GW(ゴールデンウィーク)に増える病気とけが——旅行・BBQ・日差し・食中毒・五月病まで内科医が解説
GWは「いつもと違う体調不良」が増える時期
ゴールデンウィーク(GW)は旅行・アウトドア・外食・飲酒の機会が増える反面、内科外来ではいつもの風邪とは違うパターンの体調不良が一気に増える時期でもあります。
「連休明けにぐったりして受診」というケースもあれば、「休みの途中で救急受診」というケースも。今回は、2026年GWに向けて、内科の現場でよく経験する「GWに増える病気・けが」を整理します。
1. 食中毒・感染性胃腸炎
GWに最も受診が増える疾患のひとつ。BBQ・お弁当・外食・買い置きの食品など、普段と違う食事パターンが原因になります。
よくあるパターン
- BBQでの肉の加熱不足:カンピロバクター・腸管出血性大腸菌(O157)・サルモネラ
- 作り置きお弁当の常温放置:黄色ブドウ球菌・ウェルシュ菌
- 生魚・刺身:アニサキス(食後数時間〜十数時間の激しい腹痛)
- ノロウイルス:人の集まりで感染拡大
注意ポイント
- 嘔吐・下痢が落ち着いた後の脱水で受診することが多い
- 高齢者・小児・妊婦は重症化しやすい
- O157は下痢後に溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こしうる→血便を伴う下痢は必ず受診を
- 止瀉薬の安易な服用は避ける——感染性の場合、病原体を腸内に留める
2. 熱中症・脱水
GWは年によって気温が真夏並みに上がることがあります。体がまだ暑さに慣れていない時期のため、気温のわりに熱中症リスクが高いです。
- 屋外フェス・登山・屋外スポーツ
- 長時間の車移動(車内熱中症)
- BBQで炎天下にいながら飲酒
- アルコール+カフェインは脱水を助長する
対策
- 水分+電解質(経口補水液)をこまめに
- 帽子・日傘・日陰利用
- お酒=水分補給ではない
- 高齢者・小児・妊婦は室温25〜28℃・湿度50〜60%を保つ
3. 日焼け・光線過敏症
5月のUV量は真夏並み。油断して重度の日焼けをする方が連休明けに来院します。
- 海水浴・登山・スポーツ観戦での日焼け
- 顔・背中の広範囲の発赤・水疱・剥離
- 解熱薬・抗菌薬・利尿薬などで光線過敏反応が出ることがある(ミノマイシン・ボルタレン外用など)
日焼け止めはSPF30以上、PA+++以上を。2〜3時間ごとの塗り直しが推奨されます。
4. マダニ刺症・SFTS・虫刺され
GW〜秋はマダニ・ブユ・ハチ・蚊などの活動が活発になる時期。特にマダニによる感染症(SFTS=重症熱性血小板減少症候群)は4〜10月が好発期で、近年関東以西で報告が増えています。
- 登山・山菜採り・農作業・キャンプで草むらに入る人は要注意
- マダニに咬まれたら無理に引き抜かない(皮膚科で除去)
- 咬まれた後2週間以内の発熱・消化器症状は必ず受診
- ハチ刺されでアナフィラキシー歴がある方はエピペン携帯
5. 喘息発作・呼吸器症状の悪化
春の気象要因が重なってGWは喘息発作が目立つ時期です。
- 黄砂・PM2.5(大陸からの飛来物)
- ヒノキ・イネ科花粉の残存
- 気温の急な変動
- BBQの煙・タバコの煙・焚き火
- 長距離移動や疲労による免疫低下
喘息・COPDの方は、GW前に吸入薬の残量確認、発作治療薬の携帯を。旅行先で発作を起こすと対応に困ります。
6. 急性胃腸炎・胃炎・逆流性食道炎
食生活の乱れによる消化器症状が急増します。
- 旅館の食べ過ぎ→急性胃炎・膨満感
- 揚げ物・脂の多い食事→胆石発作・急性膵炎
- 夜遅くの食事+飲酒+就寝→逆流性食道炎悪化
- NSAIDs常用の方→旅行先で頭痛薬を追加→急性胃潰瘍
7. 急性アルコール中毒・アルコール関連疾患
GWは歓迎会・連休の飲み会が重なる時期。救急外来では以下のケースが増えます。
- 急性アルコール中毒:意識障害、嘔吐、低体温、誤嚥性肺炎
- 急性膵炎:上腹部の激しい痛み+背部痛
- マロリー・ワイス症候群:強い嘔吐後の吐血
- 急性アルコール性肝障害:連日の大量飲酒による肝酵素上昇
