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健診で貧血なしなのに疲れが取れない——「隠れ貧血」とフェリチン(鉄の貯金)を内科医が解説

「疲れが取れない」「階段で息が切れる」「頭がぼんやりする」——でも健診の貧血の欄(ヘモグロビン)は正常。そんなとき、一歩踏み込んで調べる価値があるのがフェリチン、つまり体の鉄の「貯金残高」です。ヘモグロビンが正常でもフェリチンが枯れている状態は「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼ばれ、特に月経のある女性ではとても多いのに、健診の基本項目では見つかりません。

ヘモグロビンとフェリチンは「財布」と「貯金」

例えるなら、ヘモグロビンは財布の中の現金、フェリチンは銀行の貯金です。体は鉄が不足してくると、まず貯金(フェリチン)を取り崩して財布の中身(ヘモグロビン)を維持します。だから健診で「貧血なし」と出ていても、貯金はすでに底をつきかけている——これが隠れ貧血です。

貯金が尽きて初めてヘモグロビンが下がり、健診で「貧血」と指摘されます。つまり、フェリチンの低下はヘモグロビン低下の「前段階」であり、症状はこの段階からすでに出ることがあります。

隠れ貧血で起こりうる症状

  • 疲れやすい、休んでも回復しない
  • 階段や坂道での息切れ・動悸
  • 集中力の低下、頭がぼんやりする
  • 髪が抜けやすい、爪が割れやすい・スプーン状に反る
  • 氷をガリガリ食べたくなる(氷食症——鉄欠乏に特徴的です)
  • 脚がむずむずして眠れない(むずむず脚症候群との関連)

どれも「疲れのせい」「年のせい」「気のせい」にされやすい症状です。実際、外来で調べて初めて鉄欠乏が見つかる方は珍しくありません。

なぜ鉄が減るのか——補うより先に「原因」を

月経のある女性では、毎月の出血で鉄の収支が赤字になりやすいことが最大の理由です。加えて、妊娠・授乳、偏った食事やダイエット、激しい運動習慣も鉄を減らします。

一方で、注意が必要なのは月経のない方(男性・閉経後の女性)の鉄欠乏です。この場合、胃や腸からの目に見えない出血(潰瘍、ポリープ、時にがん)が隠れていることがあり、「鉄を補って終わり」にしてはいけません。原因の検索(便潜血や内視鏡検査)を優先します。

検査と治療の流れ

採血でフェリチン・血清鉄・ヘモグロビンなどを測ります(保険診療で調べられます)。フェリチンが低ければ、食事の見直し(赤身肉・レバー・魚、ビタミンCとの組み合わせ)と、必要に応じて鉄剤で補充します。鉄剤は胃のむかつきが出ることがありますが、種類や飲み方(隔日服用など)の工夫で続けやすくなります。

大切なのは、ヘモグロビンが戻っても貯金(フェリチン)が回復するまで補充を続けることです。途中でやめると数か月で元に戻ります。また、フェリチンは炎症でも上がるため、数値の解釈は他の検査と合わせて行います。

「健診は正常なのに、ずっとだるい」という方。その不調、調べられる原因かもしれません。フェリチンの測定は通常の採血でできますので、お気軽にご相談ください。

参考文献

  • 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」
  • WHO: Guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status

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