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かぜ・インフルエンザの季節の手洗いとマスク——手洗いの手順と時間、アルコールが効きにくい場面、マスクの役割、換気と湿度、家庭内の工夫を内科医が解説

10月も終わりに近づくと空気が乾き、かぜやインフルエンザにかかる方が増えてくる季節です。毎日の手洗いやマスクは身近な対策ですが、「何秒くらい洗えばよいのか」「アルコールがあれば十分なのか」「マスクは誰が着けるものなのか」と迷うことも多いのではないでしょうか。この記事では、厚生労働省などの資料をもとに、正しい手洗いの手順と時間の目安、アルコール手指消毒だけでは足りない場面、マスクの役割と着け方、換気と湿度、そしてご家族が感染したときの家庭での工夫をまとめます。

かぜやインフルエンザはどうやってうつるのか

厚生労働省は、急性呼吸器感染症(かぜやインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などをまとめた呼び方)の主な感染経路として、咳やくしゃみの際に口から出る小さな水滴(飛沫)による飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染などを挙げています。

咳やくしゃみをすると、しぶきは2mほど飛ぶとされています。また、咳やくしゃみを手で押さえると、その手で触ったドアノブなどにウイルスが付き、そこを介して他の人にうつる可能性があります。厚生労働省は、手洗いと、マスクの着用を含む咳エチケットが急性呼吸器感染症の予防に有効であるとしています。

正しい手洗いの手順と時間の目安

流水と石けんによる手洗いは、手や指に付いた病原体を物理的に取り除くために有効な方法とされています。厚生労働省の「正しい手洗いの方法」では、次の手順が示されています。

  • 手を水でぬらし、石けんをつけてよく泡立てる
  • 手のひらと手の甲を洗う(5回ずつ)
  • 指の間を洗う(5回ずつ)
  • 親指も忘れずに洗う(5回ずつ)
  • 爪と指先を洗う(5回ずつ)
  • 手首も洗う(5回)
  • 水でよくすすぎ、清潔なタオルやペーパータオルでふく

時間の目安について、厚生労働省は、手や指に付いたウイルスの数は流水で15秒洗うだけで100分の1に、石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせると示しています。さっと濡らすだけで終わらせず、泡立ててもみ洗いし、しっかりすすぐことがポイントです。

爪を短くしていないと汚れが落ちにくくなるため、爪は短く切っておきましょう。食事の前や帰宅したときのほか、鼻をかんだあとや、手のひらで咳やくしゃみを受け止めてしまったときも、すぐに手を洗いましょう。

アルコール手指消毒が効く場面・効きにくい場面

すぐに手を洗えない場面では、アルコール手指消毒が役立ちます。厚生労働省は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスには、アルコール製剤(エタノール濃度80%前後)による手指衛生も効果があるとしています。また、厚生労働省・経済産業省・消費者庁が新型コロナウイルスについてまとめた資料では、手洗いがすぐにできないときは、濃度70%以上95%以下のエタノールをよくすり込む方法が示されています。

一方で、冬に増えるノロウイルス(おう吐や下痢を起こす感染性胃腸炎の原因のひとつ)は事情が異なります。厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&A」では、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代わりにはならないとされ、すぐに石けんで手洗いができない場合の補助として使うよう書かれています。ノロウイルスを完全に失活化(感染する力をなくすこと)する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸水、加熱による処理が挙げられています。

石けんそのものにノロウイルスを不活化する力はありませんが、手の脂などの汚れを落とすことで、ウイルスを手からはがれやすくします。おう吐や下痢の症状がある方が身近にいるときは、アルコールに頼らず、石けんと流水での手洗いを基本にしてください。

マスクの役割と正しい着け方

マスクには大きく二つの役割があります。一つは、症状のある人が周りにうつさないための「咳エチケット」です。厚生労働省は、咳・くしゃみが出るときは、他の人にうつさないためにマスクを着用するよう呼びかけています。

もう一つは、自分を守るための補助的な役割です。やむを得ず人混みに入る可能性がある場合、不織布(ふしょくふ)製マスクの着用は、ある程度飛沫感染などを防ぐことができる一つの防御策と考えられる、とされています。

