性脂肪が低いこと自体が体に悪さをする、ということは基本的にありません。脂質の面だけで見れば、むしろ低いほうがよいとも言えます。ですから、ほかに気になる症状や検査異常がなく、ご本人も元気であれば、低い中性脂肪を過度に心配する必要はないことがほとんどです。
ただし「なぜ低いか」を考える場面もある
とはいえ、いつも安心とは限りません。次のような場合は、低い中性脂肪が「何かのサイン」になっていることがあります。
- 数値が極端に低い
- 体重減少、食欲不振、下痢、強い倦怠感などの症状を伴う
- 中性脂肪だけでなく、コレステロールやアルブミン(栄養の指標)も一緒に低い、貧血があるなど、ほかの異常も重なっている
こうしたときは、「低い数値そのもの」より、「なぜ低いのか、ほかに手がかりはないか」を一緒に考えます。
背景に考えられること
- 低栄養・食事量の不足:食事が十分に摂れていない、極端なダイエット、体重が大きく減っているなど。中性脂肪は食事の影響を強く受けます。
- 吸収不良:腸での栄養の吸収がうまくいかない状態(慢性的な消化器の病気など)。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰になると代謝が活発になり、中性脂肪やコレステロールが下がることがあります。動悸、体重減少、汗をかきやすいなどを伴うことがあります。
- 肝臓の病気:重い肝障害では、中性脂肪を作る働きが落ちることがあります。
- 消耗性の病気:体力を消耗する病気が背景にあることもあります。
- まれな遺伝性のもの:生まれつき中性脂肪やコレステロールが非常に低くなる体質(家族性のもの)もあります。ごくまれですが、脂溶性ビタミンの吸収などに関わることがあります。
採血のタイミングも影響します
中性脂肪は、食事の影響をとても受けやすい検査です。直前に食べていないか、長く絶食していなかったかによって、値は変わります。たまたま低く出ているだけのこともあるため、必要に応じて、条件をそろえて測り直すこともあります。
ほかの検査値もあわせて見る
中性脂肪だけを見るのではなく、コレステロール、アルブミン、血球(貧血の有無)、肝機能、甲状腺の検査などと合わせて見ると、背景が見えてきます。たとえば中性脂肪もコレステロールもそろって低い場合は、低栄養や吸収の問題、遺伝性のものを考える手がかりになります。
どうすればいいか
ご本人が元気で、ほかに症状も検査異常もなく、中性脂肪だけが軽く低い——という場合は、多くは経過観察でよく、心配いりません。一方で、体重減少や食欲不振などの症状がある、ほかの検査値も低い、極端に低い、といった場合は、原因を調べる検査や、必要に応じて専門的な評価を検討します。気になる場合は、健診結果を持って一度ご相談ください。
まとめ
中性脂肪が低いことは、多くの場合は心配のいらない、むしろ脂質の面では悪くない所見です。ただし、極端に低い、体重減少などの症状を伴う、ほかの検査も低いといった場合には、低栄養や吸収不良、甲状腺機能亢進症、肝臓の病気、まれな遺伝性などが背景にあることがあります。大切なのは「数値だけ」でなく「全体を見て、なぜ低いかを考える」ことです。
参考文献
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」
- 脂質代謝・臨床検査に関する標準的な知見
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