秋冬に家庭血圧が上がる理由——季節で血圧が変わる仕組み、正しい測り方、受診と薬の相談の目安を内科医が解説
秋が深まり朝晩が冷えてくると、「夏は落ち着いていた家庭血圧が、最近高めに出る」ということがあります。血圧には季節による変動があり、寒い時期に高く、暑い時期に低くなる傾向が、日本の大規模な家庭血圧のデータでも確認されています。季節で血圧が変わる理由、冬の数値を正しく読むための家庭血圧の測り方、そして受診や薬の相談を考える目安を整理します。
血圧は冬に高く、夏に低くなる
暖かい場所から急に寒い場所へ出ると、血管が収縮して血圧が上がります。季節という長い単位で見ても同じ傾向があり、家庭用血圧計の測定値を全国から集めた研究(64,536人、平均52.9歳)では、血圧が最も高かったのは12月、最も低かったのは7月でした。
- 朝の家庭血圧(上の血圧=収縮期血圧)の夏と冬の差は、男性で6.2mmHg、女性で7.3mmHg
- 差は年齢の高い層でやや大きく、男性で7.3mmHg、女性で8.7mmHg
- 年齢・性別・住んでいる地域の影響を考慮しても、気温が低いほど血圧が高いという関係が見られた
- 8月から12月の血圧は、2月から7月より平均で約1.5mmHg高かった
数mmHgの違いは小さく見えるかもしれません。しかし、もともと目標の境目あたりにある方では、夏は目標内に収まっていても、冬は超えてしまうことがあります。この研究の著者らも、冬は夏よりも血圧をしっかり管理する必要があると結論づけています。
外の気温だけでなく「部屋の温度」も影響する
家の中にいても、部屋が寒ければ血圧は上がります。国内の地域住民779人(平均70.7歳)を対象に、家庭血圧と、血圧計に内蔵された温度計による室温を同時に記録した研究では、室温が1℃下がるごとに朝の収縮期血圧が約0.9mmHg、夜の収縮期血圧が約0.7mmHg上がっていました。この関係は、外の気温の影響を差し引いても残っていました。
注目したいのは、1週間の朝の平均では正常範囲だった433人のうち93人が、最も寒かった日には高血圧の値になっていたことです。平均では問題がなくても、寒い朝に限って高くなる方がいるということです。研究者らは、適切な室温を保つことが家庭での血圧管理に役立つ可能性を指摘しています。
国立循環器病研究センターの患者向け解説では、冬は室内と外気の温度差をなるべく小さくするよう勧めています。入浴については、寒い脱衣所で裸になると血圧が上がり、熱い湯に入るとさらに上がり、湯から上がると大きく下がると説明したうえで、42℃以上の熱い湯ではなく40℃くらいのぬるめの湯に5〜10分程度つかり、長湯は避けるよう呼びかけています。起きてすぐ過ごす寝室や、入浴前後の脱衣所など、冬に冷えやすい場所の温度にも目を向けてみてください。
家庭血圧の正しい測り方
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」は、家庭血圧を高血圧の診断と管理の中心に位置づけています。季節による変化をとらえるためにも、毎日同じ条件で測ることが大切です。
- 血圧計——腕に巻く上腕式を使います。手首式は手首を心臓の高さに保つのが難しいことなどから、上腕が極端に太く短い場合などを除き、推奨されていません
- 朝——起床後1時間以内に、排尿を済ませてから、朝食と薬の前に、座って1〜2分安静にしてから測ります
- 夜——就寝前に、座って1〜2分安静にしてから測ります
- 避けたいタイミング——血圧は運動・入浴・食事・精神的な緊張などで大きく変わります。こうした直後は避け、毎日の条件をそろえます
- 評価のしかた——1回の値で判断せず、朝と晩それぞれを少なくとも5日間、できれば7日間測った平均で評価します
- 記録——高い値も低い値も選ばずにそのまま記録し、受診時に持参します。冬は測った部屋の温度も一緒にメモしておくと、寒さの影響かどうかを主治医と考える材料になります
冬の朝、暖房の入っていない寒い部屋で測ると、高めの値が出やすくなります。測る場所や部屋の条件も毎日そろえておくと、日々の変化や季節による変化を比べやすくなります。
家庭血圧の目安——ガイドライン2025の数値
家庭血圧には、診察室で測る血圧とは別の基準があります。高血圧の基準や治療中の目標は、診察室の値より5mmHg低い数値に設定されています。「高血圧管理・治療ガイドライン2025」での目安は次のとおりです。
- 高血圧——家庭血圧で上が135mmHg以上、または下が85mmHg以上(診察室では140/90mmHg以上)
- 高値血圧——家庭血圧で125〜134/75〜84mmHg
- 治療中の目標——年齢にかかわらず、家庭血圧で125/75mmHg未満(診察室では130/80mmHg未満)
ただし、目標値はやみくもに下げることを求めるものではありません。ガイドラインでも、一人ひとりの状況を考え、副作用に注意しながら下げることが前提とされています。高齢の方で日常生活の動作に支障がある方や認知症のある方では、転倒のリスクなどにも配慮して、一人ひとりに合わせた管理が求められています。ふらつきなどがあるときは主治医にお伝えください。
薬を飲んでいる方は、季節の変わり目に記録を持って相談を
降圧薬を飲んでいる方では、夏は目標内に収まっていた家庭血圧が、秋冬に入って少しずつ上がってくることがあります。前述の全国調査のとおり、秋から冬に向かう時期は血圧が上がりやすい時期です。
このとき大切なのは、自己判断で薬を増やしたり、減らしたり、やめたりしないことです。国立循環器病研究センターの解説でも、主治医の指示がない限り、自分で判断して調節したり中止したりしないよう呼びかけています。朝晩の家庭血圧の記録があれば、薬の量を見直すかどうかを数字に基づいて検討できます。反対に、薬を飲んでいて立ちくらみやふらつきが出るときも、記録とあわせて早めに主治医にご相談ください。
受診の目安
- 家庭血圧の朝または晩の平均が、上135mmHg以上か下85mmHg以上の状態が続いている(健診で指摘されていなくても)
- 夏は問題なかったのに、秋冬に入って朝の値が高い日が増えてきた
- 降圧薬を飲んでいて、家庭血圧の平均が目標より高い状態が続いている
- 降圧薬を飲んでいて、立ちくらみやふらつきがある
- 顔の片側が垂れ下がる、両腕を前に出すと片方だけが下がる、言葉が出ない・うまく話せないといった症状が急に出た場合や、突然の締め付けられるような強い胸の痛み・圧迫感が治まらない場合は、血圧の値にかかわらず、ためらわず救急車を呼んでください
参考文献
- 日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会 編「高血圧管理・治療ガイドライン2025」ライフサイエンス出版(2025年)(家庭血圧135/85mmHg以上を高血圧、125〜134/75〜84mmHgを高値血圧、降圧目標は家庭血圧125/75mmHg未満・診察室血圧130/80mmHg未満)
- Iwahori T, Miura K, Obayashi K, et al. Seasonal variation in home blood pressure: findings from nationwide web-based monitoring in Japan. BMJ Open. 2018;8(1):e017351.
- Tabara Y, Kushida O, Ozaki E, et al. Effects of room temperature on home morning, evening, and sleep blood pressure: the Shizuoka study. J Hypertens. 2026;44(1):109-115.
- 国立循環器病研究センター病院「高血圧」(患者の皆様へ/循環器病について知る)
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