着け方・外し方のポイントは次のとおりです。

  • 取扱説明書をよく読み、鼻からあごまでを覆って、すき間がないように着ける
  • 外すときはマスクの表面に触れず、ゴムやひもをつまんで外す
  • 外した後は石けんで手を洗う(アルコール手指消毒剤でも可)
  • 汚れたら、すぐに新しい清潔なマスクに交換する

マスクがないときに咳やくしゃみが出そうになったら、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れましょう。鼻水や痰などを含んだティッシュはすぐにごみ箱に捨てます。

換気と湿度の目安

厚生労働省は、季節を問わず十分な換気が重要であるとしています。また、特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50〜60%)を保つことも効果的としています。

冬場の換気について、厚生労働省は、窓を開けると一時的に室温が下がるため暖房器具を使いながら換気すること、短時間に窓を全開にするよりも一方向の窓を少しだけ開けて常に換気する方が室温の変化を抑えられることを示しています。

  • 暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が暖められ、室温の低下を防げます(カーテンなど燃えやすい物との距離に注意)
  • 人がいない部屋の窓を開け、廊下を通して少し暖まった新鮮な空気を人のいる部屋に取り入れる方法も、室温を保つのに役立ちます

家族が感染したときの家庭での工夫

新型コロナウイルス感染症向けの資料ですが、厚生労働省は5類感染症への移行時(令和5年5月)に「家族が新型コロナウイルスに感染した時のポイント」として、家庭でできる感染対策を次のように示しています。

  • 定期的に窓を開けて換気する。共用スペースや他の部屋も頻繁に換気する
  • 可能な範囲で部屋を分ける
  • お世話はできるだけ限られた方で行い、接触する時間をなるべく短くする
  • 心臓や肺などに持病のある方、糖尿病の方、免疫の低下した方、妊婦の方などは、お世話を避ける
  • 同居する家族も、感染した家族に接するときや外出するときは、すき間なくフィットさせてマスクを着用する
  • こまめに手を洗う
  • 汚れたリネンや洋服は洗濯し、ごみは密閉して捨てる

おう吐や下痢がある場合(ノロウイルスなど)は、さらに注意が要ります。ノロウイルスは乾燥すると空気中に漂い、それが口に入って感染することがあるため、吐いた物や便は乾かないうちに速やかに処理するよう勧められています。処理するときは使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋を着け、拭き取った後は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤でも代用できます)で床を拭き、その後水拭きをして、十分に換気します。また、症状が治まった後も、通常では1週間程度、長いときには1か月程度ウイルスの排泄が続くことがあるとされています。回復後もしばらくは、トイレの後の手洗いを丁寧に続けましょう。

受診の目安

厚生労働省は、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。インフルエンザは、子どもではまれに急性脳症を、高齢の方や免疫力の低下している方では細菌による肺炎を伴うなど、重症になることがあるとされています。気になる症状があれば早めに内科などの医療機関にご相談ください。

インフルエンザにかかった子どもや未成年者では、急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなどの異常行動を起こすことがあります。厚生労働省は、少なくとも発熱から2日間は転落などの事故を防ぐ対策(玄関や窓の施錠を確実にするなど)をとること、治療が始まってから少なくとも2日間は一人にしないなどの配慮をすることを呼びかけています。

次のような症状があるときは、ためらわず119番に連絡してください(消防庁の資料より)。

  • 急な息切れ、呼吸困難
  • 意識がない(返事がない)、またはおかしい(もうろうとしている)、ぐったりしている
  • けいれんが止まらない、けいれんが止まっても意識がもどらない
  • 子どもで、くちびるの色が紫色、激しい咳やゼーゼーして呼吸が苦しそう
  • 子どもで、激しい下痢や嘔吐で水分が取れず、食欲がなく意識がはっきりしない

119番を呼ぶか迷うときは救急相談窓口(#7119)に、子どもの場合は子ども医療電話相談(#8000)にも相談できます。

参考文献

  • 厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」(2026年)
  • 厚生労働省「令和8年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策」(2026年)
  • 厚生労働省「咳エチケット」
  • 厚生労働省「正しい手洗いの方法」(リーフレット)
  • 厚生労働省・経済産業省・消費者庁「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」
  • 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(令和3年11月19日改定)
  • 厚生労働省「ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと~8つのポイント~」(一般社団法人日本環境感染学会とりまとめを一部改変、令和2年3月1日版)
  • 厚生労働省「家族が新型コロナウイルスに感染した時のポイント」(令和5年5月8日作成)
  • 消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)

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