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診療報酬のAI加算に、一人開業医は乗れるのか——令和8年度改定を読んで確かめたこと


まず自分の条件を書いておきます。2024年開院の内科クリニック、12時から21時、日曜も開けて火曜が休み、医師は私一人です。ブログは2025年5月からAIと一緒に書き、道具は2025年12月にGPTで作り始め、2026年2月からClaude Codeで組んでいます。病院や勤務医の方にはそのまま当てはまらない話だと思います。

60点がつくまでに、10年以上かかっている

国内第1号の大腸内視鏡AIは、2013年に研究が始まり、薬機法の承認が2018年12月です。ここまでで約6年。ただ60点がついたのは、このソフトそのものではなく、その後に出た病変の検出を支援する側のソフトで、こちらの承認は2020年1月です。そこからさらに4年あまりかかって、2024年度(令和6年度)の改定で、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術に病変検出支援プログラム加算として60点がつきました。2024年6月からです。研究開始からトータルで10年以上になります。大学と企業の共同研究で、開発に携わった三澤先生がこの経緯を語られているのを読みました。

そして今年度、令和8年度の改定では、生成AIを使った文書作成補助を組織として導入した場合に、医師事務作業補助者1人を1.2人換算、音声入力・RPA・患者向け説明動画のいずれかを組み合わせると1.3人換算にできる仕組みが入りました。要件として、AI事業者ガイドラインの遵守、すべての補助者への研修、業務量と負担感の年1回程度の評価が挙げられています。

読んで最初に思ったのは、「これは私の話ではない」でした。

開業医ならどうなの?

加算の要件を読むと、前提として医師事務作業補助者の配置があります。換算の話は、その補助者が何人いるかという計算の中に生成AIが入ってくる構造です。当院には補助者がいません。私が一人で診て、一人で書いて、一人で管理しています。この加算は、そもそも私が立つ土俵の形をしていません。

これは不満ではありません。制度の多くは病院や中規模以上のクリニックを想定した作りに見えます。一人開業医はその外側にいる、というだけのことです。

では一人開業医が取れるものは何か。令和8年度の改定では、電子的診療情報連携体制整備加算というものが新設されました。初診で15点、9点、4点の3区分、再診は2点で、いずれも月1回です。これまでの医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算を廃止して置き換わったもので、2026年6月から始まっています。

ただ、この3区分を分けているのは、電子処方箋を発行する体制と、所定の電子カルテを持っていること、電子カルテ情報共有サービス等で診療情報を共有して活用する体制の3つです。3つとも満たすと1、どれか1つ以上で2、どれもなければ3になります。そのうえで、どの区分にも共通の条件として、算定する月の3か月前のレセプト件数ベースで、マイナ保険証の利用率が30%以上であることが要ります。AIは一文字も出てきません。求められる中身が、オンライン資格確認の体制に加えて、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスまで広がった改定だと理解しています。

つまり、体制を前提にした加算については、AIが理由で点数が付く場面は私のところにはありません。さきほどの60点のように、どの検査や処置をやっているかで決まる加算は別の話で、規模で一般化はできません。

点数が付かないから、自由に作れる

では当院のAI活用は何のためにやっているか。診療報酬とは無関係に、自分の時間を買うためです。

書類の下書きをAIに並べさせて私が確認する。定型の案内文をAIに拾わせて私が直す。そういう使い方は、加算の要件を満たすかどうかと関係なく動いています。要件を気にしなくていい分、作り方を自由に決められます。壊したら直す、使いにくければ捨てる、それだけです。

研究から承認まで約6年かけて、そこから検出を支援する側のソフトが加算にたどり着くまでさらに4年あまりかけて、60点を世の中に通す仕事は、私にはできません。作る側の人たちが長い時間をかけて制度の中に道を開いてくれるから、私のような一人開業医が点数の外で小さな道具を自由に作れる余地もある、と思っています。

60点のために10年以上かける人がいるから、点数の付かない道具を気楽に作れる人もいる。そのことは、忘れずにいたいと思っています。

守れていることと、まだ半分のこと

加算と無関係に動かしている道具について、今の状態を正直に書きます。

  • 書類の下書き補助 — AIが並べて私が確認して確定する流れは動いています。ただしこの確認は全部私がやっているので、私の手が止まればそこで止まります。代わりに見る人はいません
  • 文章の下書き — ブログや案内文でAIが書いた原稿に、実際にはなかった実績が混ざっていたことが複数回ありました。それ以来、出す前に全文を自分で読む手順にしています。仕組みで防いでいるのではなく、私が読むかどうかに依存しているので、まだ半分です
  • 負担の評価 — 加算の要件に年1回程度の負担評価がありました。制度の外にいる私にその義務はありませんが、道具が増えるほど自分の負担がどう変わったかを確認する機会は要ると思っています。まだやっていません

診療報酬の土俵に乗れないことは、制度の問題でも私の問題でもありません。ただ、土俵の外で道具を作るなら、自分で評価する仕組みを自分で持っておくしかない、というのが今の認識です。

第5回は「DXはDではなくX(組織の変化)が主役」と言われている件について、一人開業医には組織がないがどう考えるかを書きます。

参考

  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 A000初診料 注16/A001再診料 注19
  • 厚生労働省 保医発0305第7号「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」第1の8(電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準)
  • 厚生労働省「個別改定項目について」Ⅲ-3-① 医療DX推進体制整備加算等の見直し
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(医療技術)」病変検出支援プログラム加算の新設
  • 日本医療研究開発機構(AMED)プレスリリース 2020年1月29日「ディープラーニングによる内視鏡診断支援ソフトウェアが医療機器の承認を取得」
  • AMED 第4回SaMD産官学連携フォーラム 三澤将史・工藤進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)「大腸内視鏡AIの開発と保険償還に向けた産学連携」
  • 令和8年度診療報酬改定 医師事務作業補助体制加算の施設基準の見直し

この記事はnoteの連載「開業医ならどうなの?」第4回を、当院のブログ用に整えたものです。

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