COPD(慢性閉塞性肺疾患・たばこ肺)——冬のかぜで起こる増悪、息切れ・咳・痰のサイン、呼吸機能検査、禁煙とワクチン、受診と救急の目安を内科医が解説
朝晩が冷え込み、かぜをひく人が増えてくる季節になりました。インフルエンザは、日本では例年12月から3月ごろに流行します。たばこを長く吸ってきた方や、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、いわゆる「たばこ肺」と言われている方にとっては、かぜやインフルエンザをきっかけに症状が急に悪くなる「増悪」に気をつけたい時期です。
この記事では、COPDがどんな病気か、たばこを吸う・吸っていた方に多いサイン、呼吸機能検査(スパイロメトリー)でわかること、冬に起こりやすい「増悪(ぞうあく)」、禁煙とワクチン、受診と救急の目安を順にまとめます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とはどんな病気か
COPDは、たばこの煙を主とする有害物質を長年吸い込むことなどが原因で、肺の空気の通りが悪くなり、息切れ・せき・たんなどの症状が出る病気です。
肺の奥の細い気管支に炎症が起きて内側が狭くなることと、酸素を取り込む肺胞(はいほう)の壁がこわれて弾力がなくなること(肺気腫)が重なり、吸った空気をうまく吐き出せなくなります。その結果、体に取り込める酸素が減り、息切れにつながります。
原因は、主にたばこの煙です。日本呼吸器学会は、喫煙者のおよそ15〜20%がCOPDを発症するとしています。ほかに、大気汚染や呼吸器の感染症、仕事で有害なものを吸い込むこと(職業上の曝露)が影響することもあります。
日本では、40歳以上の約12人に1人、推定530万人以上がCOPDと考えられていますが、実際に医療機関を受診している人は約38.2万人です。ゆっくり進むため自分では気づきにくく、多くの方が診断や治療を受けていないのが現状です。2023年の日本のCOPDによる死亡者数は16,941人でした。
また、COPDでは骨粗しょう症、栄養障害、心臓や血管の病気といった全身の病気も増えるため、肺だけでなく体全体をみていくことが大切です。
たばこを吸う・吸っていた人に多いサイン
COPDはゆっくり進むため、自分では変化に気づきにくい病気です。次のような変化に心当たりがないか、振り返ってみてください。
- 歩いているときや、坂道・階段で息が切れる
- せきやたんが長く続く
- かぜをひくと長引いたり、何度もくり返したりする
- ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸の音がする
日本呼吸器学会は、喫煙歴があり(いまは禁煙していても、過去に喫煙習慣があった方を含みます)、これらの症状に心当たりがある方に、呼吸機能検査(スパイロメトリー)ができる医療機関の受診をすすめています。
「もうたばこはやめたから大丈夫」と思っている方も、息切れやせきが続くときは一度相談してみてください。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)でわかること
COPDの診断と治療については、日本呼吸器学会が「COPD診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕」をまとめています。
スパイロメトリーは、スパイロメータという器具を使い、肺にどれだけ空気を吸い込めて、どれだけ多く・速く吐き出せるかを調べる検査です。大きく息を吸ってから、筒をくわえて一気に吐き出します。
COPDを見分ける目安になるのが「1秒率」で、思い切り吐き出した息の量(努力肺活量)のうち、最初の1秒間に吐き出せた量(1秒量)の割合を指します。
診断の基準は、気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を使ったあとの検査で1秒率が70%未満であること、そして気流が悪くなるほかの病気を除外することです。ぜん息、気管支拡張症、肺結核、うっ血性心不全、肺がんなど、似た症状を起こす病気があるため、問診や胸のレントゲン、血液検査なども合わせて調べます。
胸部CTでは、肺胞がこわれた肺気腫の部分が黒っぽく写ることがあります。自覚症状が少ないこともあるため、健診などで呼吸機能の異常を指摘された場合は、早めにかかりつけ医や呼吸器内科を受診しましょう。
冬に気をつけたい「増悪(ぞうあく)」
かぜやインフルエンザなどの呼吸器の感染症をきっかけに、息苦しさなどの症状が悪くなり、いつもの治療では良くならず、治療を変える必要がある状態を、COPDの「増悪」といいます。
増悪のきっかけはウイルスや細菌による感染症や大気汚染が多いものの、原因がはっきりしないこともあります。増悪が起こると、息切れが悪くなり、せきやたんが増えます。発熱、脈が速くなる、だるさ、眠れないといった症状を伴うこともあります。
増悪は命にかかわることがあり、息切れや呼吸機能の低下が回復するまでに1か月以上かかる場合もあります。COPDは増悪のたびに段階的に悪くなることが知られており、「増悪をくり返さない」「起きたら早めに対応する」ことが大切です。
次のような変化は、増悪の前ぶれのことがあります。
- 安静にしていても、いつもより呼吸が苦しい
- 熱がある
- たんの量が増えた、切れが悪くなった、黄色いたんが出るようになった
- せきの回数が増えた
- かぜの症状がある
- ゼーゼー、ヒューヒューという音がする
環境再生保全機構の資料では、こうした症状が一つでもみられたときにどう対処すればよいか、医師に相談するよう呼びかけています。とくに、体を動かしたときだけでなく静かにしているときにも息切れがあるときは、増悪が疑われます。
症状が落ち着いているうちに、増悪したときにどう動くか(アクションプラン)を医師と相談しておくことが勧められています。アクションプランが決まっていない方は、増悪の症状があれば早めに受診しましょう。
禁煙とワクチン、日々の過ごし方
禁煙
たばこを吸い続けると呼吸機能の悪化が速まるため、禁煙が治療の基本になります。すでにCOPDになっていても、たばこをやめれば、その後の肺機能の低下はたばこを吸わない人とほぼ同じになるとされています。
喫煙習慣は治療の対象となる「ニコチン依存症」でもあり、医療機関で禁煙治療を受けることができます。自力でやめられない場合は、ニコチンの離脱症状をやわらげる禁煙補助薬を使う方法もあります。
ワクチンと感染予防
日本呼吸器学会は、手洗いやうがいを習慣にし、インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナウイルス、RSウイルスのワクチンを受けておくことで、感染による増悪を予防するよう呼びかけています。
- インフルエンザワクチン:毎年の接種が勧められています。増悪の頻度を減らしたり、インフルエンザや肺炎による入院や死亡を減らしたりする効果があります
- 肺炎球菌ワクチン:肺炎球菌はCOPDの増悪や肺炎を起こす病原体の一つで、ワクチンにはこの菌による肺炎を予防する効果があるとされます
ワクチンの種類や接種の時期、公費の対象になるかどうかは、年齢や持病によって異なります。かかりつけの医療機関でご相談ください。
治療と日々の過ごし方
治療の目的は、息切れやせきをやわらげ、病気の進行や増悪を防ぐことです。薬は気管支を広げる吸入薬が中心で、必要に応じて吸入ステロイドが併用されます。定期的に使う吸入薬には増悪を予防する効果もあるため、処方されている場合は医師の指示どおりに続けることが大切です。
じっとしている時間をなるべく減らし、体を動かすことも大切です。COPDでは呼吸に多くのエネルギーを使うため、栄養不足で体力が落ちやすく、バランスのよい食事で体重を保つことが勧められています。息切れを軽くする呼吸法や、筋力・持久力を保つ運動療法などのリハビリテーションも、生活の質を保つのに役立ちます。
受診の目安と救急のサイン
次のような場合は、早めに内科や呼吸器内科でご相談ください。
- たばこを吸っている、または吸っていたことがあり、坂道や階段で息が切れる
- せきやたんが長く続く、かぜが長引く・くり返す
- 健診で呼吸機能の異常を指摘された
- COPDと言われていて、たんの量が増えた・黄色くなった、せきが増えた、熱がある
ふだん無色か白いたんが黄色くなったときは、細菌の感染による増悪が疑われます。たんの色や量が増えたときは、早めに受診しましょう。
次のようなときは、ためらわず119番で救急車を呼んでください。
- 急な息切れ、呼吸が苦しい
- 顔色が明らかに悪い
- 突然の高熱
増悪は命にかかわることもあります。「様子をみよう」と我慢せず、苦しいときは早めに助けを呼んでください。
参考文献
- 日本呼吸器学会「呼吸器の病気 B-01 慢性閉塞性肺疾患(COPD)」(市民のみなさまへ)
- 日本呼吸器学会「COPD診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕」(2026年)
- 独立行政法人環境再生保全機構「COPDの基礎知識とセルフマネジメント」(大気環境・ぜん息などの情報館)
- 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方.jp こんな時は迷わず119へ」
当院のページ「診療内容」(内科で診ている主な病気・症状)
https://hirotsu.clinic/services/
当院のページ「受診の流れ」(初めて受診される方へ)
https://hirotsu.clinic/first-visit/
<外部サイト(一般向け・アフィリエイトリンクを含みます)>
COPD(慢性閉塞性肺疾患・たばこ肺)——冬のかぜで起こる増悪、息切れ・咳・痰のサイン、呼吸機能検査、禁煙とワクチン、受診と救急の目安を内科医が解説
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから