妊娠中に膀胱炎かも?——市販薬で様子見はNG、受診の目安と薬の考え方を内科医が解説
妊娠中に「排尿のときに痛い」「トイレが近い」「残尿感がある」といった症状が出ると、膀胱炎ではないかと心配になります。妊娠中はもともとトイレが近くなりやすいため、紛らわしいこともあります。
大切なのは、妊娠中の膀胱炎は、非妊娠時と同じ感覚で「市販薬で様子を見る」のは避けるべき、という点です。この記事では、その理由と、妊娠中の薬の考え方、受診の目安を解説します。膀胱炎の一般的な内容や予防については、当院の別記事でも解説しています。
妊娠中の膀胱炎は、なぜ注意が必要か
妊娠中は、大きくなった子宮による圧迫やホルモンの影響で尿の流れが滞りやすく、尿路感染を起こしやすい状態になります。
そして最も大切なのが、膀胱炎を放置すると腎盂腎炎(腎臓の感染)に進みやすく、妊娠中の腎盂腎炎は母体の高熱・重症化や、早産などのリスクに関わることがある、という点です。「たかが膀胱炎」と軽く見ず、早めに対応することが大切です。
こんな症状は膀胱炎かも——妊娠中の頻尿との違い
膀胱炎で多い症状は次のとおりです。
- 排尿の終わりごろの痛み(排尿時痛)
- 頻尿、尿を出しても残った感じ(残尿感)
- 尿がにごる、においが強い
- 血が混じる(血尿)
妊娠中は、子宮が膀胱を圧迫することで、感染がなくても頻尿になりやすいものです。ただし、痛みや残尿感、尿のにごり・血尿を伴う場合は、膀胱炎を疑って受診してください。
妊娠中に大切なこと①:症状がなくても治療することがある
非妊娠時では、症状のない「無症候性細菌尿(尿に細菌はいるが症状がない状態)」は、必ずしも治療しないことがあります。
しかし妊娠中は事情が異なります。無症候性細菌尿を放置すると腎盂腎炎に進むリスクが高まるため、妊娠中は症状がなくても治療の対象になることがあります。妊婦健診で尿の検査が行われるのは、こうした背景があるためです。
妊娠中に大切なこと②:薬の選び方が特殊——自己判断は避ける
妊娠中の膀胱炎で最も注意したいのが、薬の選び方です。市販の薬や、以前処方された薬、家族の薬を自己判断で使うことは避けてください。妊娠の時期によって、使える薬・避けたい薬が変わるためです。
一般的な考え方は次のとおりです(実際の選択は、妊娠週数やアレルギー、これまでの経過をふまえて医師が個別に判断します)。
- 比較的安全と考えられている薬:ペニシリン系、セフェム系の抗菌薬が用いられることが多いとされています
- 避けたほうがよいとされる薬:ニューキノロン系、テトラサイクリン系の抗菌薬。また、妊娠初期のトリメトプリム、妊娠後期のサルファ剤(ST合剤など)は避けるべきとされています
このように、「膀胱炎の薬なら何でもよい」わけではありません。市販薬で対処しようとせず、必ず医療機関を受診し、妊娠中であることを伝えてください。
すぐに受診してほしい——腎盂腎炎を疑うサイン
次のような症状は、膀胱炎から腎盂腎炎に進んでいる可能性があり、妊娠中はとくに注意が必要です。早めに受診してください。
- 38度以上の発熱、悪寒(ふるえ)
- 背中やわき腹の痛み
- 吐き気・嘔吐
- 強い倦怠感
これらに加えて、お腹の張りや出血、胎動の変化など気になる症状があるときは、産婦人科にも早めにご相談ください。
受診先と、当院でできること
妊娠中の体調で困ったときは、まずかかりつけの産婦人科に相談するのが基本です。そのうえで、当院(内科)でも次のような形でお役に立てます。
- 排尿時痛・頻尿などの症状の相談、尿検査による膀胱炎の評価
- 妊娠中であることをふまえた、安全性に配慮した薬剤選択の検討
- 腎盂腎炎が疑われる場合や、判断に迷う場合の、産婦人科との連携・ご紹介
受診の際は、妊娠していること、妊娠週数、通院中の産婦人科、アレルギーや服用中の薬を必ずお伝えください。
日常で気をつけたいこと
膀胱炎の予防に役立つ基本的な生活の工夫です。
- 水分をこまめにとり、尿の量を保つ
- 尿意を長時間がまんしない
- 排便後は前から後ろへ拭く、陰部を清潔に保つ
- 疲れをためない
ただし、妊娠中に水分量や生活について制限を受けている場合は、主治医の指示を優先してください。
まとめ
- 妊娠中の膀胱炎は、放置すると腎盂腎炎に進みやすく、早産などのリスクに関わることがあります。軽く見ないことが大切です
- 妊娠中は、症状のない細菌尿でも治療の対象になることがあります
- 薬は妊娠の時期によって使えるもの・避けたいものが変わります。市販薬や自己判断は避け、必ず受診を
- 発熱・背部痛・吐き気があれば腎盂腎炎の可能性があり、早めの受診が必要です
- まずは産婦人科への相談が基本。内科でも尿検査や安全に配慮した対応、連携でお役に立てます
参考文献
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン(産科編)
- JAID/JSC 感染症治療ガイドライン(尿路感染症)
- 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
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