お酒を飲んだあとの動悸——「ホリデー心臓症候群」と、受診したほうがよいサインを内科医が解説
「飲み会の翌朝、胸がドキドキして脈が乱れていた」「連休で飲む量が増えたら、心臓がバタバタする感じが出た」——お酒の席が続く時期に、こうしたご相談をいただきます。
大量に飲んだあとに不整脈が出る現象は古くから知られていて、休日や連休のあとに受診する方が多いことから「ホリデー心臓症候群」と呼ばれています。心臓に持病のない方にも起こるのが特徴です。
何が起きているのか
アルコールそのものと、その代謝でできる物質が、心臓の電気の流れに一時的な影響を与えます。そこに深酒の場では避けにくい条件が重なります。
- 脱水——アルコールには利尿作用があり、飲むほど体の水分は減ります
- ミネラルの喪失——カリウムやマグネシウムが尿とともに失われます。これらは心臓のリズムに関わります
- 睡眠不足と疲れ——自律神経のバランスが崩れます
結果として脈が速くなったり、リズムが乱れたりします。多くは半日から1日ほどで自然に元に戻ります。
問題は、その正体が「心房細動」のことがある点です
このとき起こる不整脈で代表的なものが、心房細動です。脈がまったく不規則になるタイプの不整脈で、動悸として自覚されます。
心房細動そのもので命に関わることは多くありませんが、心臓の中で血液がよどんで血のかたまりができ、それが流れて脳の血管を詰まらせることがあります。脳梗塞の重要な原因のひとつです。
ここが「一晩で治ったから大丈夫」と流せない理由です。一度起きた方は、飲酒のたびに繰り返したり、いずれお酒と関係なく起こるようになったりすることがあります。
すぐに救急を考えるサイン
動悸に加えて次のような症状があるときは、様子を見ずに救急要請(119番)を検討してください。
- 胸の痛み、締めつけられる感じ
- 意識が遠のく、実際に気を失った
- じっとしていても息が苦しい、横になれない
- 冷や汗、強い吐き気を伴う
- 手足に力が入らない、ろれつが回らない、顔がゆがむ(脳梗塞のサイン)
落ち着いているときにやっておくこと——「記録」が決め手になります
この不整脈のやっかいなところは、受診したころには脈が元に戻っていることです。診察室で心電図をとっても正常で終わってしまい、「気のせいでしょう」となりがちです。
そこで、症状が出ている「その場」の記録が非常に価値を持ちます。
- 脈をさわって数える——手首で15秒数えて4倍します。リズムがバラバラかどうかも見てください
- スマートウォッチの心電図・脈拍の記録——診断そのものではありませんが、いつ・どのくらいの脈だったかという情報は診療で役に立ちます
- いつ・どのくらい飲んだあとに・どれくらい続いたかをメモしておく
繰り返している方には、長時間つけて記録する検査(ホルター心電図など)で発作をつかまえにいく方法もあります。まずは一度ご相談ください。
その場での対処
- お酒はそこでやめて、水分をとる
- 横になって休む。カフェインやたばこは避ける
- 脈と症状を記録する
- 治まらない、上のサインが出た——受診・救急要請へ
なお、「迎え酒」で楽になることはありません。かえって脱水とミネラルの喪失が進みます。
繰り返さないために
いちばん効くのは、一度に飲む量を減らすことです。厚生労働省の飲酒ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、純アルコールで1日あたり男性40g以上、女性20g以上という目安が示されています。純アルコール20gは、ビール中びん1本(500mL)、日本酒1合、缶チューハイ(7%)350mL程度にあたります。
あわせて、飲む日は水を一緒にとる、続けて飲む日をつくらない、睡眠を削らない、といったところが現実的です。
まとめ
- 深酒のあとの動悸・脈の乱れは「ホリデー心臓症候群」と呼ばれ、心臓に持病のない方にも起こります
- 脱水・ミネラルの喪失・睡眠不足が重なって起こり、多くは1日ほどで戻ります
- 正体が心房細動のことがあり、その場合は脳梗塞につながりうるため「治ったから大丈夫」とは言えません
- 胸痛・失神・強い息切れ・脳梗塞を思わせる症状があれば救急要請を
- 受診時には脈がおさまっていることが多いため、症状が出たときの記録が診断の助けになります
参考文献
- 日本循環器学会 不整脈(心房細動)に関する診療ガイドライン
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(純アルコール量の目安)
- アルコールと不整脈(ホリデー心臓症候群)に関する診療情報
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