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持続血糖測定器(CGM)は何に使えるのか——糖尿病でない人の活用法から医療での使い道まで内科医が解説

CGM(持続血糖測定器)は、腕などにつけた小さなセンサーで血糖の動きを連続的に記録する機器です。指先の採血が「点」の測定だったのに対し、CGMは血糖の変化を「線」で見せてくれます。

これまでCGMは「糖尿病でインスリンを使っている方の道具」でした。しかし近年、糖尿病ではない方が自分の体を知るために使う流れが世界的に広がっています。この記事では、糖尿病でない方にとっての活用法を中心に、医療での使い道や世界の動向、そして限界まで整理します。保険が使える条件や費用の目安は、当院の別記事で解説しています。

CGMで何が見えるのか——「点」から「線」へ

健康診断で測るのは、たいてい「空腹時の血糖」と「HbA1c(過去1〜2か月の平均)」です。どちらも大切な指標ですが、実は見えないものがあります。それが、食事のあとに血糖がどう動いたか、です。

CGMでは次のようなことが分かります。

  • 何をどう食べたときに、血糖がどのくらい上がり、どのくらいで戻るのか
  • 運動やお酒、睡眠、ストレスが血糖にどう影響するか
  • 夜間や早朝など、自分では測りにくい時間帯の血糖
  • 血糖が今「上がっている途中」なのか「下がっている途中」なのか

糖尿病でない人がCGMをつけると、何が分かるのか

ここが、いま最も関心が高まっているところです。健康な方、健診で「まだ大丈夫」と言われている方にとって、CGMには次のような活用の余地があります。

1. 健診では見えない「食後の血糖の山」が見える

空腹時血糖やHbA1cが基準内でも、食後だけ大きく血糖が上がるタイプの方がいます。健診は空腹で受けるため、この「食後の山」は原理的に写りません。CGMは、そこを見に行ける唯一の身近な方法です。

2. 「自分にとっての」食べ方の答え合わせができる

同じ食品でも、血糖の上がり方には個人差があります。一般論としてよく言われる工夫が、自分にも当てはまるのかを、自分の数値で確かめられます。

  • 野菜やたんぱく質を先に食べると、山は小さくなるか
  • 白米、パン、麺類、それぞれで違いはあるか
  • 食後に10〜15分歩くと、どのくらい変わるか
  • 菓子パンや甘い飲み物は、実際どれくらい上がるのか

知識として知っていることと、自分の体で確かめたことは、行動の変わりやすさが違います。

3. 午後の眠気・だるさの正体が分かることがある

「昼食後にどうしても眠くなる」「食後しばらくして手がふるえる、イライラする」という方では、血糖の急な上昇とその後の急降下が関係していることがあります。反応性低血糖については当院の別記事でも解説していますが、CGMは症状と数値のタイミングを重ね合わせて確認できます。

4. ダイエットが「なんとなく」から「根拠あり」に変わる

体重は数日単位でしか動きませんが、血糖はその日の選択にすぐ反応します。「この食べ方は自分に合っていない」がその日のうちに分かるため、続けるための手応えが得られやすくなります。

5. お酒・睡眠不足・ストレスの影響も数字で出る

飲酒した夜や、睡眠が短かった翌日の血糖の動きを見ると、生活習慣と体のつながりが実感できます。

6. 家族に糖尿病がいる方の「先手」になる

血縁者に糖尿病の方がいる場合、体質的に食後の血糖が上がりやすいことがあります。何も起きていない段階で自分の傾向を把握しておくことは、将来への備えになります。

7. スポーツをする方の補給の工夫

持久系の運動をする方では、練習中や前後の血糖の動きを見ることで、補給のタイミングを考える材料になります。

8. 「一度つけてみる」だけでも学びが残る

ずっと付け続ける必要はありません。1〜2週間装着して自分のパターンをつかみ、その後の食べ方に活かす——という使い方が、糖尿病でない方には現実的です。センサーを外したあとも、得た知識は残ります。

ただし、知っておいてほしい前提

期待できる点と同じくらい、前提も大切です。

  • CGMは糖尿病を診断する機器ではありません。診断は採血(HbA1cやブドウ糖負荷試験など)で行います。気になる数値が出たら、自己判断せず受診してください
  • 健康な方でも、食後に血糖が140 mg/dL前後まで上がることは珍しくありません。「上がった=異常」ではありません
  • 数値に振り回されて食事が楽しめなくなる、という逆効果もありえます。目的は「自分の傾向を知ること」です
  • 日本では、CGMは医療機関を通して使う機器です。糖尿病でインスリンを使っていない方は自費になります

健康な方の血糖変動をどこまで「異常」とみなすかは、まだ世界的にも基準が定まっていません。だからこそ、数値の解釈は医師と一緒に行うのが安心です。

医療で確立している使い道

インスリン治療中の血糖管理

もっとも確立した使い道です。1型糖尿病や、インスリンを使っている2型糖尿病の方では、血糖の変動と低血糖を把握して、インスリン量や食事の調整に活かします。欧米の診療指針でも、インスリン治療中の方にはCGMの使用がすすめられる方向にあります。

自動インスリン投与(AID)システムの心臓部

CGMの値をもとにポンプがインスリン量を自動調整する仕組み(ハイブリッドクローズドループなどと呼ばれます)が世界的に普及しています。CGMは、この自動調整の「目」の役割を果たします。

