胃カメラで「異常なし」なのに胃もたれが続く——機能性ディスペプシアという病気を内科医が解説
胃もたれや胃の痛みが続くので胃カメラを受けた。ところが結果は「きれいな胃ですよ、異常なし」。それなのに症状は続いている——このパターン、実はとても多く、その代表が「機能性ディスペプシア(FD)」という病気です。日本人のおよそ10人に1人が該当するといわれる、ありふれた、けれどあまり知られていない病気です。
「異常なし」なのに症状があるのはなぜか
機能性ディスペプシアは、胃粘膜に潰瘍やがんなどの見た目の異常がないのに、胃の「働き」に問題が起きている状態です。具体的には次のような仕組みが関わっています。
- 胃の動きの異常:食べ物を受け入れるときに胃の上部がうまく広がらない、胃から十二指腸への排出が遅い
- 知覚過敏:少しの胃酸や胃の伸びを「痛み」「もたれ」として強く感じてしまう
- 脳と腸の相互作用:ストレスや不安が自律神経を介して胃の働きに直結する
「気のせい」でも「大げさ」でもなく、機能の病気として国際的に診断基準が定められています。症状のタイプは大きく2つで、食後のもたれ・すぐ満腹になるタイプ(食後愁訴症候群)と、みぞおちの痛み・灼熱感が主体のタイプ(心窩部痛症候群)に分けられ、治療薬の選び方が変わります。
診断の前に、必ず確認しておくべきこと
大切なのは、「機能性」と判断する前に、器質的な病気を除外することです。特に次のサインがある場合は、症状が軽くても内視鏡検査を優先します。
- 体重が減ってきている
- 飲み込みにくさ、つかえ感がある
- 黒い便が出た、貧血を指摘された
- 嘔吐を繰り返す
- 50歳以上で初めて症状が出た
また、ピロリ菌感染があれば、まず除菌します。除菌によって症状が改善する方が一定数いるためです(この場合はピロリ関連ディスペプシアと呼ばれ、少し扱いが変わります)。
治療の選択肢は増えています
治療は、症状のタイプに合わせて選びます。胃酸を抑える薬(PPIなど)はみぞおちの痛みタイプに、胃の動きを助ける薬(アコチアミドなど)は食後のもたれタイプに使われます。アコチアミドは機能性ディスペプシアに対して日本で保険適用のある薬です。漢方薬では六君子湯がよく使われ、胃の受け入れ機能を改善する働きが報告されています。
生活面では、脂っこい食事・食べすぎ・早食いを避ける、就寝直前に食べない、アルコールとカフェインをほどほどにする、といった基本が効きます。ストレスとの関連が強い方では、睡眠を整えることや、必要に応じて不安に対するアプローチを組み合わせることもあります。
「検査で異常がないのだから我慢するしかない」は誤解です。名前のつく病気であり、使える薬もあります。胃カメラで異常なしと言われたのに胃の不調が続いている方は、一度ご相談ください。症状のタイプを一緒に整理するところから始めます。
参考文献
- 日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン——機能性ディスペプシア(FD)」
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