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寒い朝の胸の痛み・圧迫感——狭心症のサイン、心筋梗塞との違いと「すぐ119番」の目安、検査と冬の温度差対策を内科医が解説

11月に入り、朝晩の冷え込みが強まってきました。寒い朝に外へ出たときや、階段を急いで上ったときに、胸が締め付けられるような感じがして、立ち止まると治まる。そんな経験はありませんか。

このような胸の圧迫感は、心臓の血管の血の巡りが一時的に足りなくなる「狭心症」のサインのことがあります。この記事では、狭心症の特徴、心筋梗塞との違い、検査の考え方、冬の注意点、「すぐ119番」のサインを含む受診の目安をまとめます。

狭心症とは——心臓の筋肉が酸素不足になる病気

心臓は、冠動脈(かんどうみゃく)という血管から酸素や栄養を受け取っています。この血流が低下し、心臓の筋肉(心筋)に十分な酸素が届かなくなって胸が苦しくなる病気が「狭心症」です。

日本循環器学会のガイドラインでは、狭心症のうち次の2つについて、一般の方向けに説明しています。

  • 労作性狭心症:動脈硬化で冠動脈に狭いところがあるため、急いで歩いたり階段を上ったりする動作(労作)のときに酸素が足りなくなって起こります
  • 冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう):冠動脈が一時的に強く縮む(攣縮)ことで血流が落ちて起こります。運動中よりも安静時、特に夜間の睡眠中から早朝にかけて起こりやすいのが特徴です

狭心症のサイン——どんなとき、どんな感じ、どれくらい続くか

どんな感じか

狭心症の症状は、「圧迫されるような感じ」「締め付けられるような感じ」「重苦しい感じ」と表現されることが多いとされています。痛む場所は主に胸の前側ですが、あご、首、肩、みぞおち、背中、腕に広がったり、胸ではなくそこだけに症状が出たりすることもあります。

一方で、刺されるような痛みやチクチクする痛み、触ると痛む場合は、狭心症の痛みではないことが多いとされています。ただしガイドラインは、典型的でない症状や軽い症状が重い病気のサインであることもまれではなく、症状の感じ方だけで心臓の病気を否定してはならないとしています。

どんなときに起こるか

  • 急ぎ足、階段を上る、重いものを持つ・運ぶといった動作のとき
  • 精神的な興奮や、食事のとき
  • 寒さにさらされたとき

また、早朝は胸の痛みが出やすい時間帯とされています。冠攣縮性狭心症では、早朝に限って、ごく軽い動作で症状が出ることもあります。たとえば、起床後にトイレに行ったときや、朝、外に出て冷たい空気を吸ったときです。

どれくらい続くか

狭心症の症状は数分以内のことが多く、動作で起きた場合は、動作をやめると数分以内に治まります。国立循環器病研究センターの解説では、狭心症の症状は1〜5分程度で、長くても15分以内とされています。

なお、女性、高齢の方、糖尿病のある方では、症状が典型的でないことが少なくありません。高齢の方では、胸の痛みではなく息切れとして感じることもあります。

心筋梗塞との違い——「20分以上続く」「冷や汗」は危険なサイン

心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって、その先の心筋に酸素と栄養が届かなくなる病気です。狭心症との違いは、次のようにまとめられます。

  • 続く時間:狭心症の胸の痛みは数分程度が多く、長くても15〜20分です。心筋梗塞の症状は20分以上、数時間に及ぶことが多いとされています。ただし、20分たつのを待つ必要はありません。胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが2〜3分続くときは、すぐに119番に電話してください
  • 伴う症状:心筋梗塞では、激しい胸の痛みのほか、息苦しさ、冷や汗、吐き気、嘔吐などがみられます。男性では冷や汗が、女性では吐き気や嘔吐、息苦しさが多いとされています

もう一つ注意したいのが、狭心症の中でも状態が不安定なタイプです。ガイドラインでは、胸の痛みが新たに起きた場合や、繰り返すようになった場合は、心筋梗塞やその手前の状態(不安定狭心症)をまとめた「急性冠症候群」を疑い、積極的に治療するとしています。

検査の考え方——心電図が正常でも安心はできない

診断の出発点は、症状をくわしくうかがうことです。ガイドラインでは、胸の痛みの場所、感じ方、きっかけ、続いた時間、時間とともにどう変わったか、ほかに伴う症状に注意して話を聞くことが重要とされています。受診の際は、次の点をメモしておくと役立ちます。

  • いつ、何をしていたときに起きたか(階段、寒い屋外、早朝の安静時など)
  • どこが、どんな感じだったか
  • 何分くらい続き、どうしたら治まったか
  • 冷や汗や息苦しさなど、ほかの症状があったか