妊娠中の血糖管理、低血糖の原因さがし、薬剤性の血糖上昇

  • 妊娠中:血糖の目標が厳しく、かつ低血糖も避けたい難しい管理を助けます
  • 低血糖の原因さがし:反応性低血糖、胃の手術後のダンピング症候群などの評価に役立つことがあります
  • ステロイド治療中の血糖上昇や、膵臓の病気に伴う血糖の乱れの把握
  • 高齢の方や体調不良時(シックデイ)の、危険な低血糖の発見

世界共通の指標になった「TIR(Time in Range)」

HbA1cは平均を表す優れた指標ですが、平均が同じでも、大きく上下している人と安定している人を区別できません。そこで広まったのが、血糖が目標範囲内(一般に70〜180 mg/dL)にあった時間の割合、TIRです。

2019年の国際コンセンサス(ATTD)では、多くの成人の目標として次が示されました。

  • TIR(目標範囲内の時間):70%以上
  • TAR(高い時間):25%未満
  • TBR(低い時間):4%未満

ただしこれは「多くの成人」の目安で、高齢の方や低血糖リスクの高い方、妊娠中の方では別の目標が設定されます。目標値は主治医と確認してください。

世界の最新動向——処方箋なしで買えるCGMの登場

米国では2024年、処方箋なしで購入できるOTC(市販)タイプのCGMが相次いで認可されました。

  • Dexcom「Stelo」:2024年3月にFDAが認可。インスリンを使っていない方が対象で、糖尿病のない方も使える幅広い位置づけです
  • Abbott「Lingo」:2024年6月にFDAが認可。18歳以上の、健康管理・ウェルネス目的の利用者向け
  • Abbott「Libre Rio」:2024年6月にFDAが認可。インスリンを使っていない2型糖尿病の成人向け

つまり「健康な人が血糖を見る」という使い方は、すでに海外では制度として認められ始めています。一方、日本ではCGMは医療機関を通して使う機器で、処方箋なしのOTC販売は認められていません。海外製品の個人輸入は、品質・安全性や不具合時の対応、数値の解釈のいずれの面でもおすすめできません。

数値を正しく受け取るために——CGMの限界

  • 測っているのは血液そのものではなく、皮下の組織間液のブドウ糖です。実際の血糖より5〜15分ほど遅れて反応するとされ、急激に変動する場面では差が出ます
  • 誤差があります。機種によりますが、実測値との差は概ね1割前後とされています
  • 低血糖が疑われるとき、症状と数値が合わないとき、緊急時は、指先の血糖測定で確認するのが原則です
  • センサーを体で圧迫して寝ると、実際より低い値が出ることがあります(圧迫による偽の低血糖)
  • 一部の薬やサプリメントが数値に影響することがあります(例:高用量のビタミンCなど)。機種ごとに異なるため、添付文書や医療者に確認してください

CGMは「傾向とパターンを読む道具」です。1点の数値に一喜一憂せず、線の形と時間帯のくせを読むのが正しい使い方です。

当院でできること

  • 「糖尿病ではないが、自分の食後の血糖を見てみたい」というご相談(自費での装着を含め、目的に合うかどうかから一緒に検討します)
  • 装着後のデータの読み方、生活での活かし方のご説明
  • 食後の眠気・だるさ・動悸など、症状がある方の評価
  • 健診で境界域と言われた方、家族に糖尿病がいる方の今後の方針のご相談
  • 糖尿病の治療中の方の、変動と低血糖もふまえた治療の見直し

なお、糖尿病ではない方が自分の食後の血糖を知るための自費でのCGM装着については、当院で提供できるよう準備を進めています。開始時期や費用が決まりましたら、あらためてご案内します。ご興味のある方は、受診時にお声がけいただければ状況をお伝えします。

「気になるけれど自分に必要なのか分からない」という段階でのご相談も歓迎します。

まとめ

  • 健診の空腹時血糖・HbA1cでは「食後の血糖の山」は見えません。CGMはそこを見に行ける身近な方法です
  • 糖尿病でない方には、食べ方の答え合わせ、午後の眠気の正体、ダイエットの手応え、家族歴がある方の先手といった活用の余地があります
  • 1〜2週間だけ装着して自分のパターンを学ぶ、という使い方が現実的です
  • ただしCGMは診断の機器ではなく、健康な方でも食後140 mg/dL前後まで上がることは珍しくありません。解釈は医師と一緒に
  • 医療では、インスリン治療・自動インスリン投与・妊娠中の管理・低血糖の原因さがしなどに使われ、TIR(70%以上が目安)という国際指標も定着しています
  • 米国では2024年に処方箋なしのCGMが認可されました。日本ではOTC販売はなく、個人輸入はおすすめできません

参考文献

  • Battelino T, et al. Clinical Targets for Continuous Glucose Monitoring Data Interpretation: Recommendations From the International Consensus on Time in Range. Diabetes Care. 2019;42(8):1593-1603.
  • American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes(糖尿病診療基準)
  • 日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン/CGMに関する指針
  • 米国FDA 各OTC CGM(Stelo/Lingo/Libre Rio)の認可情報、各製品の添付文書

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https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

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