9月にインフルエンザワクチンを打ったら、冬に2回目が必要?——13歳以上は1回で十分な理由と、今季の流行株から見た「早めの接種」の考え方を内科医が解説
今年は8月にインフルエンザが流行入りし、当院でも9月12日から接種を始めました。そこで最近よく聞かれるのが、「こんなに早く打ったら、冬にもう1回打たないといけないのでは?」という質問です。結論から書くと、13歳以上の方は今年も1回で、2回目は不要です。なぜそう言えるのか、今季の流行の状況と、ワクチンの効き方の両面から整理します。
まず今季の状況——8月に流行入りし、福岡市は増え続けている
厚生労働省の発表では、全国の定点あたり報告数は第34週(8月17日〜23日)に流行入りの目安である1.00人を超え、第35週(8月24日〜30日)には1.76人になりました。感染症法ができた1999年以降で、2009年に次いで2番目に早い流行入りです。福岡市の定点報告は第36週(8月31日〜9月6日)で4.43人(9月10日更新)と、さらに増えています。
検出されているウイルスは、直近ではA型のうちA(H1N1)pdm09がほとんどを占めています。昨シーズンはA(H3N2)が主体だったので、型が入れ替わっています。この点はあとで大事になります。
「2回目」は標準ではない——1回で終わる理由
インフルエンザワクチンの添付文書では、13歳以上は「1回、またはおよそ1〜4週間の間隔で2回」、13歳未満は「およそ2〜4週間の間隔で2回」と定められています。つまり2回打つ場合でも、それは「秋に1〜4週間あけて2回」のことで、「秋に1回、冬にもう1回」という打ち方は用法として想定されていません。
海外の公的機関も同じ立場です。米国CDCの予防接種諮問委員会は「そのシーズンの接種を終えた人への追加接種は、いつ接種したかにかかわらず推奨しない」と明記しています。WHOも、流行が長い地域を念頭に置いたうえで「年1回、主要な流行期の前に」としています。年に2回打つことで発症や入院が減ることを示した臨床試験は、私が調べた範囲では見つかりません。
むしろ、同じ株のワクチンを短い間隔で重ねて打つと、2回目のあとの抗体の上がり方が鈍くなるという観察研究の報告があります。「打てば打つほど守られる」という単純な話ではない、というのが現在の理解です。
9月に打って、冬まで持つのか
ここが本当の心配だと思います。ワクチンの効果は接種から約2週間で立ち上がり、おおむね5か月程度続くとされています。9月中旬に打てば、2月中旬あたりから効果が薄れ始める計算です。
ただし、効果の落ち方は流行している型で変わります。A(H3N2)は時間とともに効果が下がりやすい一方、今季の主体であるA(H1N1)pdm09は、複数の研究でシーズンの前半と後半の効果に大きな差が出ていません。また、18歳未満や高齢でない成人では、時間経過による効果の低下が検出されにくいことも報告されています。そもそも今季のワクチンは、供給が始まったのが9月中旬で、当院にも接種開始日の当日に入荷しました。これより前に打つことはできません。流行がワクチンの流通より先に来てしまった年だ、というのが今季の実情で、入荷したら早めに打つのが理にかなっています。
もちろん、流行の型がシーズン途中で変わる可能性はあります。それでも、その対策は「2回目」ではなく、周囲の流行に応じた早めの受診や家族の接種のほうが、根拠のある方法です。
冬の後半に流行するB型はどうなのか
一方で、正直に書いておかなければならないことがあります。日本のインフルエンザは近年、A型が年内に、B型が年明けから2月にかけてという二つの山を作ることを繰り返しています。昨シーズンも、全国で検出されたB型3,962件のうち94.7%が年明け以降で、ピークは2026年第7週(2月中旬)でした。同じシーズンのA(H3)のピークは2025年第47週で、13週(約3か月)離れています。
では、9月に打った効果はそこまで持つのか。現時点では「証明できていない」というのが正確な言い方です。健常な成人を対象にした2025年の解析では、接種から5か月を超えた時点で、A(H1N1)pdm09に対しては防御が有意に残っていました(調整オッズ比0.66、95%信頼区間0.51〜0.87)。一方でB型は、防御する側を向いてはいるものの信頼区間が1をまたいでおり、統計的には言い切れませんでした(同0.75、0.49〜1.16)。過去の研究でも、B型で季節内の効果低下を検出したものと、検出しなかったものが併存しています。英国の21万件規模の解析では、B型はどの年齢層でも低下の証拠は見られなかったと報告されています。
