猛暑日を超える気温で体に起こること——気温の「階級」とやるべきことを内科医が解説
「今日は猛暑日」「40℃に迫る危険な暑さ」——ニュースでこうした言葉を聞かない日が少なくなりました。では、気温が上がるにつれて、体の中では実際に何が起きているのでしょうか。
この記事では、気温の「階級」の意味を整理したうえで、気温が上がるほど体にかかる負荷がどう変わるのか、そして熱中症警戒アラートが出たときに何をすればよいのかを、段階別に解説します。
まず、気温の「呼び名」を整理する
天気予報で使われる暑さの呼び名は、気象庁が定義しています。
- 夏日:最高気温が25℃以上の日
- 真夏日:最高気温が30℃以上の日
- 猛暑日:最高気温が35℃以上の日
- 酷暑日:最高気温が40℃以上の日
- 熱帯夜:夜間の最低気温が25℃以上のこと
「酷暑日(40℃以上)」は、もともと通称として使われていた言葉ですが、近年の記録的な暑さを受けて、2026年に気象庁の正式な予報用語として採用され、今シーズンから使われています。これにより、40℃以上の暑さにも正式な呼び名がつきました。
気温が上がると、体の中で何が起こるか
人の体は、体温をおよそ37℃前後に保とうとします。暑い環境では、次のしくみで熱を逃がします。
- 皮膚の血管を広げ、血液を通じて体表から熱を放散する
- 汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を奪う(気化熱)
気温が上がるほど、この体温調節に大きな負担がかかります。とくに重要なのが、次の2点です。
- 外気温が体温に近づく、あるいは超えると、体から外へ熱が逃げにくくなり、むしろ外から熱が入ってきます。40℃に迫る気温では、汗の蒸発だけが頼りになります
- 湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、気化熱による冷却がうまく働きません。このため、「気温がそれほど高くなくても危険」という状況が生まれます
つまり、危険度は気温だけでは決まらず、湿度や日射も合わせた指標で考える必要があります。それが後で述べる「暑さ指数(WBGT)」です。
段階が上がると高まるリスク
気温の階級が上がるにつれて、次のようなリスクが高まります。
- 熱中症:体温調節が追いつかず、めまい・頭痛・吐き気から、重症では意識障害まで起こりえます
- 脱水・電解質の異常:大量の発汗で水分と塩分が失われます。水だけを大量に飲むと、血液中のナトリウムが薄まる低ナトリウム血症を起こすこともあります
- 循環器への負担:暑さで血管が広がり、脱水も加わると、心臓や血圧の調節に負担がかかります。持病のある方では体調を崩すきっかけになります
- 睡眠への影響(熱帯夜):夜間も気温が下がらないと、体温が下がりにくく、寝つきや眠りの質が落ちます。睡眠不足は翌日の熱への弱さにもつながり、悪循環になりがちです
猛暑日が続き、さらに夜も熱帯夜になると、体を冷まして回復する時間が取れず、疲労と脱水が積み重なっていきます。
「暑さ指数(WBGT)」と熱中症警戒アラート
熱中症の危険度をより正確に表すために使われるのが、暑さ指数(WBGT)です。気温だけでなく、湿度と日射・輻射熱を合わせて算出します。
このWBGTをもとに、環境省と気象庁は次の情報を発表しています。
- 熱中症警戒アラート:対象地域のいずれかの地点で、翌日または当日の最高WBGTが33以上と予測された場合に発表されます
- 熱中症特別警戒アラート:都道府県内のすべての地点で、翌日の最高WBGTが35に達すると予測される場合などに発表されます(過去に例を見ない危険な暑さのときの情報で、2024年度から運用されています)
これらのアラートは、「気温が高い」以上に「命に関わる暑さ」を知らせるサインとして受け取ってください。
アラートが出たら、どう行動するか
警戒レベルに応じて、行動の目安は次のとおりです。
- 熱中症警戒アラートが出たとき:不要不急の外出や屋外での運動を避ける、こまめに水分・塩分をとる、冷房を適切に使う、高齢の方や子どもの体調に周囲が気を配る
- 熱中症特別警戒アラートが出たとき:さらに厳重な警戒が必要です。外出は極力控え、涼しい環境で過ごす。エアコンのない環境では、公共施設など涼しい場所(クーリングシェルター等)の利用も検討する
- 共通して大切なこと:「がまん」や「精神論」で乗り切ろうとしないこと。とくに屋外の作業や運動は、時間帯の変更や中止を含めて判断してください
とくに注意したい人・時間帯
同じ気温でも、次の方は熱中症になりやすく、重症化しやすいとされます。
- 高齢の方(暑さやのどの渇きを感じにくく、体温調節の力も低下しやすい)
- 乳幼児(体温調節が未熟で、地面に近く高温にさらされやすい)
- 持病のある方、利尿薬などを服用している方
- 屋外で作業・運動をする方
時間帯としては日中の気温が高い時間が危険ですが、熱がこもった室内では、夜間や、涼しいと感じる室内でも熱中症は起こります。エアコンを我慢しないことが大切です。
熱中症を疑うサインと受診の目安
次のような場合は、涼しい場所へ移動し、水分・塩分をとって体を冷やしてください。改善しない・悪化する場合は受診してください。
- めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の汗
- 頭痛、吐き気、体がだるい、力が入らない
次のサインがあれば、ためらわず救急要請(119番)を検討してください。
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がはっきりしない
- 自分で水分がとれない、けいれんしている
- 体が熱いのに汗が出ていない
まとめ
- 気象庁の予報用語は、夏日25℃/真夏日30℃/猛暑日35℃/酷暑日40℃以上です(酷暑日は2026年から正式に採用されました)
- 気温が体温に近づくほど熱は逃げにくくなり、湿度が高いと汗の冷却も効きにくくなります。だから危険度は気温だけでは決まりません
- 危険度の指標が暑さ指数(WBGT)で、熱中症警戒アラート(WBGT33)・特別警戒アラート(WBGT35)はレベルに応じた行動のサインです
- 高齢の方・子ども・持病のある方はとくに注意を。がまんせず冷房を使い、危険なサインがあれば早めの受診・救急要請を
参考文献
- 気象庁 「夏日・真夏日・猛暑日・熱帯夜」の定義/報道発表(酷暑日の予報用語化・2026年)
- 環境省 熱中症予防情報サイト(暑さ指数WBGT・熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒情報)
- 環境省・気象庁 熱中症警戒アラート運用資料
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