そのうえで、年齢、性別、症状の特徴から病気の可能性を見積もり、持病や喫煙歴、基本的な検査の結果を加えて、次に行う検査を選ぶ考え方がとられています。

  • 心電図(12誘導心電図):簡便で基本となる検査です。ただし、発作が起きていないときの心電図は正常のことがあり、心電図が正常でも狭心症は否定できません
  • 運動負荷心電図:運動で心臓に負担をかけながら、心電図の変化をみます
  • ホルター心電図:24時間心電図を記録しながら普段どおり過ごし、日常生活の中での変化をとらえます。毎日のように症状が出る方では、症状が出たときの心電図をとらえられる可能性が高くなります
  • 心臓超音波検査(心エコー)・血液検査・尿検査:心臓の動きや、コレステロール・血糖などの状態を確かめます
  • 冠動脈CT:冠動脈を画像で調べます。「狭いところがない」ことを確かめる力が高く、最初の画像検査として有用とされています
  • 心臓カテーテル検査:細い管(カテーテル)を動脈から入れて冠動脈を撮影します。冠攣縮性狭心症が疑われる場合には、薬を使って攣縮が起こるかを確かめる検査が行われることもあります

冬の生活で気をつけること——急な温度差を避ける

国立循環器病研究センターの研究グループは、心筋梗塞による心停止が10月から4月頃にかけて多いことを報告しています。

同センターの解説では、特に冬は、寒い脱衣所で裸になると血圧が上がり、熱いお風呂に入るとさらに上がるとしています。同センターの「冬場に心筋梗塞を予防するための注意すべき10箇条」などから、取り入れやすいものを挙げます。

  • 居間と浴室・トイレの温度差が小さくなるよう、暖房や服装を工夫する
  • 冬場は脱衣室と浴室を暖めておく
  • お風呂の温度は38〜40度と低めにし、入浴時間は短めにする。熱い湯(42〜43度)は血圧が高くなり危険とされています
  • 入浴前後にコップ一杯の水分をとる。入浴前にお酒を飲まない
  • 早朝に起きたらコップ一杯の水をとる(睡眠中の汗で血液が濃くなっているため)
  • 寒い屋外に出るときは、防寒着、マフラー、帽子、手袋などで寒さを調整する
  • タバコを吸う方は禁煙する

冠攣縮性狭心症では、たくさんお酒を飲んだ日の夜や翌日の早朝に発作が起きやすくなるため、飲みすぎを避けることも大切です。喫煙は冠攣縮の重要な危険因子とされています。

また、高血圧、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病、喫煙は、心筋梗塞の「4大冠危険因子」とされています。健康診断で指摘されている方は、寒さが本格的になる前に治療や生活の見直しを進めましょう。

受診の目安——「すぐ119番」のサインと、早めに相談したい症状

次のような症状があるときは、迷わず119番に電話してください。総務省消防庁は、大人の胸や背中の症状として、次のものを「すぐ119番」のサインに挙げています。

  • 突然の激しい痛み
  • 急な息切れ、呼吸困難
  • 胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが2〜3分続く
  • 痛む場所が移動する

あわせて、冷や汗を伴うような強い吐き気や、意識がない・もうろうとしている場合も、すぐに119番が必要なサインとされています。

日本循環器学会のガイドラインでは、急性冠症候群が疑われる症状が出たら、自分で医療機関に向かうのではなく、ただちに119番通報して救急車を呼ぶ必要があるとしています。発症直後に突然死の危険があるためです。発作のときに使う舌下の薬を処方されている方も、1回使って症状が強く軽くならない場合は、ただちに救急車を呼んでください。

救急車を呼ぶべきか迷うときは、救急相談窓口(#7119)に相談できます。福岡県も#7119の窓口がある地域です。

次のような場合は、早めに内科や循環器内科を受診してください。

  • 階段や坂道、急ぎ足のときに胸が重くなり、休むと数分で治まる
  • 寒い朝、外に出たときや起きてすぐに、胸の圧迫感や締め付け感がある
  • あご・首・肩・腕・背中・みぞおちに、動いたときに出て休むと治まる違和感がある
  • 高齢の方や糖尿病のある方で、以前より息切れしやすくなった

特に、最近初めて起きた胸の痛みや、繰り返すようになった胸の痛みは、急性冠症候群を疑う状態とされています。症状が続いているときは、ためらわず119番に電話してください。いったん治まっていても先延ばしにせず、できるだけ早く医療機関を受診してください。

参考文献

  • 日本循環器学会ほか「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン」(2018年改訂版)
  • 日本循環器学会ほか「2022年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」(2022年)
  • 日本循環器学会ほか「急性冠症候群ガイドライン」(2018年改訂版)
  • 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会「2023年JCS/CVIT/JCC ガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療」(2023年)
  • 国立循環器病研究センター病院「虚血性心疾患」(循環器病について知る・2024年12月更新)
  • 国立循環器病研究センター病院「高血圧」(循環器病について知る)
  • 国立循環器病研究センター「冬場は心筋梗塞による心停止が増加」(プレスリリース)
  • 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)

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