では、9月をやめて11月まで待つのはどうか。そこは違う、というのが今の答えです。米国の予防接種の諮問委員会は、効果の減衰を理由に7月・8月の接種は勧めていませんが、9月と10月は理想的な時期としています。またモデル研究では、10月まで遅らせた場合、それまで8〜9月に打っていた人の14%以上が打ち損ねると、かえって入院が増えると試算されています。今年は統計上2番目に早い8月の流行入りで、すでに患者さんが出ています。後半のB型が心配だから待つ、というのは、目の前のA型を取りこぼす取り引きになります。
後半への備えは、打ち直しではなく別の形になります。熱が出たら早めに受診して検査と早期の治療につなげること、そして家族ぐるみで接種しておくことです。
例外——2回打つのが標準の方
- 13歳未満のお子さん:2〜4週間の間隔で2回が標準です
- 免疫を強く抑える治療を受けている方など、医師が個別に判断する場合があります。該当する方は主治医にご相談ください
受験生がいるご家庭へ
1〜2月の受験期を守りたい場合も、本人が2回打つより家族全員が1回ずつ打つほうが根拠があります。家庭内で誰かが持ち込むのを減らす効果は、海外の集団を対象にした無作為化試験で示されています。副反応のリスクを増やさずに本人を守れる、現実的な方法です。
当院での接種
- 9月12日(土)から。1回4,000円(税込・診察料込み)
- 12:00〜21:00(火曜休診)。土曜・日曜・祝日も21時まで接種できます
- 予約は下記の予約ページから。13歳未満のお子さんの接種は当院では行っておりません。13歳以上の方は1回接種で対応しています
- 65歳以上の方などを対象とした自治体の公費助成(定期接種)にも対応しています。自己負担額や対象となる条件は自治体の定めによりますので、ご予約時または受付でお尋ねください。上記の4,000円は、公費助成の対象とならない方の任意接種(自費)の料金です
ワクチンが手に入り次第、早めに打つことは、今季については理にかなった判断です。そのうえで「2回目」は要りません。心配な点があれば、接種の際にお尋ねください。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」2026年第34週・第35週(2026年8月28日・9月4日公表)
- 福岡市「福岡市感染症発生報告数(定点報告)」2026年第36週(2026年9月10日更新)
- インフルエンザHAワクチン 添付文書(用法及び用量)
- 米国CDC/ACIP 季節性インフルエンザワクチン推奨(追加接種に関する記載)/WHO Position paper: Vaccines against influenza(2022)
- Loeb M, et al. JAMA. 2010;303(10):943-950(小児接種による集団内の間接防御)
- Nazareth J, et al. Lancet Microbe. 2025;6(11):101136(健常成人・接種5か月超のワクチン効果)
- Whitaker HJ, et al. Influenza Other Respir Viruses. 2025;19(12):e70194(英国21万件の解析)
- Ferdinands JM, et al. Clin Infect Dis. 2020;70(8):1550-1559(接種時期を遅らせた場合の試算)
- 国立健康危機管理研究機構「週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数」
📘 院長の本 『健康診断の「要精密検査」が届いたら』 Amazon/『痩せたいなら内科に来なさい』 Amazon/『その熱、本当にただの風邪?』 Amazon
関連記事:B型インフルエンザは年明け以降に増えてきた——9月に打ったワクチンの効果がそこまで残るかは、まだ決着していません
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから