健診で中性脂肪が低いと言われたら|原因と注意すべきポイントを内科医が解説
健康診断の結果で「中性脂肪が低い」と指摘されて、戸惑う方がいらっしゃいます。
コレステロールや中性脂肪は「高い」ことが問題になるイメージが強いため、「低いなら良いことなのでは?」と思われがちです。確かに、多くの場合は心配いりません。しかし、中には背景に病気が隠れていることもあります。
この記事では、中性脂肪が低い場合に考えられる原因と、受診の目安を解説します。
中性脂肪(TG)の基準値
健診での中性脂肪(トリグリセリド:TG)の基準値は以下の通りです。
判定 | 数値 |
|---|---|
基準値(A判定) | 30〜149 mg/dL |
低値(要注意) | 29 mg/dL以下 |
高値(要注意) | 150〜499 mg/dL |
高値(要精検) | 500 mg/dL以上 |
中性脂肪が30 mg/dL未満の場合に「低値」と判定されます。ただし、健診のタイミング(空腹時間の長さ)によって数値は大きく変動するため、1回の結果だけで判断するのは早計です。
中性脂肪が低くなる主な原因
1. 食事量が少ない・栄養不足
最も多い原因です。中性脂肪は食事から摂取した脂肪やエネルギーの一部が血中に反映されたものです。
- ダイエット中で食事制限をしている
- 食事の量が全体的に少ない
- 脂質を極端に避けている
- 食欲がなくて食べられていない
若い女性や高齢者に多いパターンです。「健康のために脂っこいものを避けている」という方で、中性脂肪が極端に低くなることがあります。
2. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、代謝が亢進して中性脂肪が消費されやすくなります。
動悸、発汗、体重減少、手の震え、イライラなどの症状を伴う場合は、甲状腺の検査(TSH・FT4)をおすすめします。
3. 肝臓の病気
中性脂肪は肝臓で合成されます。肝機能が著しく低下すると、中性脂肪の合成能力が落ちて低値になることがあります。
肝硬変や重度の肝障害が背景にある場合です。ただし、この場合は健診の肝機能検査(AST/ALT/γGTP)でも異常が出ていることがほとんどです。
4. 吸収不良症候群
食事から栄養をうまく吸収できない状態です。セリアック病、慢性膵炎、炎症性腸疾患などが原因になります。
慢性的な下痢、体重減少、脂肪便(油が浮いたような便)を伴う場合は、消化吸収の問題を疑います。
5. 低栄養・やせすぎ
BMIが18.5未満のやせ型の方は、体内のエネルギー貯蔵が少なく、中性脂肪が低くなりやすい傾向があります。
特に高齢者のやせは、サルコペニア(筋肉量の減少)やフレイル(虚弱)のリスクと関連するため、「やせているから健康」とは限りません。
6. 体質的なもの
特に病気がなくても、体質的に中性脂肪が低い方はいらっしゃいます。毎年の健診で同じように低値であり、他の検査に異常がなければ、経過観察で問題ないケースがほとんどです。
中性脂肪が低いと何が問題なのか
中性脂肪は体のエネルギー貯蔵として重要な役割を果たしています。極端に低い場合、以下のリスクがあります。
- 疲労感:エネルギー不足で疲れやすくなります
- 免疫力低下:栄養不足に伴い感染症にかかりやすくなります
- ホルモンバランスの乱れ:脂質はホルモンの原料でもあります。月経不順の原因になることがあります
- 脂溶性ビタミンの吸収低下:ビタミンA・D・E・Kの吸収に脂質が必要です
ただし、これらの問題が出るのは中性脂肪がかなり低い場合(概ね20 mg/dL以下が持続する場合)であり、30〜40 mg/dL程度で症状がなければ、過度に心配する必要はありません。
受診の目安
以下に当てはまる場合は、一度内科で相談されることをおすすめします。
- 中性脂肪が29 mg/dL以下で、複数回の検査で同様の結果が出る
- 体重減少が続いている(特に意図していないのに痩せてきた)
- 動悸・発汗・手の震えがある(甲状腺の可能性)
- 慢性的な下痢や脂肪便がある
- 倦怠感が続いて改善しない
- BMIが18.5未満で食事量が少ない
再検査では、中性脂肪に加えて甲状腺機能(TSH・FT4)、肝機能、血算、蛋白・アルブミンなどを総合的に評価します。
「低いから大丈夫」ではない、でも「低いだけで怖がらなくていい」
中性脂肪が低いこと自体は、多くの場合、治療が必要な状態ではありません。
ただし、「なぜ低いのか」の原因を一度確認しておくことには意味があります。食事量の問題であれば生活習慣の見直しで改善できますし、甲状腺や肝臓の問題であれば早期発見につながります。
健診の結果を見て「低い」と書いてあったら、そのまま放置せず、かかりつけの内科で一度相談してみてください。
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