- 痛風発作:プリン体・アルコールで尿酸値上昇
8. 循環器イベント・心筋梗塞・脳梗塞
GW中は心筋梗塞・脳卒中の発症が増えるという報告があります。原因は複数です。
- 普段しない激しい運動(登山・スポーツ・BBQの片付け)
- 長時間の車・飛行機移動によるエコノミークラス症候群(肺塞栓)
- 過食・過飲による血圧・血糖変動
- 旅行先での降圧薬・抗血栓薬の飲み忘れ
- 普段と違う時間帯の活動による自律神経の乱れ
旅行前チェック
- 常用薬はGW分+予備を持参
- 長距離移動時は1〜2時間ごとに足首を動かす・水分補給
- 胸痛・呼吸困難は即救急要請(#7119で相談も可能)
9. 子どもの感染症・ウイルス性疾患
子ども同士の接触機会が増えるため、ウイルス感染症の小流行が起きやすい時期です。
- ヘルパンギーナ・手足口病:5〜8月にかけて増加
- 咽頭結膜熱(プール熱、アデノウイルス)
- 溶連菌感染症:春のピークを継続
- RSウイルス:ここ数年は流行期が不規則化
10. 五月病・適応障害・自律神経失調
新生活スタートから1ヶ月——GW明けにこれが噴き出すのが五月病です。
- 気分の落ち込み、やる気が出ない
- 食欲低下、睡眠の質低下
- 頭痛、動悸、めまい、胃痛
- 朝起きられない、会社・学校に行きたくない
本人の甘えではなく、適応障害・うつ状態の初期サインのことがあります。「GW明けに体調不良」が2週間続くなら、内科受診+必要時に心療内科紹介が望ましい状況です。
11. 持病の悪化・常用薬の飲み忘れ
GWで生活リズムが崩れて、慢性疾患が悪化する方も。
- 高血圧・糖尿病:食事・飲酒・運動の変化で血圧・血糖が乱高下
- 不整脈:アルコール誘発性心房細動
- 甲状腺疾患:薬の飲み忘れ
- 喘息・アレルギー:吸入薬の切れ
- 抗血小板薬・抗凝固薬:出血リスク(けが+出血止まりにくい)
GW前に処方日数の確認を。多くの医療機関はGW休診のため、必要なら早めに来院を。
GWに備えるチェックリスト
- □ 常用薬の残量確認(連休分+3日分予備)
- □ 発作治療薬(吸入SABA、ニトロ、エピペン等)携帯
- □ お薬手帳を持ち歩く
- □ 経口補水液を1本車に常備
- □ 虫除け・日焼け止め・日焼け後のアフターケア
- □ 旅行先の救急病院・夜間休日診療所をGoogle Mapでブックマーク
- □ #7119(救急安心センター)・#8000(小児救急電話相談)を登録
- □ 暴飲暴食・寝不足を予定に組み込まない
受診の目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、連休中でも早めに医療機関へ。
- 高熱が3日以上続く/意識がぼんやりする
- 血便・黒色便・吐血
- 下痢・嘔吐で水分が摂れない
- 胸痛・強い呼吸困難・片側の麻痺・ろれつが回らない
- 強いお腹の痛み・背中に抜ける痛み
- 広範囲の発疹+発熱+息苦しさ(アナフィラキシー)
- マダニ咬傷後の発熱・倦怠感
- ペット(特に野外飼育のネコ)接触後の原因不明の発熱
GW明けの体調管理
GWが終わってからの1〜2週間は「リカバリー期間」と意識しておくと体調を崩しにくくなります。
- 早めに生活リズムを戻す(GW最終日は自宅でゆっくり)
- 睡眠を優先——連休明け1週間は早寝を徹底
- 消化の良い食事を心がける
- 水分・電解質補給
- 運動は少しずつ再開
- 五月病の兆候があれば一人で抱え込まず受診を
まとめ
- GW期間は食中毒・熱中症・日焼け・マダニ・喘息・急性胃腸炎・急性アルコール・循環器イベント・子どもの感染症・五月病が増える
- 旅行前チェック:常用薬・発作治療薬・お薬手帳・救急連絡先
- 発熱+屋外活動歴/血便/胸痛/アナフィラキシーは即受診
- GW明けは「リカバリー期間」として意識的に体を整える
- 五月病と思われる症状が2週間続けば医療機関へ
楽しいGWを過ごすためにも、「普段と違う体にかかるストレス」を意識して、無理のない過ごし方を。体調を崩された方は、連休明けの早めの受診をおすすめします。